2010/12/12

スミスハキリバチ♀の塩分補給



2010年9月上旬

オオハキリバチの営巣行動を監視中に、広げた日傘の陰に蜂が飛来しました。
柄に止まり金属表面を頻りに舐め回しています。
おそらく傘の柄に付着した人汗や皮脂に含まれるミネラル分を摂取しているのでしょう。
私の体から直接汗を吸汁しに来るかと期待したのですが、そこまで大胆な蜂ではありませんでした。
現場ではてっきりオオハキリバチかと思い込んだのですが、蜂屋のヒゲおやじさんから別種の葉を切るハキリバチ♀だろうと教えて頂きました(オオハキリバチなどヤニハナバチ属の頭部は独特な丸い形をしているらしい)。
腹端が尖っているので♀。
やや擦り切れた翅先が激しい労働を物語っています。
腹面に赤茶色の毛(スコパ?)を認めましたが、花粉は付いていませんでした(映像なし)。

 直径8mmの傘の柄と比較すると、この個体は推定体長約16mmと小型でした。
焦茶色の日傘の影になっているせいで蜂の体色が変わって見えているかもしれません。

【追記】
遂にハチの名前が分かりました!
「蜂が好き」サイトにて以下のようにご教示頂きました。

「このハキリバチは、スミスハキリバチMegachile humilis )のメスだと思われます。各腹背端の無点刻域が特徴です。」
次回この蜂を見つけたときのために生態を予習しておきます。
片山栄助. "スミスハキリバチの営巣習性." 日本応用動物昆虫学会誌 41.3 (1997): 153-160. (PDF文献が無料ダウンロード可)



 炎天下で長時間の定点観察を集中力を保って続けるためには、日射病対策の日傘が欠かせません。
三脚に固定したデジカメを直射日光にずっと晒したまま負荷の高い動画撮影を続けると、本体が過熱する恐れがあります。
また、デジカメの液晶画面も日陰の方が見易くなります。
私もスポーツドリンクを飲んで塩分補給に努めました。


オオハキリバチ産卵編へつづく)


▼関連記事(10年後の撮影)


オオハキリバチの貯食行動2




2010年9月上旬

(つづき)

オオハキリバチ♀(Megachile sculpturalis)の貯食作業が続いています。
花蜜を吐き戻すのは簡単ですが、スコパに付いた花粉を掻き落とすためには入口で向きを変え後ろ向きに入り直さなければなりません。
方向転換に毎回かなり手間取ります。
逆さまの姿勢で材木の平らな部分にぶら下がらないといけないので、尻で巣口を探し当てられなかったり脚を滑らせて落ちたりします。
それでも七転び八起きでアプローチから何度もやり直します。

(次回、塩分補給編に続く。)

オオハキリバチの貯食行動1




2010年9月上旬

翌朝いそいそと様子を見に行くと、オオハキリバチ♀(Megachile sculpturalis)は既に働いており前日作った育房にせっせと貯食していました。
観察開始時の気温は25℃。
きな粉のような黄色い花粉を腹面のスコパにびっしり付けて帰巣すると、まず頭から巣穴に入ります。
中の様子は見えませんが、おそらく胃から花蜜を吐き戻しているのでしょう。
後退して出てくると巣口で方向転換します。
尻から穴に入り直します。
集めてきた花粉を掻き落とし、花蜜と混ぜて団子状に練っているのでしょう。
次に外出するとき、スコパはきれいになっています。
この貯食の手順は一貫して変わりません。


オオハキリバチの主な花資源植物としてクズ(葛)が知られており、これから花粉と花蜜を集めて花粉団子を作り、その表面に産卵するそうです※。
確かに蜂が飛んで行く先の斜面はクズが繁茂し花をたくさん咲かせています。




巣口でぶら下がりながらの方向転換に毎回かなり苦労しています。
何度も滑落したり尻で巣穴をなかなか探り当てられなかったり、散々失敗した挙句、横の丸太で小休止することもありました。
ベタベタした樹脂を巣材としている筈なのに、滑り止めの効果は無いのだろうか。
(つづく)


 ※≪参考≫ 『ハチとアリの自然史:本能の進化学』 北海道大学図書刊行会 第4章「オオハキリバチとその労働寄生蜂の生活」 p71より 




≪追記≫ 
実際の訪花シーンは観察できませんでした。
蜂の体や巣内から花粉を採集して専門家が顕微鏡で調べればクズの花粉だと同定できるのかもしれません。

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