2021/05/13

ツグミとヒヨドリが赤い実がついたハナミズキの並木道で縄張り争いの心理戦(冬の野鳥)

 

2021年1月上旬・午前後12:50頃・雪
前回の記事:▶ 冠雪したハナミズキ樹上および電線から脱糞して飛ぶツグミ(冬の野鳥)【HD動画&ハイスピード動画】
雪が降り続く昼下がりに街路樹のハナミズキ(別名アメリカヤマボウシ)の枝から飛び立ったツグミTurdus eunomus)は、車道を渡って反対側の歩道の街路樹に止まり直していました。 
大量に冠雪した枝が屋根代わりになっていて、降りしきる雪がかかりません。 
この木には赤く熟した果実が残っているので採食シーンを撮りたかったのですが、待てど暮せどツグミはハナミズキの熟果を食べてくれません。 
私のことを警戒しているのでしょうか? 

しばらくすると、同じ木に2羽のヒヨドリHypsipetes amaurotis)が相次いで飛来しました。 
初めヒヨドリはツグミから離れた枝に止まっていたのに、さり気なく近くの枝に移動したり、振り返ってツグミを見たりしています。 
結局、先客のツグミは赤い実を食べずに飛び去ってしまいました。 
数で勝るヒヨドリの心理的圧迫(多勢に無勢)に負けて逃げ出したように私には見えました。 
ツグミの追い払いに成功した(ように見えた)ヒヨドリは別の方向に飛び去り、少し離れた街路樹ハナミズキに止まり直しました。 
そこで赤い実を次々に採食しています。 
先客のヒヨドリと後から来たヒヨドリがハナミズキ樹上で鉢合わせになり驚いたようですが、喧嘩にはならず仲よく赤い熟果を啄んでいました。 

縄張り争いというほどあからさまな闘争をしなくても、神経戦でライバルのツグミを追い払ったようです。 
飛び立つ瞬間を1/5倍速のスローモーションでリプレイ。 
逃げたツグミはハナミズキの並木道を見下ろす電線に止まり直しました。

仮にヒヨドリの群れがいなければツグミがハナミズキの熟果を食べるシーンが撮れたはずだと信じているのですけど、もしかするとツグミの口に合わない(好みではない)のですかね? 

以前、熟柿を巡るツグミとヒヨドリの喧嘩を観察したことがあります。 
体長ではヒヨドリの方がツグミよりもやや大きいのですが、このときの力関係はほぼ互角のようでした。
▼関連記事(8年前の撮影) 
ツグミとヒヨドリの喧嘩【冬の野鳥:ハイスピード動画】

雪山に残されたニホンイノシシのフィールドサイン(その1)寝床?、牙研ぎ跡、糞

 

2021年1月中旬・午前11:30頃・晴れ
前回の記事:▶ 雪山をラッセルして逃げるニホンイノシシ2頭@山形県
ニホンイノシシSus scrofa leucomystax)2頭が直前まで隠れていた場所をじっくり調べてみましょう。 
この日の雪質はフカフカの新雪ではなく表面が固く凍っていました。(クラスト状態) 
スノーシュー(西洋かんじき)を履いた私がザクザク、ガリガリと騒々しい足音を立てながら登って来たのに、至近距離までイノシシに近づけたということは、きっとぐっすり寝ていたのでしょう。 
山麓の果樹園(標高295m地点)で前日(または夜)に落果を採食した後で雪深い山林に戻り、ここ(標高335m地点)をねぐらとして寝ていたようです。 

踏み固められた寝床の周囲の雪面には黄土色の新鮮な糞が大量に残されていました。 
複数回に分けて排便したようなので、ここに長時間留まっていたか、定期的に何度もここのトイレに戻って来た(溜め糞?)ということを物語っています。 

スギ(杉)の木の根元の雪が深く掘り返され、土が露出するほどの穴が開いていました。 
穴の底には雪解け水がわずかに溜まっていたのですけど、泥浴びをするための「ヌタ場」を自分で作ろうとしていたのでしょうか? 
ヌタ場にしては狭すぎる気がします。 
穴の底に小さな水たまり

寝床の横に立つスギの幹には、イノシシが牙を研いだような新鮮な傷跡が残っていました。 
縄張り宣言のマーキングをした「サインポスト」なのでしょうか? 
剥がされたスギの樹皮や落ち葉が寝床の雪面に散乱していたので、イノシシは寝心地を良くするためのクッション(断熱材の敷きわら・寝わら)を意図的に集めて敷き詰めたのかもしれません。 
雪深い里山でも寝床を作る習性がイノシシには残っているようです。
子育て・出産をするために作る「巣」と「寝床」は違いますが、作り方は共通したところがあるらしいです。 

