2012/09/29

カザリバ(蛾)が踊る軌跡【5倍速映像】



2012年7月中旬

美しく小さなカザリバCosmopterix fulminella、またはそ
の近縁種)が単独で、葉っぱの上でくるくると踊っています。
動画で長撮りし、5倍速の早回し映像にしてみました。

カザリバはふしぎなおどりをおどった!

頭部を中心に右回り、左回りで旋回したり、千鳥足で葉の縁を歩き回ったり、思わせぶりな動きだと思いませんか?
幼虫の食草はイネ科の笹類らしいので、踊る舞台は明らかに♀の産卵場所とは無関係です。
(イネ科の草は近くに幾らでも生えていますけど。)
たまたま止まった葉なら何でもOKなのかな?
葉裏に隠れたりせず、必ず目立つ表側で踊ります。

異性を誘引するために、視覚的なディスプレーと同時に性フェロモンを放出したりしているのだろうか?
しかし、結構長時間眺めていても、同種の蛾が引き寄せられて飛来することはありませんでした。

カザリバの踊りにどんな目的や意図、規則性が隠されているのか不思議でなりません。
ランダムウォーク(酔歩、乱歩)にしては葉の縁に執着していると思うのですが、どうでしょう?
とりあえず、蛾の動いた軌跡を描いてみたくなりました。

パソコン画面にトレーシングペーパーを被せてなぞる、という原始的な方法しかないのかな?
監視カメラ用の動体検知ソフトウェアがあるくらいですから、動画から対象物の動きを自動的に検出して軌跡を描くことは可能な気がします。
しかし、具体的に何を使ってどうしたらよいのか分かりません。
どなたかご存じの方は教えて下さい。

【メモ】検索キーワードのヒント:object tracking motion-tracking movie ubuntu OpenTLD


【追記】
『動物行動の映像データベース』に「カザリバ のデイスプレー」と題する動画が登録されていました。
投稿者によるコメントです。
カザリバのダンスを野外で見る機会があった。通常このようなデスプレーダンスは交尾行動に関係するものと思われるが、この小蛾の行動はそのようなものには思われない。明るい葉の上で動くことはムシヒキアブなどの絶好の目標になる。このような危険を冒してまでするダンスにはどんな意味があるのだろうか

英語版wikipediaで蛾のCosmopterix属を検索すると、以下のように驚愕の解説がありました。
あの踊りが成虫の探餌行動に関係する可能性なんて、想像すらしませんでした!
翅の模様も派手で目立つので、てっきり求愛の誇示行動(ディスプレー)だとばかり思い込んでいました。

For Cosmopterix gomezpompai a twirling behaviour has been observed by the adult. In this case the moth runs on the upper side of a leaf and simultaneously makes very fast circling movements. As soon as it comes across something unusual on the surface, like a spot, the circling slows down and is concentrated on that spot. It appears that it is feeding mostly on the dark brown spots (most likely a part of a bird dropping) on the leaf. Probably the moth is looking for nutrition. The twirling behaviour, without the possible feeding, has also been observed with Cosmopterix pulchrimella in Greece. This behaviour is described for Cosmopterix victor and also for a species of the family Gelechiidae. 

【和訳】Cosmopterix gomezpompaiの成虫は旋回行動することが知られている。葉の表側を走り回りながら非常に素早い回転運動を行う。葉の表面に斑点など何か異常を認めるとすぐに蛾の回転は遅くなり、その斑点に集中する。葉の上の焦げ茶色の斑点(おそらくは鳥糞の一部)を主に摂食しているようだ。蛾は栄養分を求めているのだろう。摂食を伴わない旋回行動はギリシアのCosmopterix pulchrimellaでも観察されている。この行動はウスイロカザリバCosmopterix victor)およびキバガ科でも報告がある。

葉っぱの表面を効率的にスキャンして探餌するための動きかもしれない、という話でした。
ただし今回のカザリバが静止中に何か摂食していたのかどうか、全く気づきませんでした。
葉に鳥糞が付いていなかったことは確かです。





踊り疲れたカザリバはときどき動かなくなります。
休憩中も葉裏に隠れたりしません。
アリが葉上を徘徊して休憩中の蛾に触れ、驚いた蛾が近くの葉に飛んで逃げました。
ザトウムシに狩られそうになり、慌てて飛び去る姿も目撃しています(映像なし)。
食事も取らず、踊るか休むかの二択というシンプル・ライフ

