2021/04/05

体内寄生されたナシケンモン(蛾)幼虫の異常な巣作り【200倍速映像】

 

ナシケンモン(蛾)の飼育#7

前回の記事:▶ 体内寄生されたナシケンモン(蛾)終齢幼虫が繭を作る場所を探索【10倍速映像】
2020年11月上旬 

ナシケンモンViminia rumicis)の被寄生終齢幼虫は食草だったベニバナボロギクの葉裏に落ち着くと、営繭用の巣を作り始めました。 
微速度撮影したので200倍速の早回し映像をご覧ください。 
白い絹糸を口から吐いて周囲の葉を綴り合わそうとしています。 
三田村敏正『繭ハンドブック』によると、ナシケンモンは
餌植物の葉を綴って繭を作る。(中略)繭層は非常に薄く、中の蛹が透けて見える。(中略)繭全体が葉でくるまれていることもある。 (p61より引用)
ところが巣作りが遅々として進まず、休んでいる時間の方が長いです。 
寄生されていない正常個体の営繭行動を私は未だ観察したことがないのですが、もしかすると、オトシブミのように葉裏から葉脈に噛み傷を付けて萎れさせ、巣材を加工しやすくしているのか?と初めは思ったりしました。 
ベニバナボロギクの葉がみるみる萎れていくのは、至近距離から照明を当てているためのようです。 
対策として、途中で花瓶の水を追加しました。 

ナシケンモンの幼虫は自身の体の周りの葉裏に辛うじて少量の絹糸を張り巡らしただけで動かなくなりました。 
あまりにも異例尽くめなので、この時点になると体内寄生されてることを確信しました。 
絹糸腺は寄主の生存に不可欠な器官ではありませんから、おそらく寄生蜂の幼虫にほとんど食われてしまい、巣作りや営繭に必要な絹糸を吐けなくなったのでしょう。 
この個体の徘徊運動がギクシャクとぎこちないのは前からですが、葉裏に静止している間もピクピクと不規則に蠕動しています。 
筋肉組織や運動神経系も寄生蜂の幼虫にどんどん食い荒らされているのでしょう。 

体内寄生虫が寄主の行動を操作して自らの生存に都合の良い構造物(巣)を作らせる「延長された表現型」の事例はいくつか知られています。 
しかし、今回の観察例もそうなのかどうかは疑問です。 
せいぜい、寄主が力尽きる前に全身を植物にしっかり固定させているぐらいだと思います。
比較のために、寄生されていない正常個体の営繭行動を観察するのが次の宿題です。

    

↑【おまけの映像】 
 同じ素材で早回し速度を半分の100倍速に落とした動画をブログ限定で公開します。 

2021/04/04

潜水漁で川魚を捕食するカワウ(野鳥)

 

2020年11月中旬・午後15:20頃・晴れ 

夕方の川で1羽のカワウPhalacrocorax carbo hanedae)がマガモ♀♂の群れの間を縫って水面を左へ横断しています。 
途中から向きを変え、下流へ向かって川面を遊泳し始めました。 
やがて水中に潜って川魚を捕り始めました。 (単独潜水漁)

獲物の正体を突き止めるには、カワウが浮上した直後にすかさずズームインする必要があります。 
ところが、カワウが潜水すると次にどこから浮上するか予測できないため、一旦ズームアウトしないといけません。 
したがって、いつもカメラが寄る前にカワウが獲物を呑み込んでしまい、間に合いません…。

▼関連記事(同じ日に同じ川で撮影)

 

池で溺れるアキアカネ♂を捕食する鯉(コイ)

 

2020年12月上旬・午後12:15頃・くもり 

晩秋に生き残った赤トンボ♀が農村部の溜池(釣り堀?)で最後の力を振り絞って打水産卵していました。(映像なし) 
それより気になったのは力尽きた2匹の赤トンボで、池の水面で溺れています。 
沈まずに水面で浮いているので、すぐに溺れる心配は無さそうです。 
しかし水難トンボがいくら激しく羽ばたいても、水面に波紋が広がるだけで、表面張力を振り切って飛び立つことが出来ません。 
翅が濡れるとトンボは重くて飛び立てないのかもしれません。 
もしかして、岸を目指して必死で泳いでいるのかな? 
疲れると水面でしばらく休息。 

映像を見る限り、溺れているトンボの種類はおそらくアキアカネ♂(Sympetrum frequens)だと思います。
翅先に黒斑が無いので、ノシメトンボではありません。 

一方、この池には黒いコイ(鯉;Cyprinus carpio)が何匹も泳いでいました。 
小魚の群れも水中に見えます。 
水面で暴れるトンボが立てる波紋に気づいたようで、鯉が集まってきました。 
同一個体のコイが2匹の水難アキアカネ♂を続けざまに捕食しました。 
パクリと丸呑みです。 
トンボが水面で暴れずにじっとしていれば魚に察知されずに済んだかな? 

捕食シーンが撮れたので満足した私がズームアウトしかけると、事件が起こりました。 
撮影中は気づかなかったのですが、新たに別のトンボ♂が池に飛来し、水面で溺れている個体に体をぶつけてそのまま自分も溺れてしまったのです。 
1/5倍速のスローモーションでリプレイ。 
水難♂を♀と誤認し、交尾を試みて水面に囚われてしまったようです。 
「ミイラ取りがミイラになる」とはまさにこのことで、トンボの繁殖池が「死のトラップ」と化しています。 
池の鯉にしてみれば、餌となるトンボが勝手に連鎖反応で水面に落ちてくれるので食べ放題のお祭りでしょう。
私の推察が正しければ、実験で再現できるはずです。
つまり、囮となるトンボの標本(死骸)を水面に浮かべておけば、交尾しようと次々にトンボ♂が水に飛び込んでくる「死のダイブ」が再現できるはずです。
晩秋の静かな溜池で人知れずドラマチックなことが起きていて、私も結構感動しました。 

※ 動画編集時にコントラストではなく彩度を少し上げました。 
水面から照り返しが眩しくて、撮影中はあまりよく見えませんでした。 
こういうときこそ横着せずに偏光フィルターをレンズに装着すべきでしたね。


【追記】
新井裕『トンボ入門』p81によると、
トンボが水を飲もうとしておぼれ死ぬケースもよくある

トンボの飲水行動を私は未見なので、次からは注意して観察することにします。 


 

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