2021/06/12

繁殖池の底で♀に殺到するヤマアカガエル♂の群れ(蛙合戦)

前回の記事:▶ 繁殖池の岸に上陸して産卵場所を探し回るヤマアカガエル♀♂の抱接ペア(その2)ライバル♂を撃退

2021年3月中旬・午後13:30および15:20・晴れ 

雪山の繁殖池Hでヤマアカガエル♀♂(Rana ornativentris)の観察を続けていると、雪解け水が貯まった池の底で新たな動きがありました。 
水中で大きな♀にしがみついて抱接を挑んでいる小さな♂を見つけました。 
♀は力なく水中で漂っているのが気になります。
(これが正常なのか、それともまさか♀の死体に♂が死姦?) 



しばらくすると、池の底に潜んでいた♀♂ペアの周囲に多数の♂が団子状に群がっていました。 
水中で息を止めたまま必死で割り込んで♀にしがみつき、ライバル♂を蹴り合う蛙合戦が繰り広げられています。 
♀の獲得を諦めて蛙合戦から離脱する♂個体もいます。 
離脱した♂同士が♀と誤認して反射的に抱きつくこともありますが、すぐに離しました。 
団子の中心に居る♀が長時間♂達にもみくちゃにされて溺死しないか心配になります。 
1匹だけ白い腹を向けて仰向けに静止している個体が♀ではないかと思います。 
捕獲しない限り仰向け姿勢を見る機会は無いのですが、顎の下面に斑紋があることがヤマアカガエルの識別点のひとつなのだそうです。 
しかしその点はよく見えませんでした。 


以下の写真は自動色調補正したものです。

後半はカメラを左にパンすると、別の♀♂抱接ペアが少し離れた水底に潜んでいました。(@2:10〜) 
抱接ペアが決まると他のライバル♂を振り切って逃げてカップル水入らずになるのか、それとも独身♂たちが諦めて離れて行くのでしょうか? 
抱接ペアは、他のあぶれ♂に気づかれないように池の底でじっとしているのかな?
ペア決定の前だけ♀が性フェロモンを放出するのでしょうか?
おそらく冬眠明けに池の底で蛙合戦によって♀♂抱接ペアが決まり、その後に岸辺に上陸して産卵するのでしょう。 
だとすれば、水中の蛙合戦に参加せずに岸辺で待機している多数の独身♂は全く別の繁殖戦略(いわゆるスニーカー戦略、サテライト戦略)を持っていそうです。 

水面からの余計な反射光を除去するために、カメラのレンズに円偏光(CPL)フィルターを装着してみました。 
しかし風が吹くと水面が波立ち、水底の映像がグニャグニャに歪んでしまいます。 
次に機会があれば、完全防水のカメラで水中撮影してみたいものです。 
高価な防水カメラが無くても、透明な水槽などを水面から少し沈め、水中メガネ(ハウジング)のように使えばカメラを濡らさずに水中の様子を撮れるらしいので、その技を試してみればよかったですね。 

軽井沢の自然の四季を調べたピッキオ『森の「いろいろ事情がありまして」 』という本の第2話「スケートリンクのカエル合戦」は、雪国におけるヤマアカガエルの繁殖行動を調べた結果をまとめています。
 雨がしとしと降る3月下旬の生暖かい夜、ようやく氷が解けたスケートリンクがにわかに騒がしくなります。たくさんのヤマアカガエルが冬眠場所から一斉にはい出し、繁殖のために集まってくるのです。(中略) あっ、今、1匹の♀がやってきました。  近くの♂が真っ先に飛びつきます。♀は黙ったまま、どうやら産卵前のようです。しかし次の瞬間、わずかに出遅れた他の♂たちが次々と覆いかぶさり、あっという間に団子になってしまいました。♂たちは「グッグッ」と鳴きながら、お互いを押しのけようと後ろ足で蹴り合い、最後まで♀に抱きついていた♂が、この♀が産む卵の父親になれるのです。(p12〜14より引用)
また、そのページに掲載された写真のキャプションには次のように書いてありました。
♂たちが♀に飛びつき、団子状になる。いわゆるカエル合戦。 池へ向かう途中で♂につかまり、その♂を背負って歩く♀。
この下線部はヒキガエルの繁殖行動と共通しているのですが、今回私は一度も見ていません。
▼関連記事(9年前の撮影) 
排水溝でアズマヒキガエルが蛙合戦
変温動物のヤマアカガエルが冬眠場所から雪山を踏破して繁殖池までやって来るとは考えにくいです。 
たとえ低温に強くても昼間にそんな移動をしたら雪面で目立ってしまい、鳥にすぐ捕食されてしまうはずです。 
(ただし暗い夜に移動する可能性は残されています。) 
それよりも私が今のところ考えているのは、池Hの底で冬眠したヤマアカガエル♀♂の群れが早春になって目覚め、そのまま繁殖活動を始めたというシナリオです。 
池Hの底よりも岸辺の方が多くの独身♂が待機しているのに、岸辺で♀を巡る激しい蛙合戦が起きていないのも不思議です。 
私が今回見ているのはヤマアカガエルの繁殖行動の第一陣なのかもしれません。 
季節がもう少し進んで池Hの周囲の残雪が完全に溶けると、文献の記述通りの繁殖行動(第二陣)が繰り広げられるのかな? 
ヤマアカガエルに関する過去の文献は雪の降らない(少ない)暖かい地方で調査された結果が多いので、ここ雪国の個体群にどこまであてはまるのか、雪国に特有の繁殖行動が進化しているのか、自分で調べてみないと分かりません。 



