2012/06/28

カエデの葉を食すドロハマキチョッキリ♂?



2012年5月下旬

渓流の岸に生えたカエデの若葉にミドリキンバエが飛来したと思ったら、小さなチョッキリの仲間でした。
緑色の金属光沢が美しい小さな甲虫です。
樹種はヤマモミジかな?


もしチョッキリの♀だとすると、これから葉を巻いて揺籃を作り始めるかと期待して見守りました。
しかし風で葉が揺れて、小さな虫の接写は困難を極めました。
モミジ葉表の主脈上に静止しています。
口吻を突き刺して葉脈を断ち切ろうとしているのかと思いきや、歩いて葉柄に移動。
どうやら摂食行動だったようです。
チョッキリが口を付けていた部分の葉がしばらくすると透けて見えるようになりました(虫食い穴)。


やがて再び葉柄をうろうろ歩き始めました。
葉の縁にてしばし静止。
葉裏から見上げるアングルなので、チョッキリのシルエットがちょっぴりフォトジェニック♪
葉先に移動すると食痕もよく見えるようになりました。
最後に飛び立つ瞬間は残念ながら撮り損ねました。

採集してないので、初めての私には同定は難しいです。
『オトシブミ・ハンドブック』を参照すると、カエデで揺籃を作るチョッキリで見た目が似ているのはドロハマキチョッキリ♂でした。
動画で前胸下部に鋭い刺状の突起が一瞬見えたことから♂と判明(@1:40付近)。
更にドロハマキチョッキリ♂の口吻は長く、触角付着点あたりで湾曲するらしい。
カエデをホストとしないサメハダハマキチョッキリは除外したものの、この推理が妥当かどうか自信ありません。
(サメハダハマキの♂成虫がカエデの葉を食べても不思議でないのかな?)
でもやはり、カエデの葉に卵を産みに来る♀と交尾しようと待ち構えているついでに食事をしたと考えるのが自然ではないかと思います。




※ 複数個体を区別せず撮ってしまった可能性もあります。



2012/06/27

アオダイショウの木登り



2012年5月下旬

岸から伸びた潅木に掴まりながら渓流を遡上していたら、手を伸ばした枝に蛇が居て目が合いました。
予想外のニアミスにどっきりしましたが、水音のせいで蛇も私の接近に気づかなかったのかもしれません。
目測で体長約2mの立派なアオダイショウElaphe climacophoraでした。

アオダイショウは落ち着くと舌の出し入れを始めました。
なんとなく、これから脱皮するのかと思いました。
しかし横顔をクローズアップしても、目は特に白く濁っていません(脱皮の兆候なし)。

やがて蛇は向きを変え、枝を伝ってこちらに向かって来ました。
枝伝いにゆっくり上へ移動していきます。
ヘビの木登りを目の当たりにするのは初めてでした。
下半身で体を支えたまま、持ち上げた上半身で行き先の経路を探索しています。
蛇腹だけを使った登り方は実にしなやかで美しく、惚れ惚れします。
樹上でも必ず枝の上面を伝って蛇行で移動するようです。
(枝の下面にぶら下がることはない。)
下から見上げると、アオダイショウの下面は白色でした。

野鳥の卵や雛を狙って、樹上に鳥の巣を探し回っているのかもしれません。
しばらく登ると疲れたのか、枝に顎を乗せて静止。

wikipediaの記述によると、
(アオダイショウが)樹上に上るときには枝や幹に巻きついて登っていくのではなく、腹盤の両端には強い側稜(キール)があり、これを幹や枝に引っかけることでそのまま垂直に登ることができ、樹上を移動する。壁をよじ登ることもできる。

次は、蛇が川面を泳ぐ様子を動画に撮りたいなー。

【追記】
内山りゅう『ヘビのひみつ (ふしぎいっぱい写真絵本)』によると、
アオダイショウみたいに、木登りをするヘビもいる。木登りができるのは、お腹にある鱗が角張っていて、引っかかるから。背中の表面には、つるつるした鱗がある。(p9-11より引用)











2012/06/26

オドリバエ科Empis sp.の交尾(求愛餌の完食、別れまで)



