2020/11/07

羽化中のガガンボを捕食するザトウムシからアオゴミムシが獲物を強奪

 

2020年8月上旬・午後15:40頃・晴れ 

水が干上がった小川の土手でザトウムシの仲間が白っぽいガガンボの一種に噛み付いて捕食していました。 
何となく当てずっぽうですが、この白っぽいザトウムシはモエギザトウムシLeiobunum japonicum japonicum)ですかね? 
白っぽい体のガガンボは未だ生きていて、身を捩って必死に暴れています。 
餌食となったガガンボと一緒に何か細長い物を引きずっています。 
この謎の物体が何なのか私にはしばらく分からずに悩みました。 
ガガンボと糸で絡まっているようにも一瞬見えたので、近くのクモの巣にかかっていたイモムシ(幼虫)とガガンボを一緒にザトウムシが盗んできたのか?と想像したりしました。 
しかしよく観察すると、ガガンボ成虫が細長い蛹から羽化中なのだと分かりました。(※追記参照) 
引きずっていた細長い褐色の物体はイモムシではなくて、ガガンボの羽化殻(抜け殻)でした。 
ガガンボ成虫の脚が未だ完全に蛹から抜け切っていない無防備な状態で捕食者に襲われたようです。 

そこへアオゴミムシChlaenius pallipes)が右から駆け寄って来ました。 
いきなりガガンボの腹部に噛み付くと、後ろに引っ張り始めました。 
ザトウムシとの綱引きにあっさり勝つと、獲物を更に後ろへ引きずって運んで行きます。 
ガガンボの羽化殻も一緒に引きずられていきます。  
アオゴミムシは、少し離れた落ち葉の上で強奪した獲物を捕食開始。 

視力の弱いザトウムシは、急に獲物が消えて戸惑っているようです。 
長い歩脚で辺りを探りながら泥棒を追いかけました。 
食事中のアオゴミムシに近づくと、ガガンボの羽化殻やアオゴミムシに足先で触れてしばらく調べています。 
ザトウムシはようやく状況を理解したらしく、獲物を諦めて急に逃げ出しました。(戦意喪失) 
非力で武器も持たないザトウムシは、アオゴミムシと戦って獲物を取り戻す術が無いのでしょう。  

一方、獲物をまんまと強奪してきたアオゴミムシも無事では済みません。 
見慣れないアカアリ(種名不詳)のワーカー♀が何匹も集まってきたのです。 
早速、ガガンボの腹端に噛み付いているアカアリがいます。(やや大型の個体は兵隊アリ?)   
急にアオゴミムシがガガンボを咥えて運び始めました。 
集まってくる厄介な赤アリを嫌がったのでしょう。 
土手から転がり落ちると、ようやくアリから逃れて、落ち着いて食事を再開しました。  

河畔林を横切る夏の小川で人知れず壮絶な弱肉強食のドラマが繰り広げられていて、静かな感動を覚えました。 
この夏で一番思い出深い事件簿でした。



※【追記】
   
↑【おまけの動画】
「ガガンボ?羽化」byあたしまろ氏 
8倍速の見事なタイムラプス映像です。 
羽化が完了するまで無防備な時間が30分以上続いたそうです。
ガガンボの種類によっては水中で羽化するものもいるそうで(↑参考動画 by Parahucho氏)、ガガンボの世界も多様で奥が深いですね。



【追記2】
実は1年前の早春に、この小川で産卵するガガンボを観察しています。

▼関連記事

今回、周囲の土手をよく探していれば、他にも羽化中のガガンボを発見できたかもしれません。 
私はガガンボの生活史について全く無知だったのですが、断片的に少しずつ分かってくると嬉しいものです。



オオウバユリの花に集まり獲物を待ち伏せる3匹のニホンアマガエル

▼前回の記事 
オオウバユリ種子の風散布を実演してみる

2020年8月上旬・午後・晴れ 

スギ(杉)の林床に自生するオオウバユリの群落に定点観察に通っていると、待ちわびた花が梅雨明けでようやく咲き始めました。 
白い花を嗅ぐと微かな芳香がします。 
水平に伸びた花筒の根元にニホンアマガエルHyla japonica) が座っていました。 
香箱座りで喉をヒクヒクさせています。 
別の日(3日後)に見つけた個体も含めて計3匹のニホンアマガエルが別々のオオウバユリの花に座っていました。 
これが偶然とは考えられません。 
オオウバユリの花は丈の高い茎の上部につきますので、アマガエルはわざわざ垂直の長い茎をよじ登ってきたことになります。 
オオウバユリに訪花する昆虫を狩るために、アマガエルは虎視眈々と待ち伏せしていると思われます。 
しかしアマガエルが座っている向きはまちまちで、必ずしも開花した花の方を向いているとは限りませんでした。 
花とは逆に茎の方に向いている個体は、飛来する訪花昆虫ではなく茎を登ってくる徘徊性昆虫を狙っているのでしょうか? 
周囲に合わせた体色(保護色)は個体によって異なり、くすんだ緑灰色の個体と黄緑の個体がいました。  

