2016/06/09

野外で交尾するヒダリマキマイマイ【早回し映像】



2016年5月上旬・くもり・午前11:27〜午後13:03

道端を這い回るヒダリマキマイマイEuhadra quaesita)を見つけました。

現場は平地で、標高266m地点でした。
珍しいカタツムリなのに、一度に3匹も同時に見かけたのはこれが初めてでした。
発見時は3匹が進む向きはバラバラでした(←←→)。
「発情している」という表現が正しいか分かりませんが、生殖器が少し外に出かかっている個体が気になりました。
殻が左巻きなので、本種の生殖器は通常のカタツムリとは逆で体の左側にあります。

そのうちの2匹が出会ってから交尾して別れるまでの一部始終を動画に記録する機会に恵まれました。
明け方と午前中に雨が降ったので、交尾日和だったのかもしれません。
路上を這った跡に透明の粘液が乾いてテカテカ光っています。
この軌跡を化学的な道しるべにして、互いに出会うのでしょう。
今にもぶつかりそうなので、横に15cm定規を置いて撮影開始。


3匹のヒダリマキマイマイ
交尾直前:路上に徘徊痕跡(乾いた粘液)

長撮りした映像そのままではあまりにも長編なので、6倍速に加工した早回し映像でご覧ください。
この日は三脚を持っていなかったため、手ブレはご容赦願います。

三脚を使っていれば、早回し速度をもっと上げれたのに。
カメラを路上に置いてローアングルから微速度撮影した後半(@10:55〜)は10倍速の早回し映像になります。
(長くてもオリジナル映像を見たい方は、後述のおまけ動画をご覧ください。)


2匹がすれ違いざまに激しい交尾を始めたので驚きました。
ナメクジの交尾ともまた異なり、なかなかエロチックな光景です。

▼関連記事
ヤマナメクジの交尾【50倍速映像】
ヤマナメクジの交尾

カタツムリが交尾の際に相手へ打ち込む「love dart;恋矢れんし」を初めて実際に観察して感動しました。
確かにローマ神話のキューピット(=ギリシャ神話のエロス)が放つ恋の矢を連想させますね。

恋矢はカルシウムを含み,交尾前に恋矢嚢が裏返しとなることによって射出され,相手の個体の皮膚に機械的刺激を与え,交尾が終ると捨てられる.刀身状のものが多いが,紡錘形・剣菱形・三角形・山形・円形など種類によってさまざまで,分類上の重要な標徴となる.(『岩波生物学辞典第4版』より)

蝸牛の生殖器官の解剖学や機能に全く疎くてよく分からない(自信がない)のですけど、恋矢を伸ばしたのは右側の個体Rからだけ?
また、伸ばした恋矢で相手を突き刺してはいないように思いました。(見逃しただけかも?)
やがて左側の個体LがペニスをRから抜き、ゆっくりと引っ込めました。
LがRの殻入り口(左側)に繰り返し頭を突っ込んだり殻の入り口の縁を舐めたりしている謎の行動が繰り返し見られ、どういう意味があるのか興味深く思いました。
互いに離れ始めたのに、強引に引っ張ってもRのペニスが抜けないようです。
特定の角度で抜こうとしないと抜けない構造なのでしょうか?
体の左側、ペニスの前で開閉している穴は呼吸孔かな?

いつのまにか2匹は正面から顔を突き合わせていました。
2匹は巴のような陣形で互いに左回りにぐるぐる動きました。
相手のペニスを抜くための回転運動なのでしょうか?
舗装路で長居すると体が乾燥するので、スギナ群落の生い茂った路肩の地面を目指して移動したようです。

交尾器を連結したまま相手を引き摺りながら移動し、路肩の枯れ葉の上に乗りました。
交尾のついでに落ち葉の表面を舐めて摂食しているようですけど、肝心の口元がはっきり見えませんでした。

カタツムリの交尾を初めて観察しましたが、なかなか終了しません。
これぐらい長時間続くのが普通ですかね?
やや風が強く、肌寒くなりました。(気温を測り忘れた)
カタツムリの種類によってはダート・シューティングしてから10時間以上挿入してるらしい。(※追記の参考サイト)
白昼堂々、目立つ場所で延々と交尾していたら天敵の捕食者に対して無防備ではないのか?と心配になります。
交尾中にアリが横を通りかかっても、カタツムリを狩るどころか体には決して触れませんでした。
アリがヒダリマキマイマイの殻に登っても、すぐに降りました。
カタツムリの分泌する粘液がアリの忌避物質を含んでいる印象を受けました。

途中から一方(早目に交尾が終了した個体?)が殻に引きこもって動かなくなりました。
繋がった交尾器を捻じるように片方だけが何度もぐるぐる回り、ようやく縁が切れました。
強引に引き千切ったのかな?

