2022/06/11

凍った雪面を夕方に散歩する雪国のイエネコ

 

2022年2月中旬・午後17:10頃・晴れ

表面がガリガリに凍った雪面にイエネコFelis silvestris catus)が立ち止まっていました。 
キジトラの去勢♂です。 
猫は体重が軽いこともあり、この雪質では足が沈みません。

尻尾の先を左右にくねらせながら、前方の一点を見つめています。 
何か獲物を狙っているのでしょうか? 
猫の目線の先にある細い水路の中でたまにカルガモが隠れて休んでいることがあるのですけど、今回は撮影アングルが悪くて私からは見えませんでした。 
実は撮影を始める前からナーゴ、ナーゴ♪と猫が頻りに鳴く声がしていたので、もう1匹の猫がどこか近くに潜んでいるのかもしれません。

やがてキジトラ♂は雪原をゆっくり歩き始めました。 
ヒトが歩いた足跡が雪に深く潜ったまま凍って凸凹しており、猫にとっては歩きにくそうです。 
画面手前から別個体のネコの鳴き声がして、キジトラ♂は振り返りました。 
手前の落葉樹の枝が邪魔で肝心の猫にピントがなかなか合いません(前ピン状態)。

キジトラ♂は雪原に隣接する駐車場にようやく到達しました。 
雪原から駐車場に降りる際に後ろ姿の股間に去勢された睾丸の跡がはっきり見えました。 
駐車場はきれいに除雪されていて、舗装路が露出しています。
キジトラ♂は駐車場を右へトコトコ歩いて行きます。 
手前の立木の陰に隠れてから猫の姿を見失ってしまいました。 
ここで私は撮影を終えたのですけど、実はキジトラ♂は逆方向に引き返して隣の雪原に侵入していました。 
私がこっそり隠し撮りしていることにキジトラは気づいていて、フェイントをかけたのではないか?という気がしてなりません。
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「猫は炬燵で丸くなる」と童謡で歌われるように、猫は寒がりだという固定観念をもつ人が多いかもしれません。 
しかし雪国の猫は意外にたくましくて、昼も夜も厳冬期の雪原を元気に歩き回ることが分かりました。 
これは若い猫だからこそで、老いた猫は億劫(寒がり)になって雪原を巡回しなくなるのかもしれません。

2022/06/10

ガガンボを捕食する雪国のイオウイロハシリグモ(蜘蛛)

 

2021年12月上旬・午後12:15頃・晴れ 

山麓を流れる用水路(※)沿いの土手にうっすらと雪が積もりました。 
※ 暗渠でしかも、この時期は水が流れていません。
未だ根雪になる前なので、ところどころ緑の草が雪に埋もれずに顔を出しています。 
パッチ状の草の上でイオウイロハシリグモDolomedes sulfureus)が日光浴していました。 
右の第2および第3歩脚が根元から欠損した個体で、おそらく亜成体と思われます。 

イオウイロハシリグモの目の前に大型のガガンボの一種が飛来し、まるで吸い寄せられるようにクモの近くの雪上に着陸しました。 
まずは1/5倍速のスローモーションでご覧ください。 
その後に等倍速でリプレイ。 
このガガンボの種類を見分けられる方がいらっしゃいましたら、教えて頂けると助かります。 

ガガンボは翅を畳むと、草の葉をよじ登り始めました。 
その振動を感知したイオウイロハシリグモは、獲物に素早く駆け寄ってあっさり捕獲に成功しました。 
これは待ち伏せ型の狩りと言えるでしょうか。
電光石火の早業をまずは1/5倍速のスローモーションでご覧ください。 
その後に等倍速でリプレイ。 
12年前も昔にイオウイロハシリグモを飼育したことがあるのですけど、当時も狩りの瞬間は観察できておらず、今回が初見です。 
クモは触肢と第1脚で獲物を素早く押さえ込んでいます。 
ガガンボの細長い腹部に噛みついて毒液を注入し、吸汁を始めたようです。 
今回の狩りでは、腹端の糸疣から絹糸を出して獲物を簀巻きにすることはありませんでした。

ガガンボの長い翅が邪魔で持て余しています。 
クモはガガンボの翅を食事中に噛み切って捨てるかと思いきや、クシャクシャに丸めながら吸汁を続けました。 

後半は撮影アングルを少し変更しました。 
イオウイロハシリグモの大顎と触肢がかすかに動いているものの、背側から見下ろすアングルでは小さく丸めた獲物の状態がよく見えません。 