アマガエルを私が人差し指で軽くつつくと、オオウバユリの花から林床に跳び下りました。 
華麗な跳躍シーンを1/5倍速のスローモーションでリプレイ。
予めアマガエルの体の何処かに個体標識(マーキング)  してから飛び降りさせて、再びオオウバユリの花まで登り返すかどうか確かめたら面白そうです。

果たして、オオウバユリにはどんな昆虫が訪花するのでしょうか? 
こんな薄暗いスギ林の中に来る虫は少ない気がします。 
日当たりが悪いせいか、黄変しているオオウバユリの葉も多いです。 
葉は虫食い穴(食痕)だらけで、字書き虫の仕業と思われる斑模様も見られました。  

つづく→ニホンアマガエルがジャンプをためらう理由とは?【HD動画&ハイスピード動画】
ニホンアマガエルa@オオウバユリ花
ニホンアマガエルa@オオウバユリ花・全景
ニホンアマガエルb@オオウバユリ花
ニホンアマガエルb@オオウバユリ花・全景



【おまけ1】 
ジョロウグモ♀♂(Nephila clavata)の幼体がオオウバユリの花の下にひっそりと網を張っていました。  
これも訪花昆虫を待ち伏せする捕食戦略です。
ジョロウグモ(蜘蛛)@オオウバユリ花

【おまけ2】 
以下の写真は、同じ場所で7月下旬に撮影したオオウバユリの蕾です。

2020/11/06

スキバホウジャク(蛾)を吸汁し獲物を抱えて飛ぶシオヤアブ♀【HD動画&ハイスピード動画】

 

2020年8月上旬・午後13:05頃・晴れ 

河原の土手の草むらで獲物をしっかり抱きしめたシオヤアブ♀(Promachus yesonicus)がススキの葉に止まっていました。 
餌食となったのはスキバホウジャクHemaris radians)でした。 
近似種クロスキバホウジャクと迷いましたが、「こんちゅう探偵団」さんのブログ記事に書いてあった識別点が参考になりました。
近似種のスキバホウジャク[Hemaris radians]に似るが、クロスキバホウジャクの後翅基部付近には黄褐色の色彩は見られない。 またクロスキバホウジャクの上翅外縁の茶色の縁取りは内縁鋸歯状にはならず、スキバホウジャクの縁取りよりも細い事などで区別する事が出来る。 クロスキバホウジャクは淡緑色で、腹部第4・5・6環節背面は黒色、これより後方は黄色。
シオヤアブ♀は、獲物の背に馬乗りになり首元に吸い付いていました。 
蛾はもう死んでいるようで、翅を広げたまま動きません。 
獲物は死ぬまで暴れたのか、シオヤアブの体は蛾の白い鱗粉で汚れています。 
シオヤアブ♀が自分の体よりも大きな獲物を狩るとは驚きです。 
飛翔性能に優れたスキバホウジャクを一体どうやって仕留めたのか、狩りの瞬間を見逃したのが残念です。 
ホウジャク類は気温の高い夏の昼間でも準備運動しないと飛び立てないのかな? 

 獲物を吸汁するシオヤアブ♀は忙しなく腹式呼吸しています。 
吸汁しながら腹端をヒクヒクし始めたので脱糞するかと期待したものの、何事も起こりませんでした。  

シオヤアブ♀が飛び立つ瞬間を狙って240-fpsのハイスピード動画でも撮ってみました。(@1:42〜) 
羽ばたきを始めると脚で掴んでいたススキの葉を離し、飛び立ちました。 
飛翔時は腹端を上に反らしてやや海老反り姿勢になりました。(バランスを保つため?) 
獲物をしっかり抱えたまま、周囲の雑草の茂みを避けつつ飛び去りました。
重くて空気抵抗も大きい荷物なのに、獲物を軽々と運んで行くシオヤアブ♀のパワー(飛翔力)に驚きます。

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