2025/02/21

右後脚を麻痺したホンドタヌキがニホンアナグマの死骸を貪り食う【トレイルカメラ:暗視映像】

 



2024年3月下旬・午後20:02〜20:17 

平地の二次林で雪解けした林床に横たわるニホンアナグマMeles anakuma)の死骸を自動撮影カメラで見張っています。 
日がとっぷり暮れた晩に、1頭のホンドタヌキNyctereutes viverrinus)が現れました。 

初めは警戒しているのか、アナグマの死骸になかなか近寄ろうとしません。 
木陰からようやく姿を表すと、このタヌキ個体の歩行異常に気づきました。 
右後脚に全く力が入らない様子で、下半身を引きずるように痛々しく移動しています。 
実は、ここから数百m離れた休耕地でも同一個体と思われるタヌキが監視カメラに最近写っていました。 


5日前よりも下半身の麻痺症状が進行しています。 
夜道で車にはねられた(交通事故)のではないかと心配です。 
それとも、どこか高い所から落ちたのでしょうか?
後脚の骨折・脱臼系の怪我というよりも、脊髄損傷などによる運動神経の麻痺ではないか?と素人ながら勝手に想像してしまいます。 
まさかとは思いますが、この営巣地(セット)で冬眠していたアナグマと死闘を繰り広げて、アナグマを殺した代わりにタヌキも重症を負ったのでしょうか? 
それとも、巣穴やパートナー♀を巡るタヌキ♂同士の争いで大怪我したのかな? 
しかし、同種間の闘争で相手を半殺しにするでしょうか?
映像を見る限り、出血などの外傷はなさそうです。 
右足が罠にかかって壊死した可能性はどうでしょう? 
「下肢の麻痺 原因 獣医学」というキーワードを組み合わせてネット検索すると、老齢犬の症状などいろいろ情報がヒットしました。 

ようやく右から回り込んでアナグマの死骸に辿り着くと、ハシブトガラスに食われて傷口が大きく開いた下半身の匂いを嗅いでいます。 
死肉になかなか口をつけませんでした。
ようやく跛行タヌキは、アナグマ死骸の左前脚の根元に恐る恐る食いつきました。 
カラスが食べかけた部位を避けたのが興味深いです。(たまたまなのかな?) 
死骸の左耳も齧ったように見えました。 

タヌキの死肉食(腐肉食)を実際に観察するのは初めてです。 
テンポよくお見せするために、ところどころ5倍速の早回しに加工しました。 
タヌキは生きた獲物を狩るのはあまり得意ではなく、専らスカベンジャー(見つけた死骸を食べる)なのだそうです。 
少し移動すると、今度はアナグマ死骸の左尻の辺りを食べ始めました。 
下半身にハンディキャップがあると毎日餌を探し歩くのは大変でしょうから、これほど大量の肉を見つけて嬉しそうです。 
歯も丈夫そうで、毛並みも汚れていません。 
足に大怪我を負っても食欲旺盛なのはなによりです。 
食事の合間に樹上をキョロキョロ見回す余裕がでてきました。 

一度立ち上がって死骸から右に少し離れて、立木の匂いを嗅いでいます。 
再び戻ってきて食事を再開。 
次は死骸の左脇腹の肋骨?骨盤?を齧っているようです。 
アナグマの毛皮も死肉と一緒に飲み込みました。 
タヌキの溜め糞にときどき獣毛が含まれているのも納得です。 
死骸の周辺に生えている細い枯れ茎?(蔓?)が食事の邪魔になり、口で咥えて引っこ抜こうとしたものの、抜けずに諦めました。 (@x:xx〜)

ところで、タヌキは死肉を貪り食っている間に喉が渇かないのでしょうか? 
足が悪いと、水を飲みに行くのも大変そうです。 

どうやら満腹したようで、タヌキは向きを変えると痛々しく跛行しながら右上奥に立ち去りました。 
アナグマの死骸はまだ一部を食べられただけです。
タヌキは食べ残しを隠したり持ち去ったりすることはありませんでした。


※ 動画の一部は編集時に自動色調補正を施しています。 


つづく→ 


【アフィリエイト】 


 

↑【おまけの動画】 
早回し加工しないでオリジナルの素材動画をそのまま連結しただけの長編です。(12:04) 
需要があるか分かりませんが、ブログ限定で公開しておきます。


さえずりが下手くそな早春のウグイス♂(野鳥)ぐぜり鳴き♪

 

2023年4月上旬・午後12:40頃・晴れ 

早春の里山を下山中に、ウグイス♂(Horornis diphone)がさえずる声を今季初めて耳にしました。(初鳴き) 
ホーホケキョ♪という有名な鳴き声は、ウグイス♂が縄張り宣言をして♀を誘惑する鳴き声です。 
しかし、この日は繁殖期に入ったばかりらしく、まだ調子っ外れで下手糞な歌い方でした(鳴き方のメロディが不安定)。 
若い♂個体がホーホケキョ♪と上手に囀る練習をしているのでしょう。 
このような未熟なさえずりは、ぐぜり鳴き(サブソング)と呼ばれます。

どこで鳴いているのか、ウグイス♂の姿を見つけられませんでした。 
隣接する縄張りの♂同士が鳴き交わしている可能性もあります(歌合戦)。 


※ 鳴き声が聞き取れるように、動画編集時に音声を正規化して音量を強制的に上げています。 
ウグイス♂のぐぜりを声紋解析したいのですが、春風の風切り音がノイズとなって耳障りです。 