2012年5月下旬

渓流の岸辺に生い茂った潅木の辺りを、交尾中のハエが連結したまま落ち着ける場所を探してゆっくり飛び回っていました。
よく見ると獲物を抱えていたので、オドリバエの交尾か!とピンと来て撮影開始。
翔んだカップルは近くの枝に止まってくれました。
♂は枝先に前脚で器用にぶら下がり、中脚および後脚で♀を背後から抱え込んでいます。
交尾器の結合も確認しました。
♀が吸汁している獲物は渓流で羽化したカゲロウの仲間の成虫のようで、長い尾毛が3本見えます。

交尾器の結合部が撮れました。


♂が♀を中脚および後脚で抱える。

♀の脚だけに黒い剛毛が生えている。

獲物は渓流で羽化したカゲロウの仲間で、長い尾毛が3本。

背側はピンボケ。♂が前脚2本で♀と獲物の全体重を支える。

苦しい撮影体勢ながら、♂の背面も辛うじて撮れました。
風揺れを抑えるために左手で小枝を持ちながら接写していたのですが、急にポキッと折れてしまいました。しまった!と焦ったものの、連結したまま飛んで逃げたペアは幸い近くの小枝に再着陸してくれました。
接写を続行!

♂よりも♀の方がやや体格が良いようです。
♀の腹部が膨満しています。
捕食で満腹状態なのかもしれませんが、いかにも卵巣が発達していそうな様子。

♀の脚の剛毛がすごい。


吸汁が進むと♀は獲物をクシャクシャに丸めた。

前回の観察では採集を優先しましたが、今回は交尾を最後まで見届けることができました。
(その代わり、未採集、未採寸。)
吸汁し終わると♀は獲物を捨てました。
同時に交尾器の連結が外れ、ペアは別々に飛び去りました。
オドリバエ♀の婚活は現金というかシビアです。
求愛餌の大きさと交尾時間の長さとは比例するらしい。
「餌の切れ目が縁の切れ目」
ヒトの結婚で見られる結納とか引き出物の風習と似ていますね。


♀の脚に生えた黒い剛毛について
前回交尾を観察したオドリバエとは明らかに別種のようで、♀の中脚および後脚には長くて黒い毛が生え揃っています。
初めは獲物の毛なのかと思いましたが、よく見ると♀の脛毛(および腿の毛)でした。
性的二型の形質である点が非常に不思議です。
♀が無駄毛処理を怠った訳ではないでしょうが、♂の脛毛はこれほど発達していません。
肉食性キリギリスやトンボのように、狩りに使うのだろうか? 
しかし♀は♂からの婚姻贈呈を期待して自らあまり狩りをしないのなら不要な気もします。
むしろ♂の方に必要となるはずです。
オドリバエは捕食性だが、求愛給餌の習性があるオドリバエの♀は自ら獲物を捕らない。(『ハエ学:多様な生活と謎を探る』第2章「結婚の贈り物をするハエ」p27より)
あるいは蛾の一部に見られるヘア・ペンシルのように性フェロモンを放出する器官なのだろうか?
ネット検索すると「一寸のハエにも五分の大和魂」掲示板の過去ログに興味深い議論が残っていました。
オドリバエ♀が長く群飛して数の少ない♂を待つ間はエネルギー消費が大きい。これを防ぐために♀は脚に羽状剛毛を発達させて空中に留まりやすくしているのではないか、という仮説です。
一方、『ハエ学:多様な生活と謎を探る』第2章「結婚の贈り物をするハエ」によると、求愛給餌するオドリバエの中には♂が♀を選り好みする種類がいるそうです。
♀の極端に毛深い脚は群飛の中で腹部を大きく見せて、求愛餌を持つ♂にアピールする役目があるらしい。


交尾後の♀:脚の剛毛

交尾後の♀

別れたペアのうち一匹が近くの枝に再び止まってくれました。
脚に黒々とした剛毛があるので、♀のようです。
♂の姿は見失いました。


【追記1】
いつもお世話になっている「一寸のハエにも五分の大和魂」掲示板にて写真鑑定してもらったところ、三枝豊平さんより以下の回答を頂きました。
あなたの撮影したオドリバエは,Empis (Polyblepharis)の1種で,未記載種です.同じ亜属のE. (P.)comsogyneに近似した種です.この掲示板のワード検索でPolyblepharisで検索すれば,私が示した本亜属の検索表があるので,検索を試みてみたらいかがですか.



