2012/12/03

ジガバチの営巣:獲物を狙うアリとの死闘(その2)負け戦



2012年8月下旬

獲物のヨトウムシを抱えて逃げたジガバチ♀は意外なことに新たな場所で穴を掘り始めました。
砂を脚で掻いたり地面の小石を拾い上げては少し移動するランダムな動きで、腹立ち紛れの真空行動かもしれません。
蜂の苛立ちや焦燥感(ストレス)の表れのような気がしました。
しかしアリが多い裸地で巣坑を新たに掘り直すメリットはあるのでしょうか?
(アリの少い営巣地を探すべきでしょう。)
本格的な穴掘りには至らず、試掘に終わりました。

巣口がすぐ近くにあるのに、なかなか戻れないで探しています。
1円玉を置いたせいで迷子になったとは考えにくいですが、ほとぼりが覚めるまであえてしばらく巣に近寄らないようにしているのかな?
一難去ってまた一難。
道中、もう一匹のジガバチが飛来するや突然飛びかかりました。
1/5倍速のスロー再生↓で確認しても、同種のジガバチ♀が喧嘩をしかけてきたのか♂が交尾を試みたのか不明です。
攻撃?を加えた蜂はすぐに飛び去りました。





ジガバチ別個体と喧嘩した直後も真空行動が見られました。

ようやく探し当てた巣口に入ると、閉塞石の除去を再開。
今回は作業の合間に獲物を点検しに行きません。
獲物に集るアリはあえて無視して穴掘り作業に専念する作戦のようですが、アリには通用しないようです。

1円玉の横(巣口の真上)に置いた獲物に次々と蟻が襲いかかり、蜂の孤軍奮闘が続きます。
まさに無間地獄で、泣きっ面の蜂は興奮して飛び回ります。
またもや獲物を抱えて逃げ出しました。
その後を寄生ハエ♀(シロオビギンガクヤドリニクバエ?)が執拗に追いかけます。
映像には写っていませんが、個体識別のため隙を見て白色の油性ペンで蜂の腹背にマーキングを施しました。

先程のジガバチ別個体が獲物を盗む可能性があるからです(労働寄生、盗寄生)。
ジガバチ♀白は裸地をぐるぐる逃げ回った挙句、再び巣口の真上に獲物を置きました。
逃避行中のジガバチ♀白が休憩してアリを撃退している間に寄生ハエが大胆にも芋虫の上に乗りました。
獲物の腹端にはアリが一匹かじり付き、一緒に引きずられて行きます。
穴掘りを再開しても、獲物に続々とアリが群がって来ます。

四面楚歌で搬入作業が全く捗りません。
ジガバチとクロヤマアリでは体格差があり過ぎて格闘してもアリに勝てない(致命傷を与えられない)のが問題です。
アリは蜂の攻撃を素早くかわして逃げますし多勢に無勢です。
巣坑に侵入し物色する大胆なアリもいます。
見るからにジガバチの敗色濃厚です。
遂にジガバチ♀白は獲物を諦めて飛び去ってしまい、戻って来ませんでした。
獲物の搬入・貯食行動を観察できず残念でした。
同定のためジガバチ♀白を採集したかったのですけど、逃げられて残念。
胸部の接写もできませんでした。
(この近くで以前採集した♀♂個体はヤマジガバチと写真鑑定してもらいました。)
使われなかった巣穴に草を差し込んでみると斜坑で、深さはそれほどでもありませんでした。
理想を言えば営巣を最後まで見届けてから独房を発掘して貯食物と卵を採集し蜂の子を飼育する計画でした。

この個体は、獲物を持って逃げても草むらに暫く潜んで天敵をやり過ごす知恵がなかったようです。
前回観察したジガバチ♀水は寄生ハエから逃げながら巣坑を再度一時閉鎖しています。
明らかに営巣地の選定ミスと思われます。
アリの活動の少ない場所を選ぶべきでしょう。

つづく→その3

【参考】
キオビクモバチは狩猟後、寄生バエなどの天敵を避けるために日没を待ってから土中に単房巣を掘るらしい。(『狩蜂生態図鑑』p79より)




