2011年10月下旬
里山の尾根道の横(標高約610m)で小さなクモがちょうど網を張っているところに出くわしました。
自然光下でクモの糸が光って見えるアングルを急いで探し、垂直円網に対して少し斜めの位置から手持ちカメラのまま動画撮影開始。
横糸を張りつつクモの回る向きは一定でした(時計回り)。
一気に横糸を張り終えて甑(こしき)の処理が済むと、小休止してから甑の上に白く目立つ隠れ帯(白帯※)を作り始めました。
細かいジグザグの隠れ帯を上から下へ縦に張り、甑にたどり着くとそのまま下向きに占座。
全く無駄のない所作に惚れ惚れします。
完成した垂直円網の直径は15cm、甑の高さは地上130cm。
枠糸の固定点は枯れた倒木。
風になびく円網を横から撮っていたら、クモがおもむろに甑の穴反転用通路(free zone)を潜り網の反対側に移動しました。
その結果、造網中からこちらに腹面を向けていたクモは、自ら背面も見せてくれました。
風向きや太陽の方向に応じて網のどちらに占座するか決めるのだろうか?
※【追記】
『クモを利用する策士、クモヒメバチ: 身近で起こる本当のエイリアンとプレデターの闘い』p207によれば、
白帯はかつて、クモを目立たせなくする機能があるとして日本では「隠れ帯」と呼ばれ、網を強化する機能があるとして英語では「stabilimentum(安定化させるもの)」と呼ばれていた。共通する普遍機能がないとわかった現在は、機能の意を含めない「白帯」と呼ばれるようになり、英語でも同じ理由で「web decoration」と呼ばれたりもする。
動画撮影後にクモを捕獲し、記録のため炭酸ガス麻酔下で接写しました。
体長5mmで外雌器も触肢の膨らみもありません。
いつもお世話になっている「クモ蟲画像掲示板」にて、サガオニグモ(Eriophora astridae)幼体とご教示頂きました。
コカマキリ♀dの飼育記録
2011年10月下旬・室温20℃→18℃
身重のコカマキリ♀dが野外で鉄パイプの下面にぶら下がって何時間も静止して居ました。
いかにも卵鞘を産みそうな予感がしたので、飼育するため夕方に採集しました。
近くに居たアシグロツユムシ♀と同じ容器に入れて持ち帰ると、捕食していました(半分食べ残し)。
コカマキリ♀による卵嚢作製の微速度撮影をなんとか物にすることを今季の目標にしており、これが4匹目(a-d)の飼育です。
産卵を観察しやすいよう透明プラスチックのDVDスピンドル容器で飼うことにしました。
コカマキリ♀dは容器の天井に逆さまにぶら下がる姿勢で、なんとその日の晩に白い卵鞘を泡立て始めました。
夕方に鉄パイプの下にずっと止まっていたのは、やはり産卵の準備だったようです。
透明の容器越しに上から見下ろすアングルでカメラを三脚にセットし、3秒間隔のインターバル撮影を開始。
コカマキリ♀の腹面と卵鞘の裏側という珍しいアングルです(飼育下ならでは)。
まるで白い絵の具を塗るように泡立てていきます。
約2.5時間(PM19:40〜22:15)の行動を60倍速の早回しでお届けします。
卵鞘が完成するとコカマキリ♀は身繕いや徘徊を始めました。
一仕事を終えた♀の腹端に白い卵鞘の泡が付着しています。
ちなみに、この白い産卵痕は野生のコカマキリ♀にも認められます。
卵鞘は乾くと固くなって褐色になります。
2011年10月下旬・気温25℃
里山の尾根に登り、日当たりの良い草地の横で弁当を食べていました。
落ち着くと辺りに茶色のバッタが何匹も居て鳴き交わしていることに気づきました。
シュリリリリ♪という乾いた(渋い)鳴き声です。
鳴いている様子をいざ動画に撮ろうとすると、優れた保護色のため落ち葉や枯葉を背景に静止していると、特に日向ではなかなか見つけられません。
こういうときはカメラの液晶画面ではなく光学ファインダーを直接覗く方が探しやすいです。
望遠で撮ってもすぐに枯葉の下に隠れたり跳ねたりして逃げてしまいます。
なんとか一匹に忍び寄って接写してみると、後脚と翅を擦り合わせて発音していました。
鳴く合間に顔を拭う様子(右前脚で複眼を撫でた)が可愛らしい。
接写した同一個体(映像で冒頭の4分間に登場)を素手で捕獲し、同定のため持ち帰りました。
体長を採寸すると22mm(頭頂⇔翅端)または19mm(頭頂⇔腹端)。
名前を調べてみるとヒロバネヒナバッタ♂(Stenobothrus fumatus)のようです。
虫の音WORLDサイトから鳴き声♪も聞けます。