2024/05/16

タヌキの溜め糞を舐めながら翅紋を誇示するヒロクチバエ科Rivellia cestoventris

 

2023年8月上旬・午後12:20頃・晴れ 

平地のスギ防風林の獣道にホンドタヌキNyctereutes viverrinus)が残した溜め糞場wbc-1の定点観察に来てみると、久しぶりに新鮮な糞が追加されていました。 
獣糞には未消化のトウモロコシが大量に混じっています。 
常連の昆虫たちで賑わっていましたが、今まで見たことのない、カラフルで丸っこい微小なハエ2匹に注目しました。 
オレンジ色の体色で、腹部には黒い横縞模様があります。 
口吻を伸ばして獣糞から吸汁しながら、翅をリズミカルに開閉していました。
透明な翅には独特の斑紋があり、これを誇示しているようです(ディスプレイ行動?)。 
実は、同種と思われるハエが数百m離れた別の地点の溜め糞場phにも来ていて、気になっていました。 



マクロレンズを装着してじっくり接写したかったのですが、如何せんスギ林は暗過ぎます。 
仕方がないので、動画編集時に1.5倍拡大してリプレイしてみました。(@1:03〜) 

謎の小バエの正体を知りたくて、みんなで作る双翅目図鑑 画像一括閲覧ページで絵合わせすると、 どうやらヒロクチバエ科Rivellia cestoventris らしいと判明。 
和名はまだ付いていないようです。 
ちなみに、学名で肝心の種小名がR. cestoventirsと書いてあるのは誤植ではないでしょうか? 
英語版wikipediaでRivellia属の種名を列挙したページを参照すると、R. cestoventrisと書いてありました。 
難しい学名はみんな初出の情報源からコピペするようで、後発組の虫撮りブログなどで誤字誤植がどんどん広がってしまいます。 
まるでDNA複製酵素のエラーから突然変異が生じ、集団内に広がっていく様を連想します(ミームの一種?)。
ふつうは些細な誤植にいちいち目くじらを立てることは無いのですが、学名の誤植は1文字でも致命的(有害な変異)なので、誰かが気づいたらDNA修復酵素の役割を果たして訂正する必要があります。
ヒューマン・エラーやケアレスミスで「cestoventirs」と誤字しそうになったときに、AIが「もしかしてcestoventris?」と注意喚起のスペルチェック(サジェスチョン)してくれるようになると助かります。
どなたか出典の原著論文で学名の種小名を確認してもらえると助かります。 
BYUN, Hye-Woo, et al. A systematic study of Rivellia Robineau-Desvoidy in Korea, with emphasis on the species allied to Rivellia basilaris (Diptera: Platystomatidae). Journal of Asia-Pacific Entomology, 2001, 4.2: 105-113.
Google Scholarで検索すると、全文PDFをダウンロードするには有料でした。
しかし要旨を読むと、R. cestoventrisとしっかり書いてありました。
韓国の同じ研究グループによる続報が出ており、そちらは無料で全文PDFがダウンロード可能でした。
この論文でも種小名の表記はcestoventrisでしたので、間違いないでしょう。
BYUN, Hye‐Woo; HAN, Ho‐Yeon. Revised key and phylogenetic analysis of Korean Rivellia (Diptera: Platystomatidae), with redescriptions of two little known species. Entomological Research, 2004, 34.2: 83-90.


他にタヌキの溜め糞場wbc-1に集まっていた昆虫を列挙すると、オオヒラタシデムシNecrophila japonica)の成虫および幼虫、キンバエの一種、ニクバエの一種、ハネカクシの一種、などです。 


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2024/05/15

古い巣穴を掘り返し古い寝床を外に捨てるニホンアナグマのペア【トレイルカメラ:暗視映像】

 



