2024/07/29

センニチコウ(千日紅)の花蜜を吸うシロオビノメイガ(蛾)

 

2023年10月上旬・午前10:25頃・晴れ 

民家の花壇に咲いたセンニチコウ(千日紅)の群落でシロオビノメイガSpoladea recurvalis)が訪花していました。 
この組み合わせは初見です。 
後ろ姿でも、マゼンタ色の花で吸蜜する口吻の動きがしっかり見えました。 
最後は飛んで別の花に移動しました。 

センニチコウにも様々な品種があるようで、白、ピンク、マゼンタと色とりどりの花が咲いていた中で、シロオビノメイガは最も色の濃いマゼンタ色の花を選んでいました。 


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2024/07/28

餌場に設置したトレイルカメラを興味津々で調べるツキノワグマ【暗視映像】

 

2023年10月下旬・午後21:40頃 

フィールドに木の実の給餌場を設けて、どんな野生動物がやって来るかトレイルカメラで撮影するプロジェクトを今季も始めました。 
昨年やり残したことが幾つかあるのです。 
餌場の場所は昨年(2022年)と全く同じで、里山の林道脇の法面に生えたカラマツ大木の根元にある窪みです。 
まずは緑色の果皮がついたままのオニグルミ落果を拾い集めてきて、給餌場に山盛りに置きました。 
すると数日後の晩に、想定外の珍客がやって来ました。 

至近距離からトレイルカメラの匂いを嗅ぐ獣の鼻息♪がすると思ったら、左から真っ黒な獣が登場しました。 
カメラに近過ぎて初めは何だか分からなかったのですが、ようやくツキノワグマUrsus thibetanus)の横顔がしっかり見えました。 
里山のこの地点でツキノワグマが撮れたのは初めてです。 

実は1時間55分前にニホンイノシシ♀がカラマツの幹にマーキングしたのですが(映像公開予定)、クマはカラマツの方を見て匂いを嗅いでいます。 
やがて、カラマツの根本にある餌場に気づき、オニグルミ果実の匂いを頻りに嗅ぎました。
餌場に夜な夜な足繁く通っていた野ネズミの残り香が気になるのかもしれません。 

意外にもツキノワグマはオニグルミの実を食べませんでした。 
秋は他にも美味しい食料が豊富なので(ドングリやブナの実など)、食べづらいクルミは敬遠するのでしょうか? 
オニグルミの果皮には渋いタンニンが豊富に含まれているので、果皮が腐って自然に剥がれ落ちるまでは、クマも口にしたくないのかもしれません。 
果皮が無くても、硬い殻を割らないと美味しい中身を食べられません。
(クマは力任せに噛んでクルミの殻を割るのかと予想していました。 ※追記参照)
あるいは、給餌したオニグルミ果実の一部から白カビが生えかけていたので、カビ臭い匂いを嫌ったのかな? 
もしもオニグルミではなく、ドングリやクリの実を給餌していたら、クマは食べてくれたかな?

ツキノワグマは餌場から離れ、ゆっくり右へ歩き去りました。 
横から見ると腹が膨らんでいるものの、外性器は認められませんでした。(性別不明) 

次にトレイルカメラが起動したときには、戻ってきたツキノワグマがカメラに興味津々で調べているところでした。 
胸に白い三日月紋がしっかり見えたので、今後の個体識別に使えそうです。 
シナノキの幹の低い位置に固定したカメラを明らかに見慣れない異物と認識しているようで、カメラの匂いを嗅ぐ鼻息が聞こえます。 
数日前に設置した際に私が触れた残り香が気になるのでしょうか? 

