2012/03/12

音痴になったエンマコオロギ♂の鳴き声を解析してみる

エンマコオロギの飼育記録(♂2♀1)

エンマコオロギTeleogryllus emma)♂♀一匹ずつのペアでしばらく飼ってみてから、新たに採集してきた♂1匹を追加してみました。
♂2匹には明らかな体長差があり、新顔の♂は小柄です。
投入前に胸背に油性ペンで白点を描き、はっきり個体識別できるようにしました。
♀を巡る♂同士の争いなど興味深い行動が見られました。
体格通りに順位がα♂(無印)>β♂(白)と決まりました。
後日、映像付きのブログ記事を書く予定です。


飼育記録の時系列が前後しますが、更に飼い続けると…。
(映像はここから。)



2011年10月中旬・室温20℃

この日の晩もβ♂(白)が頻りに鳴いています。
しかし、どうも鳴き声が変です。
エンマコオロギのこんな掠れた鳴き声は聞いたことがありません。
あんなに美声で夜毎鳴いていたのに、濁ったような嗄れ声になり、酒焼けしたようなハスキーボイス。
発音器である前翅の翅脈が劣化(老化)して擦り切れてきたのだろうか。
(走査型電子顕微鏡で翅の劣化を調べることが出来たら楽しそうです。)
ずっと優位だったα♂(無印)も衰えたのか、いつの間にか鳴かなく(鳴けなく?)なりました。
それと共に順位が逆転したようで、α♂(無印)はβ♂(白)をあまり攻撃しなくなりました。
以前α♂(無印)が元気な時は、β♂(白)が♀に近づくことも許さず少しでも求愛歌を鳴くとすごい剣幕で激しい攻撃を仕掛けてきたのに…。
それとも音痴な掠れ声はエンマコオロギの耳には同種の鳴き声と認識されないのだろうか?
産卵管を持つ♀の横で♂(白)が鳴き続けても、♀は無視してカボチャを食べています。
もはや求愛目的ではなく、惰性で鳴いているのかな?



近くに居るα♂(無印)は不干渉…と思ったら終盤、背後からβ♂(白)に伸し掛かって邪魔をしました(@2:18)。
優位行動の名残りかもしれません。
それでもβ♂(白)はめげずに少し移動しただけで鳴き続けます。



※ 撮影のため、飼育容器内のシェルター(隠れ家)を一時的に全て取り除いてあります。
ちなみに3匹の寿命は、早く死んだ順に♂(白)、♀、♂(無印)でした。



試しにこの掠れた鳴き声を声紋分析してみました(スペクトログラム)。
読図を未だあまりよく分かってないのですが、確かに素人目にもノイズの成分が多いようです。


比較対照のため、正常な鳴き声のスペクトログラムを描いてみると下図のようになります。
これは同居させている別個体α♂(無印)が単独で鳴いているときの声です。
(8月下旬・室温24℃。映像はこちら。)
耳で聞くと窓の外で鳴く虫の音が混じっているものの、声紋パターンは比較的明瞭です。


残念ながら同一個体β♂(白)の正常な鳴き声は記録していませんでした。
(鳴き始めるとすぐにα♂が邪魔するため。)
これから本格的に研究するには録音条件や機材などを整備しないといけませんね。


【追記】
大谷剛『昆虫―大きくなれない擬態者たち』という本を読んでいたら、第7章「存在をアピールする鳴く虫たち」にとても興味深いことが書いてありました。
集合に役立つ鳴き方を「呼び鳴き」とか「独り鳴き」と呼んでいる。その後、♂が自分のごく近くにいる♀の存在に気が付けば、多くの鳴く虫は鳴く調子を変えて交尾を誘う。これを「誘い鳴き」とか「くどき鳴き」とか呼んでいる。
(中略)大きくてどこにでもいる声のいいエンマコオロギでも、♀がそばにくると、急にかすれ声になり、調子も変わる。(p116より引用)
p115の図7.3には、エンマコオロギの呼び鳴き(ヒリヒリヒリ、リーリーリー、ヒリヒリヒリ、リーリーリー♪)と誘い鳴き(ヒリヒリ、リーーー、ヒリヒリ、リーーー♪)のオッシログラフが掲載されていました。
書籍では実際の音声を聞けないのが残念です。