クモは越冬する前に、凍結防止のため絶食して胃腸を空っぽにするはずです。 
雪が積もる時期になっても未だ食欲があるとは意外でした。 
長い冬越しに備えて、獲物をたくさん食べて脂肪を蓄えているのでしょう。 

食餌中もクモは太陽に対して正対し、直射日光をしっかり背中に受けています。 
周囲は残雪ですから、日光浴で体温を上げているのでしょう。 
クモの体温が上がれば消化活動も活発になるはずです。
撮影直後に気温や雪面の温度を測ったのですが、その値を記した野帳を紛失してしまいました…。 



2022/06/09

初冬の山道・杉林でタヌキの溜め糞場を探し歩く

 

2021年12月上旬・午前11:50頃・晴れ 

未だ根雪になる前の初冬にスギ林の山道を歩いてホンドタヌキNyctereutes viverrinus)の溜め糞を探します。 
とは言ったものの、本当は過去に見つけた溜め糞場LのGPS座標を頼りに現場へ向かいました。 
その道中を動画を撮りながら歩いてみます。 
スギ林と射光の組み合わせが絵になりますね。 
林床のところどころにうっすらと積もった雪は溶けつつあります。 
山道で迷わないように、目印のピンクリボンが所々にぶら下げられています。 
山道の横に生えていた杉の木が根こそぎ倒れているのは台風のせいでしょうか?

実は撮影に気を取られた私はうっかり溜め糞場Lに気づかず通り過ぎてしまい、引き返してからTake2を撮り直しました。 
里山の斜面をトラバースする細い山道の途中に大量の糞塊が残されていました。 
糞をうっかり踏んづけてしまわないように、山歩きの際は下をよく見て歩きましょう。
最近降った雨や雪の水分を吸って、糞の形はすっかり崩れています。 
雪が降って気温が低くなると、ベッコウバエなどの昆虫も糞には全く来なくなります。 

この時期のタヌキの糞には大量の柿の種子が未消化のまま混じっています。 
カキノキの熟した果実(熟柿)を食べる際に大きな平べったい種子も丸呑みしているのです。
食後のタヌキはわざわざ遠くの決められた溜め糞場まで来て排泄する訳ですから、カキノキの種子散布を助けていることになります。
春になれば柿の種から実生が芽生えることでしょう。
溜め糞場の土壌は植物にとって栄養豊富ですけど、この場所は常緑の杉林なので林床は日照不足となり、カキノキの生育は期待できそうにありません。

タヌキの糞というと「とにかく臭い!」「独特のタヌキ臭」などと本によく書かれているのですが、私の経験ではそこまで臭いと感じたことがありません。 (私の嗅覚に問題があるのかと心配になります。) 
ヒトの残飯に依存した不健康な食生活を送る都会のタヌキの糞が臭いのではないか?と秘かに疑っています。 
当地のタヌキの糞があまり臭くないのは、いつも良い物(自然の恵み)をバランス良く食べているからではないか?と贔屓目に思ってしまいます。 
肉食のメニューが多くなれば糞の匂いはきつくなるのかもしれません。
この仮説を真面目に検証するのなら、糞の内容物を徹底的に調べてタヌキの食性(メニュー)を調査しないといけません。
あるいは微生物など分解者の活動が当地では特に活発なのかな?(気温の低い冬も臭くないのはなぜ?)

本当はこのタヌキの溜め糞場Lにもトレイルカメラを設置して監視したいところです。
しかし、この山道は登山客の往来が結構多いので、カメラを盗られるなどのトラブルが心配で諦めました。 

今回撮った動画の通りにタヌキが歩いて溜め糞場に通っているとは限りません。 
そもそも杉林にタヌキの餌は少ないはずですから、雑木林や沢に向かう途中にスギ林を通り抜けているだけだと考えられます。 
また、夜行性のタヌキは必ずしもヒトが作った山道に忠実に沿って歩いているとは限りません。 
歩きやすい山道の途中から外れて斜面を自由に歩き回るかもしれません。 
もっと雪が積もれば足跡を追跡することで、タヌキの巡回ルートを調べることができそうです。 

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