枯木に営巣したコガタスズメバチの定点観察#1
2016年7月上旬
枝打ちした枯れ枝を建物の軒下の外壁に何本か無造作に立てかけてあり、一本の先端にコガタスズメバチ(Vespa analis insularis)が営巣しているのを見つけました。
外皮の形状が徳利型ではなくて球形なので、もう初期巣ではなく既にワーカー♀が何匹も羽化済みのようです。
コガタスズメバチの巣口が球状の外皮の横に開いているのは初見で、珍しく思いました。
(普通は下向きに巣口が作られているはずです。)
もしかすると、蜂にとっては重力の向きが基準なのではなく、巣の土台となる枯れ木に対しては下向きに開口しているという認識なのかな?
巣口の奥の育房には白い繭が見え、内役のワーカー♀(または創設女王)が巣内で活動しています。
外役から続々と帰巣するワーカー♀の一匹の胸背が花の花粉で黄色く染まっていました。
獲物や巣材を搬入したのか空荷だったのか、背側から撮るアングルではよく見えませんでした。
しばらくすると大顎に黒っぽい巣材(樹皮を小さな団子状に噛みほぐしたパルプ)を咥えたワーカー♀(胸背はきれい)が巣内から外皮に出てきました。
外被を歩いて回り、増設箇所を検討しています。
後半は撮影アングルを変更して、巣を横から撮ってみました。
最後に、胸背が黄色い花粉で汚れた例の個体が巣外に飛び出して行きました。
今回の映像には巣口を中から守る門衛が写っていませんね。
つづく→#2:巣からゴミ捨てに出るコガタスズメバチ♀
2017年8月下旬
農業用水路沿いに咲いたナガボノシロワレモコウの群落でコアオハナムグリ(Gametis jucunda)が訪花していました。
花穂の先端部で雄しべの花粉や花蜜を食べているようです。
後半は花穂の根元(蕾の部分)に移動して休息。
飛び立つかと思いきや、再び先端に降りて食事を再開。
※ 背景をぼかしていても絶え間なく動く激しい流水のため、いつものように動画編集時に手ぶれ補正処理すると副作用が酷いことになりました。
仕方なく、今回はそのままお届けします。
2016年10月上旬
夜、いつものように飼育容器内に霧吹きしていると、一匹のヒダリマキマイマイ(Euhadra quaesita)が恋矢を排出していることに気づきました。
最近もう一匹と交尾したはずですが、私は見逃したようです。
恋矢(交尾矢love dart)はカルシウムを含み,交尾前に恋矢嚢が裏返しとなることによって射出され,相手の個体の皮膚に機械的刺激を与え,交尾が終ると捨てられる.刀身状のものが多いが,紡錘形・剣菱形・三角形・山形・円形など種類によってさまざまで,分類上の重要な標徴となる. (『岩波生物学辞典第4版』より引用)
透明なプラスチック容器越しに腹面から接写すると、水滴で濡れた壁面を舐める歯舌の動きよく分かります。
体の左側面から白く長い恋矢が伸びています。
魚の小骨のように湾曲し、一端は鋭く尖っています。
交尾の際にパートナーから刺された恋矢を傷口から排出しているのでしょう。
体内にしばらく残された恋矢は痛むのでしょうか?
やがて水滴を舐めるついでに、体を左によじって恋矢にキスを始め、体に刺さっていた恋矢を口で引き抜きました。
しばらく抜けた恋矢の根元を舐めています。
もしかすると、自分の体液(血液?)やパートナー由来の粘液が恋矢に付着していて、それを栄養源として摂取しているのかな?と想像しました。
後半は微速度撮影に切り替えて記録したので、10倍速の早回し映像でご覧ください(@4:01〜)。
蛇行しながら飼育容器の壁面を登って行きます。
波打つ腹足の蠕動がよく分かります。
ヒダリマキマイマイが這った後は、透明な粘液で泡立っています。
恋矢の排出シーンを観察したのはこれが初めてです。
今回の恋矢について改めて考えると、おかしなことに気づきました。
もし体内に刺さった恋矢を引き抜いたのなら、尖った先が内側(傷口)を向いているはずです。
しかし映像を見直すと、恋矢の尖った先が外側を向いています。
これは何を意味しているのでしょう?
交尾に使われなかった自分の恋矢を体内から排出(排泄)したのでしょうか?
そんな必要性があるのか疑問です。
次回の交尾に使えば良いのでは?
あるいは、交尾で相手を刺したのに恋矢が折れなくて、排出に手間取ったのかもしれません。(恋矢は交尾の度に使い捨て?)
交尾相手から刺された恋矢が体を完全に貫いて折れ、そのまま排出したのですかね?
それとも、捨てられた古い恋矢が容器の壁面に付着していて、徘徊中の個体がそれをゆっくり乗り越えるシーンをたまたま見ただけかな?
どのシナリオが正しいのか知るためには、交尾直後から連続録画でひたすら愚直に監視するしかなさそうです。
飼育容器内に脱落した恋矢を見つける度に記念として採集してきたのですが、なぜか今回の恋矢はどこに紛れてしまったのか、採集した記憶がありません…。
▼関連記事 (背側からの観察例)
交尾後に恋矢を排出するヒダリマキマイマイ