続けてクマは、トレイルカメラを取り外そうと、軽く前足の手を掛けました。 
レンズを覗き込むつぶらな瞳もチラッと写りました。 
ようやく気が済んだのか、クマは向きを変えて左に立ち去りました。 

無人カメラならではの迫力のある衝撃映像が撮れましたが、幸いカメラをクマに壊されずに済みました。 
トレイルカメラをシナノキの幹にベルトとワイヤーロックでがっちり固定していたおかげで、クマが乱暴に触れても、撮影アングルはほとんど変わっていませんでした。 

※ クマの鼻息が聞き取れるように、動画編集時に音声を正規化して音量を強制的に上げています。

後日(11月上旬)に現場検証すると、カメラを固定していたシナノキの幹にツキノワグマの爪痕はありませんでした。 






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※【追記】
自然写真家 永幡嘉之氏の公式ブログに、クマの糞に含まれていたオニグルミの殻の破片の写真が掲載されていました。
クマの糞が「車に轢かれて雨に打たれた洗いざらし」の状態で見つかり、容易に糞分析できたそうです。
他に餌がなければ、固い殻に覆われたクルミ堅果もガリガリ齧って丸ごと食べてしまうことが分かります。

ドングリを運んであちこちに隠す秋のカケス:その2【野鳥:トレイルカメラ】隠蔽工作・再貯食など

 



2023年10月中旬〜下旬

シーン0:10/12・午後14:38・晴れ・気温28℃(@0:00〜) 
シーン0:10/12・午後16:58・晴れ(@0:04〜)日の入り時刻は午後17:10 

ニホンアナグマMeles anakuma)の旧営巣地(セット)がある平地の二次林を新旧2代のトレイルカメラで見張っていると、カケスGarrulus glandarius)の貯食行動が記録されていました。 


シーン1:10/13・午前7:48・晴れ(@0:08〜) 
画面右上の止まり木から奥の林床にカケスが飛び降りました。 
ピョンピョンとホッピングしながら餌を探したものの、右へ飛び去りました。 


シーン2:10/13・午前10:39(@0:21〜) 
手前の死角から右奥の二次林鳴いへカケスが飛び去りました。 


シーン3:10/13・午前11:20・晴れ(@0:28〜) 
ここからが本番で、面白くなってきます。 
嘴にドングリ(種名不詳)の堅果を咥えたカケスaがホッピングでセットを左下に移動しています。 

やがて右から別個体のカケスbが飛来すると、林縁の灌木に止まりました。 
よく見ると、この個体bも嘴に白っぽい堅果を咥えていました。 
林床に飛び降りると、貯食場所を探しています。 
ミズキ灌木の根本にドングリを埋めたようですが、監視カメラの死角でよく見えませんでした。 
この2羽のカケスは♀♂つがいかと思ったのですが、後で仲間のカケスに盗まれないように、仲間から見えない場所にドングリを埋めたとしたら、賢いカケスは「心の理論」をもつことになります。 

1.5倍に拡大した上でリプレイしてみましょう。(@1:28〜) 
カケスaはアナグマの巣口Rの近くの地面(アクセストレンチの横)にドングリを隠しかけたのですが、思い直して左下に移動しました。 
カケスbは奥の林床でドングリを隠す場所を探し歩いています。 


シーン4:10/14・午前9:53・晴れ(@2:40〜) 
右の林縁低部にカケスが止まっていました。 
初めからドングリ堅果を咥えていたかどうか、やや遠くて不明です。 
地面に降り立ち、灌木の根本の落ち葉の下で何かを激しくつつきました。 
これだけなら虫を捕食した可能性もあるのですが、次に周囲の落ち葉を嘴でつまんで移動しました。 
どうやら以前に貯食したドングリ堅果を埋め直してから落ち葉を被せて、念入りに隠しているようです(隠蔽工作)。 
貯食場所の目印として落ち葉を置いた可能性もありますが、落ち葉はやがて風で飛んでしまうかもしれませんから、賢いカケスはそんなことはしないはずです。 
隠蔽工作に満足したカケスは飛び去りました。 

