2020/06/08

初列風切羽を一部欠いたノスリの帆翔(野鳥)



ノスリ(野鳥)営巣地での観察記録#20



▼前回の記事
ノスリの巣を微速度撮影で監視してみる【10倍速映像】(野鳥)

2019年6月中旬・午後13:20頃・晴れ

梅雨の晴れ間に営巣地の様子を見に行くと、営巣木がある河畔林の上空を1羽のノスリButeo japonicus)が低く飛び回っていました。
近くでカラスが鳴くと♪、飛んでいた猛禽はそれに反応して急降下しました。
おそらくノスリ親鳥がカラスによるモビング(擬攻撃)をかわそうと逃げ回っているのでしょう。

※ 動画の冒頭のみ、音声を正規化して音量を強制的に上げています。

一瞬見失ったノスリが再び河畔林から飛び立つと、川の上空をぐるぐる飛び回ります。
羽ばたきと帆翔を繰り返し、上昇気流に乗って少しずつ高度を上げています。
大きく広げた翼の下面が白く、黒い斑紋がパッチ状にあることから、この猛禽はノスリと確定しました。
左の翼の後縁の羽毛が数枚欠けている点がよく目立ちます。
キャプチャした写真を拡大すると、初列風切羽P1,2が脱落しているようです。
右側の尾羽にも脱落があります。

羽根が数枚欠損していても、飛ぶのに支障は無いようです。
まさかカラスにやられたのでしょうか?
しかし『フィールドガイド日本の猛禽類 vol.04 ノスリ』を読むと、「換羽のためP1,2が脱落している」ノスリ成鳥の飛翔写真が掲載されていました。(p17)


この特徴に注目すれば私のような素人にも個体識別できそう!と嬉しく思ったのですが、換羽の結果だとすれば、じきに回復してしまうはずです。
私には未だノスリの性別を見分けられませんが、ささやかながら前進です。

今回私はブラインドに隠れておらず、上空のノスリから丸見えです。
望遠で巣を覗きに来た私の様子を親鳥が偵察に来たのかもしれません。
しかしノスリ親鳥は私に対して威嚇の鳴き声を発したりせずに、黙って飛んでいました。




【追記】
『フィールドガイド日本の猛禽類vol.04ノスリ』で本種の換羽について勉強してみました。
 初列風切は基本的にP1、P2、P3…という順番で翼の最外に向かって換羽する。ノスリと同じサイズの(中略)鷹では、通常1年間でP10まで全て換羽するサイクル(完全換羽)を毎年繰り返し、これまでノスリも同様であると考えられていた。しかしこれは間違いで、通常はP8前後までしか換羽しない。
 2年目春以降は、途中まで進行した部位から換羽が始まるとともに、P1からも新たな換羽サイクルが始まる。(p3〜4より引用)


ノスリ-風切羽(野鳥):翼下面@飛翔
翼上面@飛翔が撮れたのは珍しい。



↑【おまけの動画】
直後にノスリの巣を遠目から撮った様子をブログ限定で公開します。
撮影開始からちょうど1分後(ズームアウトする直前)に在巣の個体(雛?)が少しだけ頭を上げました。
巣の手前に生い茂った枝葉の陰で全身像が見えないのが残念です。

つづく→#21:樹上の巣で羽ばたき練習するノスリの雛(野鳥)




2020/06/07

円網にかかったミヤマアカネ♂の死骸をラッピング・捕食するジョロウグモ♀(蜘蛛)



2019年9月上旬

ジョロウグモ♀(Nephila clavata)がいつの間にか室内の隅に円網を張っていました。
昼間に開いていた窓の外から室内に侵入したようです。
ごくありふれた普通種のジョロウグモでも未だ観察できていない宿題が幾つか残っているので、そのまま飼育します。

給餌するために、ミヤマアカネ♂(Sympetrum pedemontanum elatum)を野外で捕獲してきました。
夜ジョロウグモの網に給餌してもトンボは全く暴れず、クモは捕食しませんでした。
トンボが死んだふり(擬死)しているというよりも、久しぶりに折った三角紙の中で既に瀕死状態(虫の息)だったようです。
網上の獲物に私が音叉や指で振動を与えても、ジョロウグモ♀は無反応でした。
満腹なのでしょうか?
仕方がないので、そのまま数時間放置。

