2012/10/17

ジガバチ♀が巣穴を試掘



2012年7月下旬

山道の裸地を徘徊するジガバチの一種(※ヤマジガバチまたはサトジガバチ)♀を撮っていたら、とある地点で穴を掘り始めました。


※ 後日、同じフィールドで捕獲した♀♂はヤマジガバチと写真鑑定して頂きました。
 巣穴の横には緑の苔が少し生えています。
掘削の道具は大顎です。
小石を咥えて少し離れた場所に捨てに行きます。
今度は近くに落ちていた小枝を拾って運び、掘りかけの穴の上に置きました。
どうやらゴミを掻き集めて巣穴の偽装工作を行っているようです。
最後はアリの接近を嫌って飛び去りました。

ジガバチの営巣行動を観察出来たのはこれが初めてということもあり、今回の一連の行動は意味不明です。
第一の可能性は、一時閉鎖した巣坑を点検しに来たというものです。
狩りの途中で巣穴が心配になり様子を見にきたのかもしれません。
(他の狩蜂、例えばヒメクモバチの観察体験から思いつきました。)
しかし一時閉鎖にしては余りにも地面が固く締まっている気がします。
しばらく監視しても蜂は戻って来ません。
また、地面に巣坑の痕跡はありませんでした。

第二の解釈は、新たに巣穴を掘る場所を探しているというものです。
しかし最後の埋め戻し行動が謎です。

第三のシナリオは労働寄生のための盗掘です。
他のジガバチが貯食した巣穴と思って掘ってみたのに空振りだったのでしょうか?

謎を解くには地道に観察例を増やしていくしかありません。
この夏、ジガバチについて勉強したり自分で観察を続けた結果、第二の可能性が有力だと思っています。
この記事の表題もその解釈に沿ったものにしました。
おそらく少し掘ってみて土質が気に入らずに営巣を断念したものの、本能行動に縛られて本来は不必要な埋め戻し行動および偽装工作をおざなりながらも遂行したと思われます。
フィールドで生き物を相手にすると、いきなり教科書通りの典型的な営巣行動が見れるとは限らないのが悩ましいところです。

岩田久二雄『自然観察者の手記』p119 第8章ジガバチの奇習によると、

ジガバチ類は、狩猟の前に巣を掘り、巣坑を出るたびごとに、それを一時的にしろ永久的にしろ、閉塞するという本能に縛られているわけである。それが見捨てる坑にも、不要な労働を強制するのである。
同氏による『ハチの生活』p75には「(ジガバチが)中止した坑をごていねいにも埋めます」との記述あり。




2012/10/16

マガネアサヒハエトリ♂の徘徊・跳躍



2012年7月下旬

ススキの茂みで徘徊していた小さなハエトリグモ。
マガネアサヒハエトリ♂でしょうか。
(成体なのかな?)
自然光下でもメタリックブルーに輝く歩脚の前面が目立ちます。

♂は初見です。

動画撮影後に一時捕獲しました。
CO2麻酔下で採寸すると体長5mm。




歩脚の前面に黒条があり、またストロボを焚くとメタリックブルーに輝く。






2012/10/15

ジガバチの交尾未遂



2012年7月下旬

地面を歩き回るジガバチの一種(ヤマジガバチまたはサトジガバチ)♀を撮影していると、急に別個体が飛来して突撃しました。

蜂が交尾を始める瞬間を野外で撮れたのは初めてです。
冒頭は1/3倍速のスローモーションにしてみました。
勇ましく♂が低空飛行で♀に飛びかかるや、電光石火でマウントに成功。
そのまま交尾を試みるも、相性が悪いのか上手くいきません。
奮闘中にお邪魔虫が闖入。
徘徊するクロアリに追い立てられて、何度か交尾場所を地上で転々と変えました。

正面からのアングルになるとようやく♂の頭楯が白いことを確認できました。
これは性別判定に使える特徴です※。
上にマウントした♂は♀の首根っこを噛んでいるように見えます。
生憎カメラの電池切れで、ペアが別れる瞬間を見届けられませんでした。
同定のため捕獲しようと思ったら、殺気を感じたのか逃げられました。
ヤマジガバチ(Ammophila infesta)とサトジガバチ(Ammophila sabulosa nipponica)は胸背や胸側面の点刻の状態で区別されるらしく、写真鑑定は困難とのこと。

後日、同じフィールドで捕獲した♀♂はヤマジガバチと写真鑑定して頂きました。

※『ファーブルが観た夢』p58によると、

(ジガバチ♂の)見た目は♀とそっくりである。顔に白い斑点があり、身体が小ぶり。

♂は必死で右から左から何度も試みるものの、腹部が滑ってどうしても交尾器を結合できませんでした。

見ている側ももどかしくなります。
これを「交尾未遂」と表現するのが正しいのか、それとも♀による「交尾拒否」なのか私には分かりません。

  • 交尾が成功するには学習が必要? 今回は交尾経験の浅いペア同士だった?
  • 体長差があり過ぎて(♀>♂)交尾器が届かない? 
  • 実は別種?(生殖隔離
    撮影地が山か里かと問われれば間違いなく山地なのですが、だからといってヤマジガバチとは限らないそうです。交尾できないのはサトジガバチとヤマジガバチのペアだから?
  • ♀はときどき腹部を上に持ち上げています。これが協力的な体位なのか交尾拒否行動なのか不明。♂の交尾器が届かないようにしている?
  • ♀は羽化後に一度しか交尾しないで、次回からは交尾拒否する?※
近くの樹上で後日観察した別のペアでは、♀はこれほど大人しくしておらず、交尾拒否された♂はあっという間に逃げました。(記事はこちら→。
ということは、今回のケースの♀は交尾に協力する意志はあったのかな?


あるいはもしかすると交尾失敗と思ったのは私の早とちりで、ジガバチの交尾はこんなものなのかもしれません。
一瞬でも交尾器が接触すれば移精できたりして…?
それとも、腹部の側面を互いに長時間擦り合わせるのは前戯なのかな?

2010年に観察したジガバチ(ミカドジガバチ?)の交尾の映像を見直すと、安定した結合状態は長続きしませんでした。
交尾器が連結すると、♀の長い腹部はS字状に湾曲していました。(腹端は高く上げていた。)


※【追記】
新刊の『狩蜂生態図鑑』p24によると、
サトジガバチの産卵に必要な交尾は1回だけで、一度交尾の済んだ♀にとって飛びかかってくる♂は邪魔なようで、中脚を上に伸ばして♂を防いでいる。
この点を踏まえて映像を見直すと、♀は交尾拒否していないことが分かりました。



♀の上にマウントした♂の顔は白い



↑スローモーションのリプレイはこちらの編集の方が良かったかも。


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