3匹目の個体も参戦して三つ巴の交尾になるかと密かに期待したのですが、そのような展開にはなりませんでした。
もしかすると既に交尾を済ませていたのかもしれません。
恋矢で刺されたカタツムリは性欲が減退するそうです。

交尾を終えたRはその場に居残りました。
一方、Lはスギナの群落を越えて向こう側に移動しました。
カタツムリが這った跡は透明な粘液で濡れていますが、やがて乾いてカピカピになります。




【おまけの動画】ノーカット完全版

特に交尾の初めのシーン(ダート・シューティングなど)は早送りしないこちらの方が見応えがあると思います。
カメラを路上に置いてローアングルから微速度撮影した後半(@1:08:30〜)は10倍速の早回し映像になります。


【参考サイト】
専門家(木村一貴氏)によるカタツムリの交尾とダートシューティングについて詳しく解説したサイト



相手の殻入り口の縁にキス
相手の殻入り口の縁にキス
相手の殻入り口の縁にキス
交尾中:路上に徘徊痕跡(乾いた粘液)


【追記】
飼育下で脱落したヒダリマキマイマイ恋矢の写真。
飼育容器の壁面にいつの間にか3個へばりついていました。
私が気づかずに掃除の際に幾つか捨ててしまったかもしれません。
大きさ(長さ)がまちまちですが、白いカルシウム質で魚の小骨のように硬いです。
先端は鋭く尖っています。
色が違うのは飼育下での汚れだと思います。

英語版wikipediaに掲載された本種の恋矢の模式図とそっくりです。





【追記2】
『科学のアルバム:カタツムリ』p14〜15にヒダリマキマイマイの交尾行動が連続写真で紹介されていました。
2匹のカタツムリは、石灰質でできた白い槍のような管をのばし、相手の首の右側めがけてさしこみました。このとき精子の入った袋を交換します。交尾が終わって2匹が別れるまで約1時間。ときには、袋の交換に失敗して、落としてしまうことがあります。

スズメ(野鳥)の群れが雨樋の営巣地を巡り争奪戦♪



2016年5月上旬

2階建て民家のトタン屋根の軒下でスズメPasser montanus)の群れが鳴き騒いでいました。
いずれも頬が黒いので成鳥でした(巣立った幼鳥ではない)。
北東の角にある水平の雨樋の左端に枯れ草を詰め込み、営巣しているようです。
雨樋から緑の草も見えるのは、ここから生えてきたのか、それとも巣材として持ち込んだのかな?
どうやら、その営巣地を取り合って喧嘩している模様。
雨が降ったら忽ち水浸しになるような位置に巣を作って大丈夫なのか?と素人目には心配です。
これが争うほどの優良物件ということは、よほど住宅難なのでしょうか?
雨樋の巣に居る2羽がつがいなのかもしれません。
それにしては映像冒頭で、番の一羽が左横の個体(伴侶?)を嘴で軽くつつきました。
一羽は抱卵中なのかと思いきや、落ち着きなくあちこちへ少し移動します。
未だ巣に居座ってるだけのようです。
その巣を屋根の上から別個体が覗きこんでいます。
巣内から一羽がパッと飛び立って迎撃し、屋根の上から追い払いました。
番の2羽が組んで見張っていれば、一羽が積極的に戦って巣を防衛することが可能ですね。
ライバルの挑発や陽動作戦があっても大丈夫です。
屋根の上で激しく鳴きながら盛んに飛び回り、争っています。
巣への侵入者を追い払いました。
近所のスズメの群れを個体標識して調べれば面白そうです。

スズメが争う鳴き声を声紋解析してみる?



2016/06/08

繭を紡ぐホシカレハ(蛾)終齢幼虫【10倍速映像】



2016年5月上旬〜中旬

ホシカレハの飼育記録#2



▼前回の記事
柳の枝で繭を紡ぐホシカレハ♀(蛾)終齢幼虫

採取したオノエヤナギの枝を持ち帰り、飼育下でホシカレハGastropacha populifolia angustipennis)♀の終齢幼虫の営繭を微速度撮影で記録してみました。
10倍速の早回し映像でご覧ください。
ホシカレハ幼虫は周囲の葉を引き寄せると絹糸で綴り合わせいます。
ときどき休憩したり方向転換しながら繭を紡いでいきます。
撮影中の室温は約22℃。

余談ですが、採取した柳には別種の蛾の幼虫(青虫)が紛れ込んでいて、柳の葉を食べたり徘徊したりしています。
また、葉が萎れ始めると多数のアブラムシが逃げ惑い始めるのもちょっと面白かったです。

焦って採集したので柳の枝の水切りに失敗し、葉がみるみるうちに萎れてしまいました。
見栄えは悪いですけど、繭作りやその後の変態には影響ないはずです。
繭が完成する前に初日だけで微速度撮影を止めてしまいました。
柳の葉に隠れた中で営繭するので何をやっているのかよく見えず、あまり面白くないのです。

繭を紡ぎ始めてから2日後、どうやら繭が完成したようです。
繭の表面からピンセットとハサミを使って柳の葉を少しずつ取り除いてみたら、繭が毛羽立ってしまいました。
その作業中に、蛹が繭内で暴れる気配はありませんでした。
ヤドリバエや寄生蜂に寄生されているのではないかという不安を抱えつつ、このまま見守ります。
ホシカレハの繭に埋め込まれた黒毒毛に触れると皮膚が痒くなったりかぶれるので要注意。

繭の黒点は幼虫時代の毒針毛で、触ると痛みや発疹を生じるといわれている。(『繭ハンドブック』p37より)


幼虫と繭は先端の鋭い棘を持ち、接触時痛みを感じ、軽い発赤や丘疹を生ずる。短時間で治癒。(みんなで作る日本産蛾類図鑑サイトより)


つづく→#3:羽化の微速度撮影



完成後の繭@方眼紙
羽化に備えて繭の上端に脱出口が用意されている?

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