2021/06/11

繁殖池の岸に上陸して産卵場所を探し回るヤマアカガエル♀♂の抱接ペア(その2)ライバル♂を撃退

前回の記事:▶ ヤマアカガエルは繁殖池の底でも♀に飢えた♂同士で互いに追い回す
2021年3月中旬・午後14:55頃・晴れ 

繁殖池の岸辺にヤマアカガエル♀♂(Rana ornativentris)の抱接ペアが再び上陸してきました。 
もしかすると約1時間前に見た抱接ペアと同じカップルなのかもしれませんが、個体識別できていないので分かりません。 
ヤマアカガエルの体色は太陽光の明るさや見る角度によっても印象が変わり、初心者の私にとって当てになりません。 

日当たり良好の浅瀬で♀の背にしがみついた♂は喉をヒクヒクさせています。 
小声で♀に囁きかけているのかな? 
今回のペアの♂は、♀が産卵地探索のために岸辺を移動してもその度に鳴くことはなく、黙っています。 
♂は前腕を♀の脇の下から回して強く抱きしめていますが、後脚は♀が移動する邪魔(水の抵抗)にならないよう自分の体側に引き付けています。 

ときどきグッグッグッグッ♪と小声の低音で鳴く声がかすかに聞こえるのですが、撮影している個体の鳴き声かどうか不明です。 
少なくとも抱接♂の頬は膨らんでいません。 
※ 動画編集時に音声を正規化して音量を強制的に上げています。 

やがて抱接ペアの左側から独身♂が泳いで近寄ってきました。(@1:04) 
ペアの背後に回り込んで♀にしがみつこうとしたものの、抱接♂が後脚で蹴りつけて、ライバル♂を文字通り一蹴しました。 (配偶者ガード)
闘争中も小声で鳴く声が聞こえたものの、どの個体が鳴いたのか不明です。 
♀の繁殖戦略としては、あえて♂同士を戦わせておいて強い♂を選ぶことも考えられます。
しかし抱接♀は騒ぎを嫌い、パートナー♂を背負ったまま、池の水中に潜って逃げて行きました。 
負けたライバル♂があっさり諦めて、必死で♀を追いかけないのが意外でした。 
敗者は紳士的に負けを認め、すごすごと引き下がりました。 
ヤマアカガエルの「蛙合戦」はヒキガエルに比べて淡白ですね。 
♂同士でもっと熾烈な格闘になり、♀を力づくで強奪しようとするのかと思っていました。 

抱接ペアは少し泳ぐと、他の個体からかなり離れた静かな岸辺に再上陸しました。 
正確には水中を平泳ぎのように進むと言うよりも、♀は浅瀬の底を後脚で歩くように移動しました。 
浅瀬で待機する抱接ペアを横から見ると、♀の膨らんだ腹面に赤い斑紋があり、アカハライモリのお腹を連想しました。(この斑紋で個体識別が可能か?) 
抱接♂は相変わらず喉をヒクヒクさせています。 
ライバル♂が邪魔しに(♀を奪いに)来る度に産卵地探索を中断するのだとしたら、抱接ペアはいつまで経っても産卵を始められない気がします。 
産卵は暗くなってから行うのでしょうか? 

この繁殖池では深刻な嫁不足らしく(独身♂過多)、ペア形成の過程をなかなか観察できません。 
抱接ペアを見つけたら捕獲して♀♂を引き剥がし、♀をマーキング(個体標識)してから池に戻してやれば、新しい♂と改めてペア形成(抱接)する様子を観察できるかもしれません。
今季の私はなるべくヤマアカガエルの邪魔をしないで、とにかく撮影に専念しましたが、来季以降は試す価値がありそうです。 
ただしタモ(手網)を持参したところで、警戒心のきわめて強くて素早く逃げる抱接ペアを果たして捕獲できるかどうか、自信がありません。

つづく→

2021/06/10

早春の雪山を徘徊するコモリグモの一種(蜘蛛)

 

2021年3月中旬・午前11:45頃・くもり 

早春の里山でヤマアカガエルの繁殖池の横の雪面を元気に動く虫がいます。 
カメラでズームインしてみると、コモリグモの一種でした。
残雪(ザラメ雪)の表面は黒っぽく汚れています。(黄砂?) 

池の水温を測るための新兵器として、この日は非接触式の赤外線温度計を持参しました。 
試しに雪面の温度を測ってみると、なぜか-2.7℃と異常な数値になりました。 
理屈は分からないのですが、測定対象に得手不得手があるようです。
普通の温度計で雪面の気温を測定し直すべきだったのに、カエルの撮影が忙しくなって忘れてしまいました。

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