2010/12/30

コガタスズメバチ創設女王を標識してみる




2010年6月中旬

コガタスズメバチVespa analis insuralis)創設女王に個体識別のマーキングを施すことにしました。
近々羽化してくるワーカーと明確に区別するためです。
単独営巣期の女王蜂は一般に神経質ですが、徳利状の外被が完成したので一時捕獲しても巣を捨てて逃げるおそれは少ないだろうと判断しました。
在巣の女王を安全にかつ巣を壊さないようにどう捕獲するか悩みました。
試行錯誤の末、捕虫網を下から被せて出巣を待つことに。
女王が網に取り付いてくれてあっさり御用。
麻酔容器に移し、暴れる女王様を炭酸ガス※で眠らせました。
背中に二ヶ所(胸部と腹部)白い油性ペンで印を付けました。


ついでに採寸するのを忘れてしまった。
麻酔から覚めかけたところで巣の外被に掴まらせました。
長時間ふらついていたので少し心配です。
女王は念入りに身繕いを繰り返しました。
足先が胸背中央にも届くようですが、幸いマーキングは掻き落とせないようです。
やはりマーキングした背中に違和感があるのかな?
 麻酔から完全に回復するまで見守りました。 

※ CO2ボンベはペットショップの熱帯魚コーナーで水草育成用のスプレー缶を販売しています。


捕獲した蜂を低温で冷やすことで眠らせることも可能ですが、CO2の方が簡単で即効性があるのでフィールドワークで虫の動きを一時的に止めたい場合、昨年から私はこちらを愛用しています。
エーテルは入手が面倒で取扱いも難しいそうです。
つづく
 

単独営巣期のコガタスズメバチ女王




2010年6月中旬

なぜかこの日のコガタスズメバチVespa analis insuralis)女王は外被の増築を行いませんでした。
巣材のペレットを咥えて帰巣したように見えましたが、巣内で使い切ったようです。
育房を増築したのだろうか。
スズメバチは原則として、外から採取してきた巣材は外被に付け足し、巣盤・育房用の巣材は外被の内側から齧り取った緻密な繊維を再利用する(scrap-and-build工法)はずなので、不思議に思いました。
初期期の外被は未だ一層しか無いので再利用する余裕が無いのだろうか。
それともあのペレットは幼虫に与える肉団子だったのだろうか。
巣口の首にぶらさがって点検中に外被上を徘徊中のアリを発見し直ちに攻撃・撃退しました(1:57)。

スズメバチ初期巣を観察する際の注意点
女王の帰巣シーンを接写するためカメラを構えて巣のすぐ近くで待機していると、黒いカメラの前で女王が威嚇するようにホバリングするので焦りました。
ゆっくり後退して巣から離れると許してくれました。
これは何度も見られた行動なので、通説通り黒はスズメバチを刺激する色のようです。
念のためカメラの黒いボディを白い袋などで覆うと良いかもしれません。
私はマクロモードでの接写を諦め、少し離れた位置から望遠で狙う方法に切り替えました。
接写したい時はマクロレンズを装着すれば安全な距離を保ったままクローズアップできます。
頭髪が黒い人は最低限、帽子を被るなどして隠しましょう。
黒っぽい服はもちろん、香料を含む整髪料や化粧品もご法度です。
ワーカーとは異なりスズメバチの女王は一般に攻撃性が低く、この件以外では撮影中に危険を感じることはありませんでした。
次世代を残す使命のある女王蜂は保身第一に行動するようです。
真似する人は余りいないと思いますが、観察の基本的な注意点を記しておきます。

つづく
 


籠城するコガタスズメバチ創設女王




2010年6月中旬

巣口からコガタスズメバチVespa analis insuralis)創設女王が顔を出しています。
出巣の兆候かと思いきや、動きがありません。
暑い巣内は息が詰まるのだろうか。
それともアリが外被上を這い回っているのを察して(虫の知らせ)警戒中なのだろうか。
コガタスズメバチの初期巣の出入り口は細長い首の先端に一つあるだけです。
仮に巣がアリの集団に襲撃されても(多勢に無勢)、敵の侵入路を限定してそこを守れば1対1の局地戦に持ち込み個別に撃破するだけで済みます。
籠城戦略の基本ですね。
スズメバチの武器である大顎を前面に出して、外を見張りつつ出入り口を体で塞いでしまえば侵入者への備えは万全です。
ワーカーが羽化すれば巣の防衛力も上がるので、外被の筒状の首部分は不要になります。 
つづく

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