2024/10/05

ナツメの種子散布者としてのホンドタヌキ

 



2023年11月下旬・午後12:25頃・晴れ 

平地のスギ防風林に残されたホンドタヌキNyctereutes viverrinus)の溜め糞場wbc1を定点観察に来ました。 
まるでノウサギの糞のようなコロコロと丸い小さな糞粒が目に付きました。 
時間が経つとタヌキの溜め糞にケカビが生えてきます。 
新鮮な糞塊にベッコウバエ♂(Dryomyza formosa)が来ていました。 
交尾相手の♀を待ち伏せしているのです。(動画公開予定)

イチョウの種子(銀杏)やカキノキの種子が消化されないまま糞と一緒に排泄されていたのは前回と同じです。 
今回は、見慣れない茶色の果皮がほとんど消化されず大量に排泄されていました。 
この時期のタヌキがよく食べている旬の果物は何でしょう? 
私には心当たりがありました。 
近くの民家の庭に植栽されたナツメの果実ではないかと予想したのです。 
(その後、近所の別な地点でもナツメの若い庭木を見つけました。) 





早速、溜め糞場wbcから直線距離で約800m離れたナツメの木を見に行ってみると、完全に落葉した後の枝先に熟した果実が実っていました。 
ナツメの果実は核果に分類されるのだそうです。 
木の下には大量の落果が散乱しています。 
動画に撮りながら、ナツメの落果を手でほぐして、中に含まれている種子を確認しました。 
ほぐした茶色のナツメ果皮が、タヌキの溜め糞場で見つけた未消化物とそっくりです。
ホンドタヌキはナツメの落果(核果)を少し咀嚼しただけでほぼ丸呑みしているようで、消化が悪く、ほとんどそのまま糞と一緒に排泄されていました。

このときは種子を捨ててしまいましたが、後日に再訪してナツメの種子を改めて採集しました。 (写真公開予定)
今後はタヌキの糞分析で見つけた未消化の種子がナツメかどうか、詳細に比較することができます。 

ナツメの種子はタヌキによって被食型の動物散布されていることが分かりました。 
やがてタヌキの溜め糞場からナツメが芽生えてくるでしょう。


今後の課題は次の3点です。
今回はナツメの果皮だけで判断してしまいました。
まず何よりも、タヌキの溜め糞にナツメの種子が含まれることをしっかり確認しないといけません。 (※ 追記参照)
もう一つは、ナツメの木の下で秋に落果を夜な夜なタヌキが拾い食いに来るかどうか、トレイルカメラを設置して確かめる必要があります。
タヌキ以外の野生動物もナツメの種子散布を助けているかもしれません。
最後に、溜め糞から回収した種子の発芽能力を調べたら完璧です。


※【追記】
2023年12月上旬
少し離れた別の溜め糞場ph:スギ倒木横で撮った写真に、未消化のまま排泄されたナツメの茶色い果皮および両端の尖った細長い種子が写っていました。





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ヤマハッカの花蜜を求めて飛び回るイチモンジセセリ【FHD動画&ハイスピード動画】

 

2023年9月下旬・午前11:35頃・晴れ 

里山の山腹に咲いたヤマハッカの群落で複数のイチモンジセセリParnara guttata)が訪花していました。 
翅を閉じたまま口吻を伸ばして吸蜜しています。

イチモンジセセリがヤマハッカの花から飛び立つ瞬間を狙って240-fpsのハイスピード動画でも撮ってみました。(@0:54〜) 
素早い羽ばたきと滑空を交互に繰り返す飛翔のリズムが独特です。


減少率が顕著な鳥と蝶のリストが掲載されていて、私のフィールドでの体感にもほぼ合致していたのですが、その中にイチモンジセセリが含まれていたことに衝撃を受けました。
イチモンジセセリなんか、ごくごくありふれた普通種で、虫好きは誰も見向きもしない蝶だったのに、まさか希少種になる日が来るとは思いもよりませんでした。
生物多様性が急激に減少し、ますます単調で貧困な生態系になりつつある現状に危機感を覚えます。
今の子供が昆虫採集やバードウォッチングに目覚めても、(周りの大人が必死でお膳立てをしてあげないと)ちっとも面白くないだろうなーと同情してしまいます。
次世代の虫好きや鳥好きが育たないのも悪循環の一因です。

2024/10/04

越冬用の巣穴入口からアクセストレンチを四方八方に掘りまくる晩秋のニホンアナグマ【トレイルカメラ:暗視映像】

 