日本産Empis (Polyblepharis)亜属の種の検索表(カムチャツカ産P. sjoestedtiを含む)


1.脚は部分的ないし全体的に黄褐色;雄は合眼的;雌の脚には羽状剛毛がある;acrostichalsがある.中型ないし大型種・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2
  脚は全面的に黒色;雄は離眼的;雌の脚に羽状剛毛を欠く;acrostichalsを欠く.大型種・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・11
2.雄の第7腹節後縁は正常で,第6腹節腹板と大差なく,通常の刺毛を生じる;雌の中脛節には羽状剛毛を生じる・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・4
  雄の第7腹節腹板の後縁は第6腹節腹板のそれと異なり,第8腹節腹板前縁との間に顕著な段差があり,後縁亜側部に上(第8腹板前縁方向)を向く強い剛毛群を生じる;雌の中脛節は羽状剛毛を欠く・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・P. multinodosa Frey・・・・・・3
3.Dorsocentralsは前端部を除いて1列;雄の後腿節の前腹刺毛は疎ら・・・・・・・・・・・・・
   ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・P. multinodosa (北海道集団)
  Dorsocentrals不規則に2列;雄の後腿節の前腹刺毛は密・・P. multinodosa(カムチャツカ集団)
4.小楯板剛毛は4本以上;雄の後腿節はその全長にわたって前腹剛毛を生じる(moiwasanaの対馬集団では基半部に剛毛を欠く);雌の後脚第1付小節は羽状剛毛を欠く・・・・・・・・・・・5
  小楯板剛毛は2本;雄の後腿節の基部1/3から1/2には前腹剛毛を欠く;雌の後脚第1付小節には羽状剛毛を生じる…・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 未記載種A(本,四,九)
5.雄・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・6
  雌・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・9
6.付節は黄褐色;presutural dorsocentralsは前半部で不規則な2列;アエデアグスの先端部にある第一湾曲内縁の先半部に1個の小形突起を生じる・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・7
  付節は暗褐色ないし黒褐色;presutural dorsocentralsはその前端部を除いて1列;アエデアグスの先端部にある第一湾曲内縁は突起を欠き,一様・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・8
7.前腿節背面は暗色;中胸背のpollinosityの地色は黄褐色・・・P. compsogyne Frey(本,四,九)
  前腿節は一様に黄褐色;中胸背のpollinosityの地色は灰褐色・・P. sjoestedti Frey(カムチャツカ)
8.雄の後腿節は全長に亘って前腹剛毛を生じる・・・・・・P. moiwasana Matsumura(北海道集団)
  雄の後腿節の前腹剛毛は先半部にほぼ限定される・・・・・・・・・・P. moiwasana (対馬集団)
9.後脛節は部分的に黄褐色;presutural dorsocentralsは不規則な2列・・・・・・・・・・・10
  後脛節はほとんど全面的に黒色;presutural dorsocentralsはほとんど1列・・・P. moiwasana (北) 
10.中胸背のpollinosityの地色は黄褐色・・・・・・・・・・・P. compsogyne Frey(本,四,九)
   中胸背のpollinosityの地色は灰褐色・・・・・・・・・・・・P. sjoestedti Frey(カムチャツカ)
11.雄の第3-6腹節背板は全面的に黄褐色のpollinosityで覆われる;雌の中・後腿節は細く,円筒型,小棘を生じる顕著な隆起を欠く・・・・・・・・・・・・・・ 未記載種B (日本アルプス)
   雄の第3-6腹節背板中央部は光沢のある黒色;雌の中・後転節は著しく肥大して紡錘型,腹面特に基部近くに小棘を生じる顕著な小隆起を生じる・・P. cylindracea Frey(北関東,南東北)


【追記2】
『ハエ学:多様な生活と謎を探る』第2章「結婚の贈り物をするハエ」p17より
(オドリバエ属のほとんどの種の)♂は前脚で枝等を掴み、中、後脚で♀を支える。さらに♂の後脚はその膝関節で♀の腹部をはさみつつ、♀の胸部下まで伸ばされそこにある求愛餌をつかんでいる。(中略)♀は♂に抱きかかえられてもらう一方で、求愛餌をしっかりと脚で掴み、口吻を刺してそれを摂食する。


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