2013年9月下旬・気温31℃@日向
ニホンザルの死骸を土に還す者たち:#19
3日ぶりの定点観察。
死骸の厚みが更に無くなり、毛皮がぺしゃんこに潰れていました。
文字通り骨と皮だけになっています。
毛根から脱落した毛が益々広範囲に散乱しています。
体内の肉や内臓を食い尽くした大量のウジ虫はもう殆ど死骸に残っていません。
死骸から一斉に離脱して地中で蛹になったのでしょう。
2頭のうちで生物分解が早く進んだ死骸Lにはもはやハエの成虫もあまり来ていません。
腐臭が大分収まり、内心ホッとしました。
臀部に「尻だこ」が丸ごと残っていますけど、分解されにくい軟骨なのかただの角質なのか気になります。
【追記】 尻だこ,尻胼胝[英ischial callosity]旧世界ザルの尻の坐骨結節に相当する部位にある,無毛の非常に丈夫な結合組織性の皮膚.知覚神経がほとんど分布せず,それで長時間,枝の上に尻だこをのせて睡眠・休息していても痛くならない.これを木の枝にうまくひっかけ,体を支えるのであり,樹上生活に対する適応例の一つ.大形類人猿では,あまり発達していない. (『岩波生物学辞典第4版』より引用)
未だ虫が来ている方(死骸R)の全身像を10秒間隔で2時間インターバル撮影した計705枚の連続写真を素材に早回し映像を作成しました。
檻の金網から落ちる影が日時計のように死骸の上を移ろい行きます。
(メッセージ性がありフォトジェニックかもしれませんが、記録映像としてはちょっと目障り…)
特筆すべきは、この日もフキバッタが毛皮の上を徘徊していることです。
関連記事→#17「死んだ猿の毛を食すフキバッタ♀」
同じ連続写真を素材に、更に2倍早いタイムラプス映像も作ってみました。
せっかちな方はこちらをご覧ください。
つづく→シリーズ#20
2013年9月下旬
山際にある鎮守の森(スギ林)の薄暗い林床に咲くサラシナショウマの群落で、見慣れないハナアブが飛び回り訪花していました。
ホバリングする様子を240-fpsのハイスピード動画で撮ってみました。
花に脚を掛けて止まり口吻を伸ばして花蜜・花粉を舐めている間も完全に翅を止めることはほとんど無く、アイドリング運転のように羽ばたき続けています。
ホバリング(停空飛翔)しながら穂状花序をぐるりと回り、効率良く次々と吸蜜を続けます。
同じ花穂で小蛾(種名不詳)とニアミスしたシーンがちょっとおもしろいですね(@5:08〜5:25)。
同一個体の訪花シーンを通常のHD動画でも撮ってみました。
食後は近くの草むらで翅を休めて身繕い。
両脚を擦り合わせ、複眼を拭い、後脚で背中を掻いています。
化粧が済むと飛び去りました。
「体全体が真っ黒で腹端だけが目立つ赤褐色」というツートンカラーの配色は、薄暗い林床でもとてもよく目立ちます。
一緒に訪花していたクロマルハナバチ♀の配色と少し似ていますが、ベーツ擬態しているのでしょうか?
関連記事→「サラシナショウマを訪花するクロマルハナバチ♀」
それでもよく見れば全体にほっそりしていて毛深くないので、すぐに虻と分かります。
調べてみるとハナアブの中にはクロマルハナバチ♀にもっとよく似た種類が他にいるようです(ミケハラブトハナアブやケブカヒラタアブなど)。
いつもお世話になっている「一寸のハエにも五分の大和魂・改」画像掲示板にて問い合わせたところ、茨城@市毛さんから早速ご教示頂きました。
ツマキオオヒラタアブ Dideoides coquillettiの♀です.
2013年9月下旬
ニホンザルの死骸を土に還す者たち:#18
猿の死骸が放置された檻の金網をハネカクシの一種(黒タイプ)がどんどん登っています。
後翅が伸びており、今にも飛び立ちそうな予感がします。
慌てて240-fpsのハイスピード動画に切り替えました。
身繕い(前脚で触角の掃除)をしてからようやく後翅を羽ばたかせて飛び立ちました。
この日の定点観察では死骸の周囲でハネカクシ類が盛んに飛び回る姿を目撃したのですが、色々と目移りしてしまって飛翔シーンの撮影に成功したのは結局この1回きりでした。
関連記事→「猿の死骸に来たハネカクシの仲間(黒)」
つづく→シリーズ#19