1.5倍に拡大した上でリプレイしてみましょう。(@3:15〜) 
やはりカケスは初めからドングリを運んでいませんでした。 
以前に隠したドングリ堅果をつついて地中深くに押し込んでから、落ち葉を寄せ集めて隠蔽していました。 


シーン5:10/14・午前10:49・晴れ・気温17℃(@3:49〜) 
アナグマの巣口L付近の細い灌木に止まっていたカケスが空荷で(ドングリを運ばずに)飛び去りました。 


シーン6:10/16・午前11:36・晴れ(@3:59〜) 
アナグマの巣口Rの真上を横切る木質の蔓の上にカケスが止まっていました。 
嘴にドングリを咥えたまま、左に飛び去りました。 


シーン7:10/18・午前6:40(@4:07〜) 
右の林縁に来ていたカケスが左に飛び去りました。 
もしかするとシーン4(4日前)と同一個体で、落ち葉で隠した貯食物が無事かどうか(誰かに盗まれていないかどうか)、さり気なく確かめに来たのかもしれません。 
4日も前のことを覚えているのか!と感心しますが、カケスは餌が乏しい冬に備えて秋のうちからせっせと貯食している訳ですから、もっと遥かに長い期間、多数の隠し場所を記憶していることになります。


シーン8:10/18・午前10:11(@4:16〜) 
セットで左手前に転がっている落枝に乗ったカケスの後ろ姿が写っていました。 
周囲の落ち葉を嘴で集めて、何かの上に被せています。 
これも貯食物の隠蔽工作でしょう。 
落枝を伝って左へ移動すると、そこでも以前の貯食物を隠し直していました。 

作業が一段落すると、アナグマの巣口Rの左に生えたマルバゴマギの灌木に飛び移りました。 
アナグマが掘ったアクセストレンチRに飛び降りると、地中浅くに隠していたドングリを摘み出しました。 
そのドングリ堅果を嘴でコツコツ叩いて、地中深くに埋め直します。 
今回は落ち葉を隠したりしないで、林床を奥に移動しました。 
この辺りには野ネズミの巣穴もあるので、せっかく隠したドングリが野ネズミに盗まれてしまうのではないかと他人事ながら心配です。 

1.5倍に拡大した上でリプレイしてみましょう。(@5:16〜) 
ドングリ堅果を貯食し直す行動がしっかり撮れていました。 


シーン9:10/18・午前10:12(@6:16〜) 
右奥の林縁に生えたオニグルミの根元でカケスが何かしています。 
嘴でコンコン叩いているということは、ドングリを地中深く埋めているようです。 
その後は近くの止まり木に移動してから、左手前に飛び去りました。 

1.5倍に拡大した上でリプレイしてみましょう。(@6:51〜) 


シーン10:10/18・午後15:55(@7:25〜) 
林縁の細いマルバゴマギ灌木に止まっていたカケスが空荷で右の地面に飛び降りたものの、監視カメラの画角の外に入ってしまいました。 


シーン11:10/19・午前11:01・晴れ・気温20℃(@7:41〜) 
左下の落枝に空荷で止まっていたカケスが、すぐに左へ消えてしまいました。 
その後、別個体(?)のカケスが奥の林床に飛来し、何かしていたのですが、常緑ヒメアオキ群落の陰でよく見えなかったので割愛。 


シーン12:10/19・午前11:38・晴れ(@7:47〜) 
アナグマの巣口Rの横の細いマルバゴマギ灌木に止まっていたカケスが左の地面にピョンと飛び降り、死角に消えました。 
ドングリは咥えておらず、空荷でした。 


シーン13:10/19・午前11:39・晴れ・気温21℃(@7:54〜) 
別アングルで設置した新機種のトレイルカメラで続きが撮れていました。 
空荷のカケスが、セットの止まり木をあちこち飛び回っています。 


