2021/01/23

ヒメキンギョソウに訪花するも吸蜜できないエントツドロバチ♀

 

2020年9月下旬・午前9:40頃・晴れ
▼前回の記事 
エントツドロバチ♀が庭で朝の化粧と日光浴
民家の庭先の花壇で朝の日光浴と身繕いを済ませたエントツドロバチ♀(別名オオカバフスジドロバチ;Orancistrocerus drewseni)が、黄色いヒメキンギョソウ(リナリア)の花に飛来しました。 
しかし花の上をウロウロと徘徊するだけで、吸蜜できていないようです。 
リナリアは未だ比較的珍しい外来植物(園芸植物)なので、在来種のエントツドロバチは複雑な花の構造や蜜腺の位置が分からないのかもしれません。 
薄いレモン色の花弁に蜜標(濃い黄色:オレンジ色)が用意されているのに、花筒の入り口が分からないのは不思議です。 
「エントツドロバチ♀はじきに業を煮やして、ヒメキンギョソウの花の後ろにある細長い距を外から噛み破って穿孔盗蜜するに違いない!」と期待しつつ私は動画に撮り続けたのですけど、予想が外れました。 
盗蜜を編み出して攻略するほどの頭脳が無いようです。 
一方、知能が高くて舌の長いミツバチはリナリアの花の攻略法を突き止め、正当訪花で吸蜜できていました。
▼関連記事 
ヒメキンギョソウ(リナリア)の花で採餌するセイヨウミツバチ♀
有能なミツバチ♀と比べて、エントツドロバチ♀はいかにも愚鈍な印象を受けました。 
訪花吸蜜モードではなく、獲物となるイモムシを探索中(狩りモード)なのかな?

羽化直後のキタキチョウ♂にしつこく誤認求愛する♂の群れ(同性愛)

 

2020年9月下旬・午前9:50頃・くもり 

里山の林道沿いの草むらで数頭のキタキチョウEurema mandarina)が何やら思わせぶりに飛び回っていました。 
メドハギの群落で翅をしっかり閉じて止まった♂aが、葉に止まっています。 
マメ科のメドハギはキタキチョウの食草のひとつです。 

飛来した他の♂が♀と誤認して求愛する度に、♂aは閉じた翅を軽く羽ばたかせています。 
交尾拒否の意思表示というよりも、自分も♂であることを相手の♂にアピールしているのでしょう。 
シロチョウ科の♀は交尾拒否の際に腹端を持ち上げますが、♂aはそれをしませんでした。 
キタキチョウの♀なら、翅の色がもっと白っぽいはずです。 
♂aが訪花吸蜜中なのか、産卵中の♀なのか、初めはよく分かりませんでした。 




私が近づいてよく観察してみると、♂aはどうやら羽化直後の個体らしく、黄色い蛹の抜け殻(羽化殻)にしがみついていました。 
伸ばし終えたばかりの翅が乾くのを待っているようです。  

羽化したばかりの♂aの周囲を別個体の♂が飛び回ったり、真上でホバリングしたりして、求愛しています。 
複数の♂が入れ代わり立ち代わり飛来して、結構しつこく♂aにアタック(求婚)しています。 
それにしても、どうして♂同士で求愛(同性愛)してしまうのでしょうか? 
キタキチョウ♀は羽化直後に♂を呼ぶ性フェロモンを放出(コーリング)しないのかな? 
なぜ誤認求愛にすぐ気づけずにしつこくアプローチしてしまうのか、不思議です。 
探雌飛翔中の♂は、羽化直後の同種個体に性別問わず誘引されるのかもしれません。 
羽化直後の個体からは羽化液(蛹便)など特有の匂いがするのでしょう。 
それとも♂は同種の蛹そのものを見ると強く惹かれるのかな?

浅間茂『カラー版 虫や鳥が見ている世界―紫外線写真が明かす生存戦略 』という中公新書によれば、
シロチョウ科のキタキチョウは♂の黄色い部分が紫外線を反射し、♀は吸収した。(中略)キタキチョウは紫外線反射により、互いに雌雄を容易に見極めている。 (p24-26より引用)
羽化直後の鱗粉は性差がはっきり現れないのでしょうか?
あるいは曇天時には区別しにくいとか?
私も紫外線カメラで確かめてみたくなります。

撮影しながら私が横にずれたら、ようやく♂aが抜け殻から飛び立ちました(羽化直後の初飛行!)。 
羽化後の♂aは花蜜を摂取して栄養補給するのかと思いきや、ハッカの花で吸蜜中の別個体♂cに対して背後から迫り、誤認求愛しました。 
訪花中の♂cも閉じた翅を軽く開閉して交尾拒否の意思表示。 
誤認求愛の連鎖が起きていることになり、♂の業の深さを感じました。 
この日の山行では数多くのキタキチョウと遭遇しました。 
キタキチョウも他の多くの昆虫と同じく雄性先熟だとすれば、この時期の成虫は♂ばかりなのかもしれません。(性比の偏り) 
分かりやすく言うと、深刻な嫁不足なのでしょう。 
♀が羽化してくるまでの間、♂同士で配偶行動の練習をしているのかな?


▼関連記事(4年前の撮影)


 

2021/01/22

ヒミズの死骸に群がるアリとキンバエ♀

 

2020年9月下旬・午後15:50頃・くもり 

里山の峠道の舗装された路上にヒミズUrotrichus talpoides)が仰向けで死んでいました。 
素人目にはかなり新鮮な死骸で、目立った外傷や出血は認められませんでした。 
私の鼻には未だ何も死臭を嗅ぎ取れません。
穴掘りするモグラと違い、ヒミズの前脚は華奢です。 

クロヤマアリFormica japonica)のワーカー♀と別種の微小な赤アリ(種名不詳:腹部だけが黒っぽい)が死骸の毛皮の上を徘徊していました。 
2種のアリがニアミスしても争いにはならず、何事もなくすれ違いました。 

死臭を嗅ぎつけたキンバエの一種♀(Lucilia caesar?)が早速飛来すると、口吻を伸ばして死骸の表面を舐め回し始めました。 
どういう訳か、死んだヒミズの左後脚の足の裏を特に舐めていました。 

余談ですが、実は撮影の直前に、散歩していた近所の飼い犬2頭と放し飼いの状態ですれ違いました。 
(飼い主は後から少し遅れてついて来ました。)
嗅覚の優れたイヌが路上に転がっていたヒミズの死骸に気づかなかったはずがありませんが、何も興味を示さずに通り過ぎました。 
よほど躾の行き届いた飼い犬なのか、それともイヌはヒミズ(の匂い)が嫌いなのですかね? (※ 追記参照)
リードを離して飼い犬を自由に散歩させるのは都会(人口密集地)では問題になりますけど、過疎地の農村部では別に目くじらを立てることもないでしょう。(TPO次第) 
山歩きの際にツキノワグマとの遭遇事故を防ぐために最も効果的なのは、鈴を鳴らすことよりも番犬を連れて歩くことです。 
また、里の農作物を食い荒らす野生ニホンザルなどの害獣を集落から追い払うモンキードッグとしての役割も期待されています。


※【追記】
哺乳類のフィールドサイン観察ガイド』でヒミズの死体について調べると、
体に独特のニオイがあるからか、捕食者にハンティングされても食べられないで放置されることが多いようだ。(p97より引用)

ヒミズに特有の匂いを私はまだ感じた記憶がありません。 

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