ところが、夜中に私がパソコンの作業を終えて電源を切ったら、横のジョロウグモが急に活動を始めました。
これは偶然でしょうか?
ジョロウグモは特に夜行性ではありません。
もしかするとPC内のファンやハードディスク(HDD)などが高速で回転する絶え間ないノイズのせいで、ジョロウグモ♀は網の振動を感じられなくなっていたのかもしれません。
歩脚の先で網を弾いて、ミヤマアカネ♂がかかっていることに気づいたようです。
(映像はここから)
ジョロウグモ♀は獲物に駆け寄って少量の糸でラッピングすると、網から外してこしきに持ち帰りました。
下向きに占座して落ち着くと、ようやく獲物を捕食し始めました。
クモは新鮮な生き餌しか食べないと思っていたので、死骸もラッピングして食べるとは意外でした。

長々と続く捕食シーンを100倍速の早回し映像をご覧下さい。(@3:45〜)
ジョロウグモ♀は獲物の噛む位置を少しずつ変えながら体外消化しています。
初めはトンボの頭部に噛み付いていたのですが、途中から胸部を噛み始めました。
最後はトンボの胸部から外れた頭部を歩脚でくるくる回しながら噛みしめ、体液を吸汁しています。
胸部と腹部の境界も今にも千切れそうです。
カメラの仕様により、約3.5時間で微速度撮影の限界となり打ち切られてしまいました。

ところで、死んだミヤマアカネ♂の翅の縁紋が蛍光ピンクに光って見えるのは、照明(白色LEDと蛍光灯を併用)のせいですかね?

朝になると、ジョロウグモ♀はミヤマアカネ♂の食べ残し(翅の周囲)をいつの間にか網から捨てていました。
前回の食べ残しは背後の網に付けたままです。

この時期は同時並行で色んなテーマの撮影を行っていたのでとても忙しく、ジョロウグモの方はこれ以上もう手が回らなくなってしまいました。
また来年に持ち越しです。
室内で網を張らせるアイデアは良いのですが、撮影のためには背景の色を工夫してもう少しすっきりさせないと肝心のクモの網がきれいに写りません。




イソヒヨドリ♀を見つけた!(冬の野鳥)



2020年1月上旬・午前11:40頃

正月の街なかで黒っぽくて見慣れない鳥が屋根の上に止まっていました。
地味な外見ですけど、腹面が白と黒の鱗模様になっています。
白い屋根の縁に止まり、キョロキョロと辺りを見回していました。
飛び出す直前に身を屈めた際に一瞬だけ尾羽根が見えました。
飛び立つ瞬間を1/10倍速のスローモーションでリプレイ。

ミソサザイかと思ったのですが、どうも違います。
散々苦労して調べた結果、ようやくイソヒヨドリ♀(Monticola solitarius philippensis)と判明しました。
イソヒヨドリと出会ったのは生まれて初めてです。
「海岸や高山に生息する鳥らしいので私には縁がないだろう」という認識でしたが、こんな内陸地方の街なかにも出没するのですね。
次は色鮮やかな♂を観察したいものです。
紛らわしいことに、ヒヨドリ科ではなくヒタキ科なのだそうです。

せっかく撮れたのに撮影場所をはっきり覚えていない、という致命的なミスを犯しました。
最後はズームアウトして周囲の状況を記録すべきだったのに、なぜか録画を途中で止めてしまいました。
おそらく街なか(住宅地)だと思います。



【追記】
松原始『鳥類学者の目のツケドコロ』第4章でイソヒヨドリは「新世代の都市鳥」と紹介されていました。
現在進行系で生息地を急激に拡大し、都市の鳥になろうとしている (電子書籍版より引用)

私のフィールドでもこれから目撃頻度が増えてくるのか、注視していきたいと思います。

【追記2】
2021年10月10日にNHKで放送された「ダーウィンが来た!」という動物番組で「街に大進出!青い鳥の謎」と題してイソヒヨドリの都会進出について解明していました。
人間が海辺の磯の崖を開発した結果、新たな営巣地を求めて鉄筋コンクリートの高層建築物が林立する内陸部の都会に進出するようになったそうです。






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