関連記事(11年前の撮影@4月下旬)▶ ウグイス♂の鳴き声♪を声紋解析してみる【野鳥】



松田道生鳥はなぜ鳴く? ホーホケキョの科学 でぐぜり鳴きについて調べると
 さえずり初めは、まだ鳴き方がおぼつきません。「ホー」が短い、あるいは、ないこともあります。「ホケキョ」も「ホケ」だけということも。「ホケキョ」は複雑な技巧を必要とするのでしょう。この節回しが、なかなかできないでいます。(中略)そもそも声が小さくて張りがありません。しかし、ときどき思い出したように「ホーホケキョ」としっかり鳴けて、(中略)わずか1週間ほどの練習で上手に鳴くことができるようになる  (p76〜78より引用)



【追記】
ウグイスのさえずりには方言があるので、今回のが「ぐぜり鳴き」だと言うには、同じ縄張りで定期的に録音して、歌い方が次第に上手になることを示す必要がありますね。


【アフィリエイト】 

2025/02/20

左右の角の先が欠けたニホンカモシカが早春の雪山で灌木に眼下腺マーキングと角研ぎを繰り返す

 

2024年3月下旬・午後13:20頃・晴れ 

早春の里山に登ると、尾根道は残雪に覆われていました。 
晴れて気温が上がり、雪質はシャーベット状(ジャリジャリ)のいわゆる腐れ雪でした。
スノーシューを履いて尾根道を縦走していると、雪面にニホンカモシカCapricornis crispus)が通ったばかりの新しい蹄跡を発見。  
足跡を辿って進むと、前方に居たカモシカが驚いて右から左へ尾根道を横切り、斜面を少し登って落葉灌木林の陰に隠れました。
 (映像はここから。) 

逃げたカモシカは、落葉した藪の隙間から、尾根道に立つ私を正面から見下ろしています。 
手前の茂みが邪魔でよく見えないのですが、黒い角の先端が左右両方で欠けているようです。 
個体識別をする上で、これほど分かりやすい特徴はありません。
カモシカの股間に注目しても外性器が見えず、性別不明です。 
過去の記録を遡ってみると、「左角欠け」と「左耳裂け右角欠け」という個体が居ましたが、左右両方とも角が欠けている個体は初見です。 

カモシカが奥に少し移動して姿が見えなくなる度に、私も静かに追いかけて、撮影を続けます。
どうやら、尾根道に並行して一段高い獣道があるようです。 
カモシカは、自分が相手よりも高所にいれば心理的に安心するのです。 

しばらくするとカモシカは、立木(落葉樹)の幹の匂いを嗅いでから、顔の眼下腺をゴシゴシと擦りつけてマーキングし始めました。 (@2:00〜)
尾根沿いを右へ右へと少しずつ歩いて移動しながら、次々と立木に眼下腺で匂い付けしています。 

ニホンカモシカがこれほど頻繁かつ連続して眼下腺マーキングしたのは初見です。 
これまでトレイルカメラ(無人カメラ)による観察では、画角が限定されているために、カモシカは単発でしか眼下腺マーキングしないのが普通だと思っていました。

したがって、今回の個体は明らかに近くで見ている私を意識して無言の縄張りアピールをしているようです。 (縄張り宣言の誇示行動。) 

次にカモシカが頭を低く下げたので、採食しているのかと思いきや、細い落葉灌木に角を擦りつけていました。(@3:46〜) 
同じ灌木で何度も角研ぎしています。 
自分の角の先端が欠けたことを自覚していて、それを研ぎ直そうとしているのだとしたら面白いのですが、この行動もやはり、しつこく追いかけて撮影する私に対する誇示行動(縄張り宣言)なのでしょう。 
角を研いだり磨いたりしたいのなら、もっと太くて頑丈な幹を選ぶはずです。 
今回は細い灌木を角で傷つけて樹皮を剥ぎ、マーキングするのが目的のようです。 

カモシカの角は骨で出来ています。
Perplexity AIに教えてもらったのですが、カモシカの角に神経は通っていないので折れても痛みは感じないらしいです。
角を研ぐ際に違和感があって、折れたと自覚しているかもしれません。
シカと違ってカモシカの角は毎年生え変わることはありません。
したがって、カモシカの角が一度欠けると再生することはなく、個体識別するのに最適な特徴となります。

カモシカは道中で更にもう1本の別な細い立木でも眼下腺マーキングしました。 
カモシカは私を一瞥してから、右にどんどん歩き去ります。 
約10分間の遭遇中に、この個体は鼻息を荒げる威嚇を一度もしませんでした。 
いくら私が忍び足で追跡しようとしても、スノーシューで腐れ雪の上を歩くとザクザクと音を立ててしまいますから、カモシカは気づいているはずです。
おそらく私の汗の匂いを嗅ぎ取って、「またいつもの変な奴か…」と認識してくれているのかもしれません。 


最後に私は初めに遭遇した地点まで戻って、残雪に残るカモシカの蹄跡を録画しました。 
私に気づいたカモシカが慌てて走って逃げた様子が足跡から読み取れます。 
カモシカが角研ぎした現場を検証して、写真を撮ったり樹種を確かめるべきでしたね。 
例えば、この辺りではオオバクロモジの木がよく自生しています。
クロモジの木を傷つけるとミントのような清々しい芳香がするのですけど、カモシカもこの匂いが好きだとしたら、面白い話です。

そのままカモシカを追跡しようか迷ったのですが、足取りは遅くても私がスノーシューでは踏破できそうもない急峻なルートを選んで歩き去るので、諦めました。 
次善の策として、先回りしてカモシカが来るのを待ち構えようとしたのですが、この日はもう再会できませんでした。 
よく晴れた日の雪山登山で野生のニホンカモシカと濃密な時間を過ごせて、最高の気分でした。

ランダムに記事を読む