スギ幹に牙研ぎ跡


川道武男、川道美枝子『けものウォッチング』という本を読むと、兵庫県六甲山系の禁猟区でニホンイノシシを追跡調査した話が書いてありました。
イノシシは昼行性である。(中略)日が沈み始めると、それまで土を掘っていそがしく餌を探していたイノシシが、きまって寝床に移動を始める。イノシシの寝床は地面を鼻で掘った楕円形の窪地で、ふつうその上に落葉などが敷かれている。寝床は使われるたびに整地し直され、また落葉がかき入れられるが、暗くなる頃には寝床の準備も終わる。 
 イノシシはいったん寝床にゴロンとなると翌朝まで起きない。そのうえ朝寝坊である。場合によっては、明るくなってから2時間、3時間もしないと起きない。そのため、睡眠時間は12時間を越えることが多い。寝ているときは静かであるが、よく寝返りを打っている。(p46より引用)
イノシシは蹄をもつけもの(有蹄類)の中で例外的に巣を作る。(同書p47より)

今泉忠明『アニマルトラック&バードトラックハンドブック』によると、
 イノシシは湿地で転げ回り、全身を泥まみれにする習性がある。これを“ヌタを打つ”といい、それをする場所が“ヌタ場”である。泥浴びした後イノシシは近くのマツの木の根元に行って、幹を牙で削り(牙かけ)、体をこすって松やにをつけ、体毛を磨く。(p13より引用)

ポケット版『学研の図鑑9:フィールド動物観察:足あと、食べあと、ふん』によれば、
イノシシのふんは、イノシシが土をほりかえした場所の近くや、ぬた場の近くなどでよく見つかります。(p82より引用) 
・ニホンイノシシが地面をほりかえしたあと:きばと鼻の先を使ってほりおこしますが、まるでトラクターでほりおこしたようになります。 
・ニホンイノシシがほりかえしたあな:はば1m以上になるようなあなもあります。(p48より)


つづく→逃げたイノシシの追跡を再開



【追記】
高橋春成『泳ぐイノシシの時代 (びわ湖の森の生き物)』によれば、
 かつて私(筆者:しぐま註)は、滋賀県の雪深い伊吹山地を猟場とする狩猟者から、イノシシがマツやスギの大木の下に雪を取り除いた浅い凹地を作って雪をしのいでいるといった話を聞いたことがあり、実際にそのような現場を目撃した。 (p111より引用)
今回私が見つけた現場をまさに説明するような記述でした。


2021/05/12

マガモ♂の求愛誇示 その3:♂同士の小競り合いなど(冬の野鳥)

 

2020年11月中旬・午後15:25頃・くもり 

西日が射す夕方の川でマガモ♀♂(Anas platyrhynchos)の群れが求愛ディスプレーを繰り広げています。 

♂が水はね鳴き、そり縮み、見せかけ羽繕いを披露しています。 
ただし、どの♀個体に対するアピールなのか私には不明でした。 

突進遊泳(しぐま造語)は♀♂共にやっていました。 
♀の「突進遊泳」は♂をけしかけているのだそうです。 

♀の行動でもう一つ気になるのは、♂の後を斜め後ろから追いかけるように川面を遊泳しながら、閉じた嘴で水面を斜めに漕ぐような仕草です。 
自身の左右どちら側にでも嘴を水面に差し込んで漕いでいます。 
このとき嘴を閉じたままなので、水面採食行動ではなさそうです。 
私が見る限り♀しかやらないので、一種の求愛誇示(おそらく♂へのけしかけ)だと思います。 
「嘴漕ぎ遊泳」と勝手に造語してみました。 

求愛の合間に夕方の行水を始める♀♂個体がいました。 
水浴も求愛誇示(アピール手段)のレパートリーのひとつなのでしょうか? 
それならもっと頻繁にやる気がします。 

群れのあちこちで色んな行動が並行して巻き起こるので、1/5倍速のスローモーションでリプレイしてみます。(@1:55〜) 

♂同士の小競り合いもときどき勃発しました。 
背後から近づく♂に驚いて♂が慌てて飛び退くように逃げました。(@3:54) 
背後で羽繕い(見せかけ羽繕い?)していた♂が急に振り向くと、背後に居たライバル♂を軽く追い払いました。(@5:00) 
それと同時に、♀に一番近く(背後)でぴったりマークしていた別個体♂(おそらくα♂)が♀の右にいる♂に嘴でつつくような素振りを見せて「俺の♀に近づくなよ!」と牽制しました。

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