シーン14:10/20・午前10:42(@8:16〜) 
アナグマの巣口Rの真上に垂れ下がった木質の蔓にカケスが止まっていました。 
1.5倍に拡大した上でリプレイしてみると(@9:16〜)、カケスは嘴にドングリを咥えていました。 
地面に飛び降りると、地面を啄んで採食を始めたように見えたのですが、ドングリを運搬中なので、貯食行動と思われます。 

その後もカケスは、セット内の止まり木や地上をあちこち移動して、ドングリを安全な場所に貯食し直しているようです。 


シーン15:10/23・午前8:42・晴れ・気温13℃(@10:16〜) 
アナグマの巣口Lの上に張り出したマルバゴマギの細い灌木に空荷のカケスが止まっていました。 
やがて地面に降りると、落葉をかき分け始めました。 
飛び上がって元の止まり木に戻ると、嘴にドングリ?を咥えていました。 
止まり木上でドングリを一旦足で掴み直してから、咥え直しました。 
そのままドングリを運んで、右上奥へ飛び去りました。 
以前に隠していた貯食物を掘り出して、別の安全な場所に隠し直すのでしょう。 

1.5倍に拡大した上でリプレイしてみましょう。(@11:15〜) 
カケスの再貯食行動をようやくフルカラー動画でしっかり記録できました。 


シーン16:10/23・午後13:36・くもり・気温18℃(@12:18〜) 
嘴に大きなドングリ堅果を咥えたカケスが右の細い灌木に止まっています。 
低空で飛んで左上奥へ移動しました。 
しばらくして元の止まり木に戻って来たカケスは空荷でした。 
何処か近くでドングリを貯食してきたようです。 


※ 動画の一部は編集時に自動色調補正を施しています。 


【考察】 
カケスが以前隠したドングリを念入りに埋め戻したり、落ち葉を被せて隠蔽したり、別の安全な地点に隠し直したりする行動が観察できました。
カケスは警戒心が非常に強いので、無人カメラでないとこのような自然な行動を撮影するのは無理でしょう。
ドングリの再貯食と言っても、初めにカケスがその地点でドングリを隠す行動が記録されていないのが残念です。 
トレイルカメラの電池残量やセンサーの感度など技術的な問題のせいで、どうしても記録漏れがあるようです。 

ここは雪国ですから、冬の積雪期にカケスがどうやって貯食物を掘り出して食べるのか、気になります。 
冬でも晴れた日には木の幹が太陽光で温められるために、太い木の根元だけ雪が早く溶けます。 
したがって、太い木の根元に好んでドングリを隠すカケスは、経験豊富な個体なのかもしれません。 
(深い雪で埋もれそうな林床に隠すカケスは若い個体?)

このまま春まで固定アングルで定点観察を続けて、貯食したドングリの行方を見届けたいものです。 
ところが2023年度の冬は記録的な暖冬となり、降雪量が異常に少なかったです。(映像公開予定) 
雪国ならではのカケスの貯食行動を撮影するには、これから何年も継続して定点観察する必要がありそうです。
この地点で秋にカケスが昼間に頻繁に現れてドングリを貯食できるのは、アナグマが巣穴を留守にしているからです(空き巣状態)。
アナグマの家族が秋まで営巣地(セット)で活動している年には、カケスは落ち着いてドングリを貯食できないはずです。(映像公開予定)
自然観察はなかなか思い通りにはいきません。

仮にカケスがドングリの貯食場所を忘れてしまい、春にドングリから芽が生えても、大きな木の下では日陰になって育つことはできないでしょう。(種子散布の失敗) 
その木が落雷や強風で倒れた場合にのみ(林冠ギャップの形成)、ドングリなど他の稚樹が成長できるチャンスがあります。 
無駄が多くておそろしく低い確率に託している訳ですが、ドングリは膨大な数の堅果を生産することによって補っているのでしょう。 
生態学の教科書に載っているような「鳥による貯食型種子散布」の話も、実際に観察すると理解が深まり、上手く出来た共生関係だなーとつくづく感嘆します。 




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