2011/01/08

パンを食すツヅミミノムシ(蛾)



2009年12月中旬

12 月に神社の境内で何気なく石をめくったらマダラマルハヒロズコガGaphara conspersa)の幼虫(別名ツヅミミノムシ)を見つけました。
ワラジムシなどと一緒に越冬していたのでしょう。
前回は飼育に失敗してしまったのですが、パンを与えて育てられると聞いたので半信半疑で試してみました。
生の食パンをちぎって与えると、早速元気に食いついてくれました。
後で見ると食パンのあちこちにツヅミミノムシが潜り込んで齧った小さな穴が空いていました(食痕)。
日を改めて撮った後半の映像で、白いパンの上に黒く小さな粒々が見えます。
これは糞なのだろうか。
それとも蓑に付いていたゴミが落ちただけかな?
パン食う虫も好きずき。

【追記】
ツヅミミノムシの食性は謎に包まれています。
野外でツヅミミノムシは蟻の巣の近くでよく見つかり、アリを食べるのではないかと噂されています。
ありんこ日記 AntRoomさんのブログで素晴らしい報告を見つけました。


【追記2】
本種の食性について、小松貴『虫のすみか―生きざまは巣にあらわれる (BERET SCIENCE)』p29に詳しい解説が書いてありました。
(マダラマルハヒロズコガの幼虫は)他の昆虫の死骸など、動物質のものを中心とした、さまざまな有機物を餌にしているようです。このガの生育にとってアリの存在は必須ではありませんが、アリの巣の周辺にはアリの食べ残しやゴミなどが捨てられているため、必然的にこのガの幼虫が多く見られるのでしょう。過去には、このガの幼虫の体内からアリの残骸が見つかっていることから、アリを捕食しているのではとの見方もありました。どうやら彼らは、アリを含めアリの巣周辺で死んだり死にかけた虫を見つけ出して、それを食い漁っているようです。

【追記3】
鈴木知之『朽ち木にあつまる虫ハンドブック』でマダラマルハヒロズコガを調べると、
朽ち木に営巣するアリの巣内や、アリの行列の近くにひそんでアリを捕食するものと思われる。飼育下ではアリのマユを好んで食べた。(p77より引用)
もう一度飼育して私も試してみたくなりました。

オオスズメバチ巣の発掘・後編




2009年12月上旬
(つづき)
オオスズメバチVespa mandarinia japonica)巣の発掘と並行して、計6匹の♀を採集しました。
巣盤に隠れている蜂も居ました。
どれも前回(11月下旬)ここで採集した一匹の新女王♀(体長40mm)よりやや小さいので(体長32〜36mm、平均33.7mm)、ワーカーの生き残りなのだろう。
映像には触角の長い♂も一匹登場しますが(4:01-5:15)、これはいつの間にか逃げてしまったようで採集出来ませんでした。 

巣は5層の巣盤が重ねられ数本の支柱で連結されたハニカム構造です。
手で持ち上げると、上三層と下二層に分離してしまいました。
育房は全て羽化済みで空。
育房の底には前蛹が排泄した糞が白く固まっていました。
この糞も紙製の巣を強化する助けになっているのだそうです。
6角形の育房は古い巣盤(上段)では一辺(=半径)が7mm、新しい巣盤(下段)では一辺が9mmでした。
生殖虫(雄蜂および新女王)の育房は大きく深いのだろう。
上から二段目の巣盤では大小の育房が別区画として並存していました。
育房数は上の段から順に(作られた順に)130, 255, 129, 149, 253室の計916室でした※。 
ただし上段および辺縁部が崩れているため、かなり誤差があります。
※ 北海道大学図書刊行会 『スズメバチはなぜ刺すか』 p279によると、本種の巣盤数は4~10、育房数は3000~6000とのこと。
今回の巣は小さい部類に入るようです。





オオスズメバチの巣の発掘は初めてなのでかなり緊張しましたが無事に終わり、とても良い経験になりました。
次回はもっと安全策を講じて手際よくやれると思います。

今回採集した♀6匹の標本はこちら。



オオスズメバチ巣の発掘・前編



2009年12月上旬

杉林で見つけたオオスズメバチVespa mandarinia japonica)の巣が今度こそもう解散した頃かと思い発掘を始めたら蜂が帰ってきて仰天。
慌てて巣の側から離れました。
雪国で12月上旬なのに未だ活動しているとは知りませんでした。
幸い寒さで(気温5~6℃)蜂の攻撃性はすっかり影を潜めていました。
巣の状況が激変しても何とか帰巣できるということは、視覚的な記憶に頼るだけでなく自分の巣の匂いなどで判るのだろうか。
掘り起こされた巣を離れる際は健気にも定位飛行をして位置を覚え直しているようです。
蜂は壊された巣を修復する気力も無いようで、近くの杉の木に飛んで行っても巣材を集めることはなく体を休めているだけでした。
一旦巣を掘り始めたらもう作業を止めるわけにはいきません。
危ないので仕方なく、蜂が帰巣する度に一匹ずつ捕獲することにしました。
警戒(攻撃)フェロモンを出されると困るので、生け捕りにした蜂は巣から離れた場所に隔離しました。
この巣は折れ重なった倒木の下に営巣していました。
地中に蔓延る根っこが邪魔で持参したスコップは役に立たず、寒いのに汗をかきつつ手で掘り進めました。
むしろノコギリが欲しかったです。
巣全体を覆っていたはずの外被は見当たらず、巣盤が剥き出しでした。
コロニー末期になると外被のメンテナンスも疎かになり雨水で崩れ落ちてしまうのだろうか。(※追記参照)
増築を重ねた巣全体の形状がかなり歪なのは、周囲にある倒木などの障害物に成長を阻まれたせいでしょう。
5層あった巣盤もきれいな円形ではありませんでした。
湿った巣には少しカビが生え、独特の臭気もありました。
よく見ると何か寄生虫(巣虫?)らしき幼虫の死骸が大量に付着していました。
後編に続く)


※【追記】
『都市のスズメバチ』p22によると、オオスズメバチの巣の外皮は薄く底が抜けているらしい。
 


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