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2020年1月上旬・午後13:20頃
川沿いの住宅地でノスリ (Buteo japonicus )と
ハシボソガラス (Corvus corone )が喧嘩していました。
逃げてきた1羽のノスリが民家の屋根の八木式アンテナに止まりました。
追いかけてきた2羽のハシボソガラスが、ノスリの頭上から代わる代わる蹴りつけるような素振りをして嫌がらせをしています。
カラスが繁殖開始するには未だ少し時季が早いと思うのですが、既に番 ( つがい ) を形成した♀♂ペアが縄張りから天敵の猛禽類を追い払っているのでしょう。
カラスにモビング(擬攻撃)されたノスリは、アンテナからまた飛び立つと逃げ出しました。
この間、鳴き声は聞き取れませんでした。
※ 音量を強制的に上げるために、動画編集時に音声を正規化しています。
ノスリは車道の上空を低く飛んで渡ると、近くに立つ電柱の天辺にフワリと止まりました。
なぜかカラスはもう追いかけて来ません。
逃げたノスリをハシボソガラスが見失ったとは思えないので、深追いしなかったのには何か理由があるはずです。
ノスリが横断した車道がカラスの縄張りの境界線になっているのかな?
モビングからの飛翔シーンを1/5倍速のスローモーションでリプレイ。
飛んでいるノスリを注意深く見ると、左翼の後縁の羽毛(初列風切)が抜け落ちています。
換羽からの回復期間が私には分からないのですが、この特徴は個体識別に使えそうです。
だとすれば、昨年の春から夏にかけて近くの河畔林で営巣していたノスリ親鳥(性別不明)の可能性が高そうです。
▼関連記事(半年前の6月中旬に撮影)
初列風切羽を一部欠いたノスリの帆翔(野鳥)
ノスリも留鳥として真冬の川辺りで元気に暮らしていることが分かり、嬉しい出会いでした。
実は直前にこのノスリは、暖冬で雪が溶けた河川敷の枯草地から飛び立ったので、野ネズミなどを狩っていたと思われます。(動画撮影が間に合わず残念)
▼関連記事(7年前に別の地域で撮影)
ノスリの狩り・捕食と飛翔(冬の野鳥)
つづく→電柱から飛び立ち屋根に止まるノスリ(冬の野鳥)【HD動画&ハイスピード動画】
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2020年1月上旬・午後14:55頃・くもり
冬の川に集結したオナガガモ ♀♂(Anas acuta )はあまりにも大群なので、求愛行動を観察したくても、どの個体に注目すべきか目移りしてしまいます。
しばらく眺めていると、複数の♂に囲まれて追い回されている地味な♀に注目すれば良いことが分かりました。
この動画では、川面を遊泳する1羽の♀に計8羽の♂が取り囲みながら並走し、求愛誇示を繰り返してしています。
この状態を「囲い込み」と呼ぶそうです。
『動物たちの気になる行動〈2〉恋愛・コミュニケーション篇 』という本(ポピュラー・サイエンス・シリーズ)に収められた、福田道雄『人前で求愛ディスプレイをするオナガガモ』がとても参考になりました。
囲い込み行動はオナガガモだけにみられるもので、他種のカモ類は行いません。 オナガガモが多数飛来した水辺で、1〜2月ごろに注意深く観察していると、数羽以上の♂が一羽の♀を囲むようにして、追いかけながら泳いでいく光景がよくみられます。(中略)「囲い込み」が始まると、集まったメンバーはほとんど入れ替わることなく続けられます。その周囲に浮かんでいるカモたちは、この集団にほとんど関心を示さず、この一団だけがまとまって群れの中を移動して行く ので、よく目立ちます。そしてこの集団の♂たちが、♀に対して求愛のディスプレイを繰り返し行います。(p27より引用)
囲い込む♂同士で頻繁に牽制しあい、嘴でつついて激しく攻撃しています。
まずは1/5倍速のスローモーションでご覧ください。
その後に等倍速でリプレイ。