左下と上に2匹の寄生ハエ

寄生ハエ

2012/12/02

ジガバチの営巣:獲物を狙うアリとの死闘(その1)



2012年8月下旬

いつものヤマジガバチ営巣地(尾根道の裸地@標高〜600m)で定点観察していると、狩りに成功したジガバチ♀が獲物を抱え意気揚々と帰ってきました。
毒針で狩られた獲物は褐色型のヨトウムシのようで、前回観察した獲物と同種と思われます(ヤガ科のキリガ亜科やヨトウガ亜科の幼虫?)。
ジガバチ♀は自分の体長よりも大きな獲物の頭部を前に向け腹合わせに跨り、芋虫の胸部辺りを咥え、地面を歩いて前進して運びます。※
狩りに出かける前に一時閉鎖した巣坑を探して裸地をうろうろと徘徊します。
ようやく探し当てると、獲物を近くの地面に置いたまま、戸締りを解除し始めました。

斜坑の閉塞石として小石の他に小枝なども詰め込んでありました。
これらを一つずつ取り出すと、わざわざ少し離れた場所まで歩いて捨てに行きます。
たまに飛んで捨てにいくこともありました。
作業の合間に獲物の状況を確認に戻ります。

ジガバチの天敵である寄生ハエ(シロオビギンガクヤドリニクバエ?♀)が登場し、獲物に止まりました。
獲物の点検に戻った蜂が、ハエとアリを追い払いました。
アリに襲われた芋虫は麻酔の効いていない腹端を弱々しく動かします。

蜂はジージー♪鳴きながらアリを追い立てるものの、次々にアリが現れ埒があきません。
堪りかねたように蜂が獲物を咥えて移動を始めました。
巣口から遠ざかるように逃げて行く蜂を2匹の寄生ハエ♀がピョンピョン飛び跳ねながら追いすがります。
蜂は辺りをぐるりと一周すると巣穴に戻りました。
巣坑に入って中を点検します。
その間、寄生ハエは獲物の上で待機。
遂に一匹のアリが芋虫を咥えて引っ張り始めました。

怒った蜂がすごい剣幕で追い払おうとしても、小さなアリは敏捷に逃げ惑い、しかも援軍が続々に現れるので手に負えません。
ジガバチは再び獲物を咥えて逃げ出しました。
運搬中に力んだときもジージー♪鳴いています。
いくら逃避行を繰り返してもアリの攻撃が止まず、寄生ハエ♀も振り切ることが出来ません。
巣口に戻ったところでアリを撃退するのに忙しく、巣坑を掘る暇もなくなりました。

敗色濃厚ですが、もし自分がジガバチ♀なら、このしつこい天敵にどう対処するだろう?と考えます。
ほとぼりが冷めるまでどこかに隠れてやり過ごすのでしょうか?
しかし弱肉強食の自然界に完全な正解や必勝法というものは存在しないのだと実感します。
以前ジガバチが巣穴を試掘するときからアリに邪魔されていたので、ここを営巣地に選定したのがそもそも致命的な間違いなのでしょう。

関連記事→「ジガバチ♀の穴掘りを邪魔するアリ

つづく→その2





獲物を抱えて逃げるジガバチを寄生ハエがぴったり追跡
【追記】
※ ジガバチは自分の重さの1〜8倍の鱗翅目の幼虫を運べるらしい。(『日本動物大百科10昆虫Ⅲ』p44より)

排泄した糞を蹴飛ばすアシグロツユムシ幼虫



2012年8月下旬

杉林の下草に止まっていたアシグロツユムシの幼虫Phaneroptera nigroantennata)の後ろ姿を撮っていたら、急に排便しました。
その糞をすかさず左後脚で蹴って遠くに弾き飛ばしました!
これはバッタやキリギリス類に特有の排泄行動です。
糞の匂いを手がかりに襲ってくるカリバチなどの天敵対策でしょうか。
1/5倍速のスロー再生しても、踵で糞を直接蹴り上げたのか、あるいは腹端を蹴ってその衝撃で糞を飛ばしたのか不明です。
ハイスピード動画に撮るには飼育しないと難しそうです。

昔撮った成虫♀の脱糞映像はこちら




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