2012/10/31

ヤマジガバチの労働寄生#6:巣口の偽装と営巣完了



2012年7月下旬

土壁で房室を固く閉鎖していたジガバチ♀H白の行動が変わりました。
巣を離れると、枯れた松葉を咥えて巣の方へ運ぼうとしたり、偽装材を探し歩いているようです。
巣の奥の茂みの方にも出かけるようになりました。@0:49
(ここからは初めて観察する行動になります。)
近場の林床から何かゴミを咥えてきては巣口に搬入します。
雑多な偽装材を巣口に放り込むだけになり、もはや顔で押し固めることはなくなりました。
この行動をせっせと繰り返します。
歩いて外出する時も飛んで行く時もあります。
埋め戻す巣材に小石や土塊を使うことはなくなり、枯葉や枯枝の欠片など植物質のものを選びます。
カメラを引きの絵にすると、♀H白がなるべく近場からゴミを集めてくる様子がよく分かります。
体長の何倍もある枯れ草の茎を咥えて運ぼうとするも、地面にあちこちひっかかり苦労しています。@9:48
羽ばたいて飛び上がろうとするも持ち上がりません。
最後は諦めて放置しました。

やがて空荷で戻ることが増えました。
巣を少し点検してはすぐ出かけて行きます。
巣坑の痕跡を完全に消し去りました。
これで一つ営巣完了です。
最後の偽装工作に満足したようで、ジガバチ♀H白は何の未練も感傷もなく飛び去ると、もう戻って来ませんでした。
ジガバチ♀H白は次の営巣サイクルに入ります。

巣口の偽装工作はジガバチがどの天敵を恐れて進化した習性なのでしょうか?
老婆心ながら、戸締りのセキュリティが中途半端に思えます。

巣口まで土でぎっちり埋め固めるべきだと思うのですが、そうすると房室で蜂の子が窒息したり羽化した蜂が地上に脱出できずに生き埋めになってしまうのかもしれません。
傍目には完璧な偽装工作に見えたのですが…。

つづく

いよいよ労働寄生ジガバチ♀P水が暗躍する出番です。





2012/10/30

ヤマジガバチの労働寄生#5:謎の襲撃



2012年7月下旬

その後もジガバチ♀H白は飽きもせずに巣坑の本閉鎖に精を出しています。
巣の乗っ取りを企むジガバチ♀P水に目をつけられたことを知っているため巣口を埋め固めをいつもより一層念入りに行っているのだろうか?
アリが近づくと撃退します。

♀H白の作業中に再び黒いハチが飛来するも、今回は一瞬で飛び去りました。@0:29
少し警戒しただけですぐに作業を再開。




1/5倍速のスローモーション↑で襲撃(ニアミス)シーンを確認してみましょう。
辛うじてジガバチだと分かるだけで、性別やマーキングの有無はよく見えません。
先程マーキングした♀P水が戻って来たのかもしれませんし、♂が交尾しようと飛来した可能性もあります。

閉鎖作業でジージー♪鳴く声が別のジガバチを誘引しているんじゃないかという気がしてきました。
もし録音したジガバチの鳴き声をスピーカーで再生すると他のジガバチ♀が様子を見に飛来するだろうか?
労働寄生♀対策として、鳴き声を発することなく黙って巣坑の閉鎖を行う♀突然変異個体がそのうち出現し、ステルス戦略が集団中に広まるかもしれない(進化)…などと妄想しながら蜂を眺めていました。

後半、外出から帰った♀H白が巣坑に何か赤い物を押し込んで埋め固めています。@4:34
肝心の搬入シーンはピントがぼけて撮り損ねました。
次の獲物(芋虫)かと一瞬焦りましたが、赤い木の実やキノコの破片だろうか?

(ジガバチ腹部の赤色にも見えて、まさか♀P水を噛み殺して埋めているのかと猟奇的な想像が先走ったりもしました。)
埋め固めの次の作業として、巣口周辺の偽装工作が始まったのかもしれません。

つづく





ヤマジガバチの労働寄生#4:ミネラル摂取



2012年7月下旬

巣から離れたジガバチ♀H白が地面を徘徊しつつ落ち葉を舐めていました。
巣口の押し固めで酷使した顔は土で汚れています。
黒い舌を伸ばして舐めた跡が濡れていることから、唾液または飲んだ水を吐き戻しながら溶かした塩分を吸っているようです。

蝶の仲間ではよく見られる摂食行動ですが、蜂で観察したのは初めてかもしれません。
鱗翅目だと地面や獣糞を舐めてミネラル摂取するのは大体♂と相場が決まっています。
確か、精巣の発達に必要なんだとか。

やがて私の黒いカメラバッグのベルト部分に止まると一心不乱に舐め始めました。
長年ベルトに染み込んだ汗や皮脂を摂取しているのでしょう。
摂食中はジージー♪鳴いたりしません。
おとなしくしているこの機会を利用して、♀H白をじっくり接写してみました。

(胸背と顔のアングルは動画のみで、写真は撮る前に逃げられました。)
横に定規を並べて置いて採寸してみます。
ヤマジガバチまたはサトジガバチの一体どちらなのか、写真鑑定できるでしょうか?
少なくともジガバチ♀H白および♀P水は同種なのか別種なのか知りたいところです。


後日、同じフィールドで捕獲した♀♂はヤマジガバチと写真鑑定して頂きました。

通りすがりのクロアリとニアミスしてもジガバチは向きを変えただけで、夢中で舐め続けます。
その際、アリを威嚇するように翅を振るわせました。
私の体に止まって汗を直接舐めに来ることはさすがにありませんでした。

もちろん昆虫は暑い夏でも我々ヒトのように発汗しませんが、ジガバチ♀も激しい重労働の合間に塩分を欲するというのは興味深く思いました。

もしスポーツドリンクを蜂にお裾分けしていたら喜んで飲んでくれたかな?
てっきりどこかで訪花吸蜜して栄養補給しているのかと思っていました。

ちなみに、別の日には近くで建物のコンクリート土台部分を舐めているジガバチを見ています。

つづく






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