2023年6月中旬・午後18:55頃・(日の入り時刻は午後19:05)
日没直前の夕刻なのに鬱蒼とした二次林の中はもうすっかり暗くなり、トレイルカメラは赤外線の暗視モードで起動しました。
右側の巣口Rは実は更に左右2つの入口(RrとRl)に別れています。
ニホンアナグマ(Meles anakuma)のヘルパー♂が巣外に出て、右側の巣口Rrを前脚で掘り広げていました。
ところが、穴掘り作業中に巣穴Rlの中から母親♀が吠えながら飛び出してきて、ヘルパー♂を撃退してしまいました。
母親から(理不尽に)ガミガミ叱られたヘルパー♂(1歳仔の息子♂)はすごすごと林縁広場に戻って座り、巣口Rlの♀と互いに見つめ合っています。
♀も巣外に飛び出してヘルパー♂を遠くまで追い払うほど怒ってはいないようです。
重労働の穴掘り作業はヘルパー♂が分担するというのが定説なので、とても意外な展開でした。
ヘルパー♂を危険な侵入者(テンやキツネなどの天敵)と誤認したのでしょうか?
単に♀は寝起きで機嫌が悪かったのかな?
近くの田畑で昼間ずっと農作業しているトラクター?の騒音や振動が営巣地(セット)まで響いているのがストレスなのかもしれません。
♀が巣穴Rlに引っ込むと、ヘルパー♂は懲りずに巣口Rrの拡張工事を再開しました。
左右の前脚を交互に使って後ろに土を掻き出しながら後退するので、結果的にアクセストレンチ(傾斜のついた溝と排土の小山)が形成されます。
穴掘り作業を止めたヘルパー♂は、二次林の中へゆっくり入って行きました。
おそらく疲れて空腹になり、採食に出かけたようです。
※ 登場したアナグマ2頭の性別は、外見の特徴からではなく、行動から推定しました。
※ 動画編集時に自動色調補正を施しています。
この営巣地は♀が毎年子育てする場所です。
4頭の幼獣が順調に育つと子供部屋や巣口が狭くなるのでしょう。
子育てで忙しい♀がヘルパー♂に掘り広げてもらいたかったのは、そっちの穴(Rr)ではなかったのかもしれません。
ヘルパー♂の仕事ぶりに♀が不満を持ったとして、巣穴の拡張プランをヘルパー♂に細かく具体的に指示するなんてことはあるのでしょうか?
アナグマにそんな高度なコミュニケーション能力があるとは思えません。
(♀が自ら手本を示すしかない気がします。)
ヘルパーを務めるのは1歳仔(性成熟する前の若い♂)ですから、♀より腕力は多少あっても造巣経験が浅いままでヘルパーを卒業(巣立ち)してしまいます。
翌年は1歳下の弟が次のヘルパーを務めることになります。
代々の若いヘルパー♂たちが気分任せで行きあたりばったりに(または本能に従って)穴を掘るだけで、 うまいこと造巣できるのが不思議です。