♀の前に居た1羽の♂aが横のライバル♂bを急に嘴でつついて攻撃し、追い払いました。(@0:11)
やられた方も珍しく反撃し、大喧嘩になりました。
ライバル♂bが堪らず逃げ、♀から少し離れました。
喧嘩直後の♂2羽はともに尾羽根を左右に振りました。
続けて勝者♂aが川面で水浴びを始めました。(儀式的水浴びに続けて転移性羽ばたき)
その隙をついて別の♂cが♀に向き直ると接近し、首を伸ばして求愛しました。(漁夫の利?@1:03)
怒った♂aはライバル♂cの右脇腹を嘴で激しくつつき、そのまま相手を嘴でグーッと押し続けました。(@1:13)
どうやら今のところ♂aが最も喧嘩に強く、♀の一番近くの位置を死守しているようです。
ところが、せっかく♂aの優位性が決まりかけたのに、急に群れが一斉に飛び立ちました。
1/5倍速のスローモーションでリプレイしてみると、初めに♀が飛び立ち、♂も慌てて後を追って飛び去ったことが分かりました。
撮影に集中していた私は、群れがどうして急に飛び立ったのか理由が分かりませんでした。
川岸の通行人に警戒したのかと思ったのですが、その後も囲み込み求愛からの飛翔という行動を川のあちこちで何度も観察したので、どうやら♀が自発的に飛び去ったのだろうと分かりました。
本にもそのように書いてありました。(下線を引いたのは私しぐま)
オナガガモの代表的なディスプレイには、つぎのものがあります。ただし多くの場合、一つのディスプレイは単独で行われることはなく、組み合わせられたり、一連の行動として行われます。
a あご上げ ― 攻撃と逃避の入り交じった気分を示すもので、♂・♀共に幼鳥時から行われる、生活するうえでの基本的なディスプレイです。
b げっぷ ― ♀にマウントしようとする意図が込められていて、♀の後方に近づいた♂がよく行います。嘴を引き、上げた頭を下げるときに「ピュー」という笛声を出します。
c 水はね鳴き ― 「げっぷ」のときよりも、♀から離れた位置で行われ、しかも、♀に対してどの方向からも行われます。前方に伸ばした嘴を引き寄せるときに嘴の先で水をはね上げ、頸(くび)が突き上げられたときに笛声を出します。
d そり縮み ― 「水はね鳴き」の後に続いて行われる、セットになったディスプレイです。オナガガモやコガモでは、引き上げられた尾の側面にある、下尾筒(かびとう)のクリーム色の羽部分が視覚的に強調されます。このディスプレイの後、目当ての♀のほうに嘴を向けます。
また、このようなディスプレイがみられる水辺では、「囲い込み」の一団が、♀を追って飛び立ち、飛行する光景もみられます。よく観察すると、♂たちは飛びながら、頸(くび)を動かしたり、胸をそらしていて、飛行時用に変形した前記の求愛ディスプレイをしている ことがわかります。 (同書p27〜29より引用)
飛翔シーンのスローモーションを見直しても、♂が♀に求愛ディスプレイし続けていたかどうかまでは分かりませんでした。
飛び去る群れをしっかり流し撮りする必要がありそうです。
ビデオカメラも発達していない時代にここまで詳細に一連の求愛行動を記録した専門家(研究者)の観察眼に感服します。
大群の喧騒のせいで、求愛時の鳴き声(笛声)を聞き取ることはできませんでした。
オナガガモ観察歴の浅い私には、本に書いてあるほど細かい求愛行動はとても未だ見分けられません。
それでも野外でオナガガモの求愛行動が少しずつ分かってくると面白くなってきました。
♂にしつこくつきまとわれている♀が嫌がって(?)飛んで逃げても、♂は即座に飛び立ち一斉に追尾します。
どうしても擬人化したりヒトの心情を勝手に投影したりしがちですが、♀が本当に♂の求愛(セクハラ?)を嫌がっているかどうかは分かりません。
♀は交尾相手を決めるために何度も飛んで逃げて、付いて来れない♂を篩い ( ふるい ) 落としているのかもしれません。(♀による♂の品定め)
つづく→川面でオナガガモ♀を囲い込んで求愛する♂の群れ(冬の野鳥)その2:喧嘩に負けた♂が♀に八つ当たり