2011/09/30

垂直円網に横糸を張るオニグモ♀:15倍速動画



2011年9月中旬・夕方・気温26℃

山の麓の神社仏閣にて、丸々と太ったオニグモ♀成体が巨大な網を張っていました。

大きく店開きした枠糸を辿って固定点を調べてみると、

  1. 下草のエノコログサの茎や穂先
  2. 境内の木柱、屋根の軒先
  3. 杉の大木の葉先

夕方に様子を見に行くと、毎日行われるらしい網の張り替え作業で新しい横糸を張り始めたところでした。
自然光でクモの糸や網がきちんとカメラに写るアングルを探すのに苦労しましたが、垂直円網の斜め下から見上げるアングルだと西日に当たって光って見えます。
三脚を据えカメラのピントを網の甑(こしき)部分に固定しました。
円網の正面から撮るには本格的な照明機材を持ち込み強い光を当て続けないといけないようです。
写真でインターバル撮影するか迷ったのですが、結局は動画でひたすら長撮りすることに。
15倍速の早回し映像をご覧下さい。


クモのドキュメンタリーなどでありがちな定番のネタですけど、自分でいざ実際に撮ろうとするとそれなりに難しくやりがいのある課題(テーマ)でした。
くるくるくるっと中心に収束していく動きは見ていてとても気持ち良いです。


網の外側から内側へと螺旋状に粘着性の横糸を張りながらクモが旋回する向きは最後まで一定でした(反時計周り)。
クモは途中で休むことなく一気に造網しました。
日没後の終盤はつるべ落としに暗くなったので、白色LEDの懐中電灯でクモを照らしながら撮影を続行しました。
晴れの予報だったのに怪しい蜘蛛行き雲行きとなり、次第に風が吹き始めました。
風で激しく網が揺れてもクモは平気で、淡々と網の完成を急ぎます。


(つづく→「垂直円網に横糸を張るオニグモ♀:最終段階とこしきの処理」)


2011/09/29

タヌキの死骸を土に還す者たち



自然の営みとはいえ、かなりグロい映像です。お食事前、お食事中の方は決して視聴されないことをお勧めします。


2011年9月上旬

道端でホンドタヌキNyctereutes viverrinus)の新鮮な死骸が横たわっていました。
おそらく夜に車にはねられ輪禍の犠牲となった(ロードキル)と思われます。
未だ腐臭はありません。
外性器もよく見えず、勉強不足の私にはタヌキの性別は分かりませんでした。
成獣の♀ならあるはずの乳首が見当たらないので、若い個体か♂なのかもしれません。
左前足の膝の辺りに外傷が認められますが、古傷なのかも。
早速、キンバエやニクバエの仲間が集まり始めました。
タヌキ死体の開いた口に一番よく集まるようです。


死体に集まる虫の種類やウジ虫の発育状態などから法医昆虫学者は被害者の死亡時刻を推定できるのだそうです。
人気TVドラマCSIに登場するグリッソム主任の得意とする捜査手法ですね。






千載一遇のチャンスなので、死骸が土に還るまでの過程を定点観察することに。
・分解にともなって、遺体を利用する生きものが次々と入れ替わっていく現象は「遷移」とよばれます。 (大園享司『生き物はどのように土にかえるのか: 動植物の死骸をめぐる分解の生物学』より引用) 
・分解者の活動が、温度に依存しているため、日平均気温を積算した積算温度が遺体の分解の速さとよく合致する。 (同書p44-45より)

出来る限り頻繁に通ってみたのですが、連日暑いこともあって生物分解の進行の早さに驚きました。
ハエが産んだ大量の卵がすぐに孵化し※、幼虫(蛆虫)が強力な消化液で腐った肉や内臓を一気に食べてくれます。
(※このハエの仲間は直接幼虫を産み付ける卵胎生だったかも?…うろ覚え。)
死体はぺしゃんこになり、文字通り骨と皮だけになりました。
毛皮から抜けた毛が四散しました。
ご馳走を食べて成長した蛆虫は周囲の土に潜って蛹になるようです。
私が観察したのはハエだけで、なぜか掃除屋シデムシの仲間は見つけられませんでした。


できれば綺麗に白骨化したタヌキの死体を採集して標本にするつもりでした。
残念ながらやがて誰かに死体を悪戯されるようになり(カラスが啄いて裏返した?)、最後は持ち去られてしまいました。
いつか誰にも邪魔されない所でひっそりと、仏画の九相図のように動物の死体が生物分解されていく一部始終を微速度撮影で記録してみるのが私のささやかな夢です。





2011/09/28

網の張り替えで横糸を張るジョロウグモ♀



2011年9月中旬・早朝・気温22℃

承前。
前編はこちら→「網の張り替えで足場糸を張るジョロウグモ♀」。


3年前の晩秋にジョロウグモの同じ行動を夜撮影しましたが、明るい状態の方が糸や網の視認性が高いです。


新旧の網の境目で少しズームアウトすると、横糸を螺旋状ではなく扇状に張っている(一筆書きの折り返し)ことがよく分かります。
粘着性の横糸を張る際に非粘着性の足場糸を切らないで残すのがジョロウグモNephila clavata特有の「仕事の流儀」です。

隣り合う足場糸の間には大体4本の横糸を張るようです。
(場所によって3本や5本のことも。)
このため完成したジョロウグモの網は「五線譜」によく例えられます。


縦糸への固定点が横糸の場合は足場糸のようにジグザグしないで真っ直ぐになります。
眺めていると、ときどき横糸が明らかに脱線することがあるのがなんとも微笑ましい。
足場糸を跨いでしまっています。
クモも完璧なプログラムに従っているのではなく、ミスをしたり結構適当(大雑把)だったりするのかもしれません(融通性)。
あるいは、ひょっとすると造網には習熟性があるのかも。(成熟するにつれて上達する?)


前編で見たように、先程クモが足場糸を張りながらときどき中断しては短い縦糸を追加していました。
確かに所々で縦糸が分岐しています。


観察中に素朴な疑問がもう一つ浮かびました。
網を張り替えているジョロウグモは新旧の網の境目(折り返し点)に到達したことをどのように知るのでしょう?
編み物をするように縦糸の本数を数えている可能性もありますが、ちょっと考えにくい気がします。
横に移動しつつ足元を探っている第一、二脚で古い網に触れたことを感じているように思います。

  • 粘着性の横糸に触れたことを感知?
  • 使い古しの糸になったことを感知?
  • 糸を弾く振動の違いで未完の網の領域ではないことを感知?




♀がせっせと網を張り替えている間、♂らしき二匹がいかにも居候らしく網でじっとしていました。






撮影終了後に失礼して同一個体♀を一時捕獲しました。
この時期にしてはそれほど肥えた♀ではないものの、体長19mmで腹面に外雌器を認めたので成体だと思います。
(亜成体だったりして…?)


捕獲時に容器の蓋に挟んでしまい歩脚欠損


『カラー自然シリーズ60:ジョロウグモ』 p24より引用。
(ジョロウグモ♀)亜成体の生殖口は、膜で保護されています。成体になると保護膜がとれ、2つのくぼみのようなものができます。この生殖口の奥には精子を保存する受精嚢という袋があり、産卵のときに卵と精子を受精させます。






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