休んでいる蛾を接写すると、触角をぐるぐる回していました。





行水後に羽繕いするクロツグミ♀幼鳥? 【野鳥】



2012年7月中旬

山中の池で水浴びする野鳥を観察するため、この日も朝から張り込みました。
梅雨なのに水量が減ってきているのが心配です。
お世辞にもきれいな水とは言えず、私の目には泥水に見えます。
それでも野鳥にとっては貴重な水場なのでしょう。


一羽の鳥が岸の茂みの下にこっそり隠れて羽繕いしています。
残念ながら行水シーンは撮り損ねました。
嘴が黄色っぽい他は全体が地味な色の鳥です。
何という鳥か全く分かりませんが、何かの幼鳥でしょうか?
最後は飛び立つ訳でもなく、跳んで茂みの奥に姿を消しました。


いつもお世話になっている「日本野鳥の会 宮城県支部・やまがた画像掲示板」にて質問したところ、httさんより「クロツグミ♀の幼鳥ではないか」とご教示頂きました。
クロツグミTurdus cardis)は初めて撮れたことになります。








歩道の縁石からスズバチの泥巣を発掘

2012年9月上旬

農村部の歩道縁石の側面に大きな膨らみがありました(標高300m地点)。
独特の形状からスズバチ♀(Oreumenes decoratus)の作った泥巣のようです。
車道の左右は水田、砂利の駐車場、原っぱ、家庭菜園、墓地といった環境です。

農薬散布の影響を懸念してしまいますが、立派に営巣したようです。
営巣基の縁石側面は北西を向いていて、午後になると西日を直接浴びるようになっていました。



右側面

上から見下ろす

左側面
採寸してから発掘開始。
七つ道具のマイナスドライバーで泥巣の縁から少しずつ削り取ります。
大量の泥で全体が覆われた巣はカチカチに乾いており、堅牢な要塞と化しています。

多少雨が降っても泥が溶けたりしないようです(防水加工?)。
雪国で蜂の子が厳しい冬を越すための断熱材なのか、あるいは厳重な寄生虫対策かもしれません。

(長い産卵管を有する寄生蜂と激烈な軍拡競争を繰り広げた結果かもしれません。)
関連記事→「キアシオナガトガリヒメバチ♀羽化直後の蛹便排泄
外皮は薄皮を何重にも塗り重ねたような感じで、土がポロポロと剥がれてきます。





かなり苦労しましたが、最後に深く差し込んだドライバーをこじって泥巣全体を剥がす際は、メリメリっと繊維を剥がすような触感がありました。
各育房が繭の絹糸で裏打ちされているためでしょうか。
育房7〜8室は横向き(水平)に配置され、縦に並んでいます。
昨年11月に発掘したスズバチ泥巣とは異なり、中に寄生バエ(ドロバチヤドリニクバエ)の囲蛹は見られず、丸々と太った黄色い蜂の子の姿が見えます。
貯食物(イモムシ)を食べ尽くした後で前蛹になっていました。

泥巣を発掘した跡



泥巣全体の重量は、90g(採集2日後に計量)。

一匹のスズバチ♀が単独で作ったと思うと、恐るべき重量の建造物です。
上記の数値は乾燥重量です。
蜂が巣材として集めてくる泥玉は水で湿っていますから、実際に運搬した総重量(巣材+獲物・貯食物)は90gよりも多いはずです。

丸ごとの泥巣を干からびないよう容器に密閉して飼育してみます。
年内にスズバチの成虫が羽化するかと期待したものの、どうやらこのまま前蛹の状態で越冬するようです。
雪国の当地でスズバチの発生は年1化ではないかという気がしてるんですけど(個人的な印象)、未だしっかりと調べた訳ではありません。(年2化かな?)

つづく→「スズバチ蛹が泥巣の育房内で蠕動




【追記】
新開孝『虫のしわざ探偵団』という本を読んでいたら、スズバチの泥巣を採集する際の独創的なノウハウが書いてありました。
泥団子全体は固いけれど、表面はポロポロはがれる。泥団子を壊さないように工夫してはがす。水で薄めた木工用ボンドを泥に吸わせるように塗り、一晩置く。(水1:ボンド1)ボンドが乾いて固まったら、下に網を添え、コテを使い、泥団子をはがす。 (p42より引用)
次に泥巣を採集する機会があれば試してみようと思います。
泥巣の表面を固めてしまったのでは成虫が泥巣を破って羽脱できないのではないかと一瞬心配になりました。
しかし、泥巣を剥がした断面から成虫が羽化してくるでしょうから、問題ないのでしょう。






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