2023年8月下旬

ニホンアナグマMeles anakuma)の家族が転出した後の旧営巣地(セット)をトレイルカメラでしつこく監視を続けていると、ようやく面白い新展開がありました。

シーン1:8/14・午後13:51(@0:00〜) 
たまたま明るい日中に撮れた現場の様子です。 


シーン2:8/23・午前4:51・気温24℃(@0:03〜)日の出時刻は午前4:58。 
日の出直前に2頭のアナグマが巣穴L付近に現れました。 
小柄な個体(幼獣? 成獣♀?)が巣口Lの左をうろついている間に、もう1頭(ヘルパー♂?)が巣口Lに頭を突っ込んで拡張工事を始めました。 
長い不在の間に巣穴が崩落していたようです。 
これまでの観察では、巣穴を掘る重労働はヘルパー♂の役割とされています。 
しかし穴を掘る後ろ姿の股間を見ても、外性器(睾丸や陰茎)がはっきりしません。 
未だ若い♂なのか、それとも非繁殖期は男性器が退化(萎縮)するのかな? 
前足を使って土を後方へ掻き出すところで録画終了。 


シーン3:8/23・午前4:53(@1:04〜) 
さっきまで穴掘り作業をしていたアナグマの同一個体でしょうか? 
左から来ると、巣口Lに詰まっていた枯れ葉・枯れ草などの古い巣材を前足で後方に掻き出しながら後ずさりしました。 
アナグマは雨で湿った巣材を天日干しするらしいのですが、私はまだ実際に観察できていません。 
今回外に掻き出した巣材はかなり古くて、幼獣たちの糞尿で汚れていたはずですから、良い堆肥(腐葉土)になるはずです。 
後半はそのまま巣口拡張の土木工事(穴掘り作業)に移行したので、植物質の古い巣材は土砂の下に埋もれてしまいました。 
もはや巣材(寝床)として再利用するつもりがないのでしょう。 
巣口の後方に土砂や古い巣材を掻き出す結果、アクセストレンチが形成されます。 
最後は入巣Lしたところで1分間の録画終了。


シーン4:8/23・午前4:57(@2:04〜) 
2頭のアナグマが巣口Lに並んでいました。 
明らかに体格差がありますけど、親子なのか性差♀♂(♀<♂)なのか、どちらでしょう?
あまり自信はないのですが、♀♂ペアということにして話を進めます。
体の大きなヘルパー♂は穴掘り作業が一段落すると、身震いして体の土を落としてから、一旦左へ向かいました。 
その間に体の小さな♀が巣穴Lの中に入ったきり、出てこなくなりました。 
ヘルパー♂の仕事っぷりを内検しているようです。
左から戻ってきたヘルパー♂が巣口Lで穴掘り拡張作業を再開しました。 
巣口Lから前足で土を後ろのアクセストレンチにせっせと掻き出しています。 


シーン5:8/23・午前4:58(@2:54〜) 
ヘルパー♂が独りで穴掘り(巣口Lの拡張工事)を続けています。 
遂に2頭とも巣穴Lに入ったきり、外に出てこなくなりました。 


シーン6:8/23・午前5:00(@3:11〜) 
どうやら1頭のアナグマaが出巣Lした瞬間を撮り損ねたようです。 
再び穴掘りを再開しました。 巣口Lのアクセストレンチに座り込むと体の痒い部位を後足でボリボリ掻きました。(@3:24〜) 
そのとき、巣穴Lの中から別個体bが顔を出して、2頭が互いに見つめ合いました。 
bが巣外に出てきて2頭が並ぶと、体格差(a<b)が明らかになりました。 
これまでのストーリーと辻褄を合わせるために、♀aとヘルパー♂bというように解釈することにします。 
♀も少しは穴掘り作業をやることが分かり、新しい発見でした。 
大型の個体(ヘルパー♂?)の方が激しい穴掘り作業の結果、体毛が土で黒く汚れています。 
ヘルパー♂は巣口Lで身震いして土汚れを落とします。 

最後にアナグマのペアは仲良く並んで林床を右へ立ち去りました。 
てっきりリフォームした巣穴Lにこのままペアで住み着くと予想していたのに、意外な結末でした。 
非繁殖期には、あまり特定の巣穴には執着しないのかもしれません。