私はてっきり発音器の翅が劣化したことで掠れ声になったのかと思ったのですが、そうではないのかもしれません。
改めて真剣に検討し直す必要がありそうです。





2012/03/10

雪の急斜面を直登し遊動採食するニホンザルの群れ



2012年2月中旬・気温10℃

この冬は野生ニホンザルMacaca fuscata fuscata)の追跡、観察に励みました。
今回は我ながら会心作が撮れました♪
普段は虫なんかをチマチマと接写してばかりいる「Σこんちゅーぶ!」ですが、拙ブログ史上最高に壮大な映像をお届けします。
ぜひフルスクリーンの大画面でお楽しみ下さい。

スノーシューでパウダースノーを踏みしめつつ雪山の尾根筋まで登り詰めると、谷の方から風に乗ってニホンザルの鳴き声が聞こえて来ました。
声のする方に進むと案の定、大きな群れと遭遇。

左手の谷から次々に猿が現れ、右手の山を目指して群れが遊動しています。
雪の急斜面を縦列で続々と直登して来ます。
サルも深雪を自力でラッセルするのは大変と見え、先行する猿が通った踏み跡を辿って移動しているようです。
人間の登山なら雪崩を恐れながらつづら折れ(ジグザグ)に登るルートを開拓するはずの急斜面です。
直登はまず考えられないぐらいの勾配なのに、ニホンザルはツボ足で楽々と登って行きます。
ヒトよりも体重が軽く四つ足で分散されるとは言え、さすが野生のサルの身体能力は半端ないですね(驚嘆)。

逆に言うと、ヒトのように楽をするため「急がば回れ」でつづら折れのルートを取るほどの知能がニホンザルには欠けているのだろうか?

ときどき左手の谷からニホンザルの鳴き騒ぐ声がします。
また斜面の下から後続の部隊が登場。
時折こちらを向いて警戒しているようです。
麓の木の枝から子猿と思われる2頭が飛び降りて母猿の後を追います。
先頭の母猿が急斜面を登り切って雪庇に辿り着くと、手を伸ばして立ち木の枝から何か採食しました(冬芽? 木の実? 樹種不明)。
道草を食っている間に子猿が追い抜きました。
群れで遊動しながら各自がときどき採食するようです。

群れへ接近するため撮影の合間に私も少しずつ前進しました。
尾根上は締まった雪質で
風紋が出来ています
うっかり雪庇を踏み抜くと滑落しそうで肝を冷やしました。
斜面の直登コースを選んだ小群はこれで最後。
近づく私に気づいた猿たちが警戒し、奥の林縁を登るルートに変えたのかもしれません。

撮影後に猿が直登したルートを実地検分してみることに。
急斜面を上から見下ろすと、足がすくみました。
スキーでも斜滑降しないと私には無理で、しかも深い新雪なので雪崩を誘発しそうです。

よく晴れた白銀の世界で雄大なパノラマを背景に、厳冬期を生き抜く野生の力強さを目の当たりにして感動しました。


(つづく→「雪山を遊動中にマウントするニホンザル
」)



2012/03/09

水を飲むエンマコオロギ♂



2011年12月上旬
エンマコオロギの飼育記録


室内で♀1匹、♂2匹飼っていたエンマコオロギTeleogryllus emma)の中で、♂1匹が最後まで生き残りました。
右の触角が途中から欠損しています。
※ この♂も12月下旬に死亡。

コオロギが水を飲む様子がようやく撮れました。
水皿として使っているペットボトルの蓋は直径30mm。
コオロギを飼育するには、きれいな飲み水を常に用意してやらないといけません(食べ物よりも重要)。
映像でご覧のように水が少なくなり汚れていたので、撮影後に取り替えてやりました。



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