2023年11月下旬 

シーン0:11/23・午後12:14・晴れ・気温26℃(@0:00〜) 
明るい時間帯にたまたま撮れた現場の様子です。 
平地の落葉した二次林でニホンイタチMustela itatsi)の越冬用営巣地をトレイルカメラで見張っています。 


シーン1:11/27・午前1:13・気温0℃(@0:04〜) 
冷え込む深夜に巣穴Rから勢い良く外に出てきた個体aが巣口Rを見下ろして、巣内の個体bと対峙しています。 
アナグマaは巣口Rの縁を前脚で引っ掻いて掘り始めました。 
なぜかアクセストレンチを新しい方向に掘り始めたようです。 


シーン2:11/27・午前1:20・気温2℃(@1:04〜) 
独りで巣外に居るアナグマが、営巣地(セット)の広場で落ち葉の上に座り込みました。 
林縁でうつ伏せに寝そべると、前脚で地面を掻き始め、そのまま横臥姿勢になりました。 
観察歴の浅い私にはなんとも解釈に苦しむ行動なのですが、掘ったばかりのひんやりした土に触れると気持ち良いのかもしれません。 
しかし暑い夏ならともかく、寒い晩秋の深夜にやることではないと思うのですが…? 


シーン3:11/27・午前1:20・気温2℃(@1:32〜) 
ようやく横臥から起き上がると、新たなアクセストレンチを掘り始めました。 
掘り返したばかりの黒土の上に腹這いになりました。 


シーン4:11/27・午前1:26(@2:31〜) 
巣口Rから外に向かって、なだらかなスロープを作ろうとしています。 
作業の合間に身震いしました。 
座り込んでしばしの休息。 


シーン5:11/27・午前1:32(@3:18〜) 
左から急いで巣口Rに戻ってきたアナグマが短い鳴き声を発しました。 
※ 鳴き声が聞き取れるように、ここだけ動画編集時に音声を正規化して音量を強制的に上げています。 

巣穴Rに入りかけたものの、アクセストレンチをまた別方向に掘り始めました。 


シーン6:11/27・午前1:36・気温4℃(@4:18〜) 
アクセストレンチを掘り続ける個体と、それを巣R内から見守る個体(門衛?)が対照的です。 
アナグマの社会(家族群)では分業がしっかり別れているのでしょうか。 
穴掘りはヘルパー♂の担当なのかな? 
体型や顔つきは確かに♂っぽいのですが、越冬前で丸々と太っているために、分かりにくいです。 
巣内で見守る個体の顔つきは♀っぽいのですが、顔馴染みの母親♀(右目<左目)ではありません。(@4:26) 
穴掘り作業を途中で交代することはありませんでした。 


シーン7:11/28・午前7:28・気温3℃(@5:19〜)日の出時刻は午前6:29 
2日後の明るい朝にたまたま撮れたセット(営巣地)の様子を最後にお見せします。 
晩秋の林床は落ち葉に覆い尽くされているのですが、巣口Rの周囲だけが掘り返されて、黒土が露出しています。 


【考察】 
アナグマのアクセストレンチというのは本来、巣穴の奥から掘り出した土砂を外に捨てる際に自然に形成されるスロープや溝のことです。 
今回はトンネル(巣穴)を深く掘る土木工事はしないで、表土を耕すようにアクセストレンチの拡張整備だけに専念していました。 
巣口Rからアクセストレンチを放射状に(四方八方に)伸ばして掘りました。 

巣材(寝床)として使う落ち葉の搬入に続いて、これから深い根雪が積もる前の冬越し準備だと思うのですけど、一体どういう意味があるのか、私にはさっぱり分かりません。 
我々ヒトが野営(キャンプ)する際には、テントを張ってから四方に排水用の溝を掘るのが鉄則です。 
それに対して、アナグマのアクセストレンチが排水を考えて掘られているとは思えません。 
巣口付近が深いすり鉢状になると、大雨が降ったときや春の雪解けで巣内に浸水するのではないか?(まるで城の水攻め)と老婆心ながら心配になります。 
巣口付近を予め整地しておかないと、厳冬期の吹雪が吹き荒れる荒天時に変な吹き溜まりができてしまうのかもしれません。 

タヌキやテン、イタチなどの部外者がセットを訪問することがあまりにも多いので、アナグマが落ち着いて越冬できるように、巣口付近の表土を掘り返してマーキングの匂いを消していた、という可能性はどうでしょう?



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