【考察】
観察歴の浅い私は、アナグマの個体識別や性別判定に苦労しています。 
この営巣地で出産した♀には特徴があり、首筋に♂が噛んだ交尾痕があるのと、赤外線の暗視カメラで見たときに左右の目が不均一でした(右目<左目)。 
今回の小柄な個体が♀だとしても、交尾痕が無く、両目の大きさは同じでした。 
出産・育児から解放された♀の「慢性の疲れ目」が回復したのでしょうか? 
腹面に乳首も見えなかったのは、幼獣が離乳して乳房が退化したのかな? 
辻褄合わせのため苦し紛れで仮定に仮定を重ねるのは無理があります。
オッカムの剃刀の原則からしても、新顔の♀がパートナー(ヘルパー♂)を連れて巣穴Lを物色しにやって来たような気がしてなりません。 
まさか、今季産まれたばかりの幼獣♀が早くもつがいを形成して実家に戻ってきたのでしょうか? 
謎は深まるばかりです。


近所のタヌキは結局、アナグマの空き巣を乗っ取りませんでした。 
そもそもアナグマの家族がこの営巣地から転出した理由は何でしょう?
思いつく限り、仮説を立ててみました。
  1. 梅雨の時期で巣穴に雨水が浸水し、巣材が湿ってカビが生え、幼獣にとって居住環境が悪化したので引っ越した? 
  2. 巣穴が崩落したので引っ越した?
  3. 巣材(寝床)にダニやシラミが大発生し、幼獣に体外寄生、吸血するようになったので、新しい巣穴へ逃去した? 
  4. 私が2台も設置したトレイルカメラに四六時中監視される生活がストレスで、我慢できずに逃去した? 
寄生虫対策の仮説(3)が我ながら気に入っています。
転出してしばらく日数が経ってから古い巣材を外に捨てれば、巣内に蔓延する体外寄生虫の数を抑制することができそうです。
私がバイブルにしているアナグマの本(福田幸広『アナグマはクマではありません』)を読むと、巣穴の転出はよくあることのようです。
出産して幼獣が育つと、母親が幼獣を引き連れて新しい巣穴に引っ越すのだそうです。 
新しい巣穴がどこにあるのか、残念ながら突き止められていません。


キジ♂が田んぼの畦道に佇み、採食、羽繕い(野鳥)

 



2023年7月上旬・午前10:40頃・くもり 

田園地帯を私が歩いていると、キジ♂(Phasianus versicolor)が近くから慌てて畦道を走り去りました。 
少し離れてようやく落ち着いたので、動画を撮り始めました。 
しばらくは油断なく横目で私の方を警戒しています。 
 縄張り宣言の母衣打ちを披露してくれることを期待して長撮りしてみたのですが、全く鳴いてくれません。 
周囲の縄張りからもキジ♂の鳴き声は聞こえません。 
ライバル♂が周囲に居なければ、わざわざ縄張り宣言するモチベーションがなくなるのでしょうか? 
それとも、既にキジの繁殖期は終わって鳴かなくなったのかな? 
しかし過去の記録を遡ると、4年前には7月上旬にケンケーン♪と母衣打ちしていました。 

関連記事(4年前の撮影)▶ 早朝の階段で羽繕い、絶唱するキジ♂(野鳥) 


ようやく警戒を解くと、畦道をゆっくり歩きながら採食するようになりました。 
田んぼの畦道にはさまざまな水田雑草の穂が既に実っているので、キジはそれを食べて暮らしているのでしょう。 
立ち止まって周囲を見回すと、羽繕いを開始。 
緑一色の水田にキジ♂の真っ赤な顔がよく目立ちます。 

ちなみに、帰路に再訪した際には、同じ水田に隣接するヨシ原から母衣打ちするキジ♂の鳴き声♪が聞こえました。


※ 撮れた映像素材の順番を変えました。 
動きに乏しい警戒シーンは後半に回しました。

   

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