2011/06/30

蜂蜜を舐めるオオフタオビドロバチ♀



2011年6月下旬

竹筒トラップから回収し前蛹から飼育してきたオオフタオビドロバチAnterhynchium flavomarginatum)の最後の一匹がようやく羽化しました。
体長が大きく、触角の先が真っ直ぐであることから♀と思われます。
ハチミツ原液を一滴与えてみると、喜んで一心不乱に舐めてくれました。
口吻をリズミカルに伸縮しながら吸蜜しています。
ときどき触角の先で蜜滴の表面に触れています。
これが成虫になって初めての食餌でしたが、数時間でこの量を飲み干しました。


交尾行動を飼育下で観察したかったのですが、残念ながら私の飼育技術が未熟なせいで、先に羽化した♂を♀の誕生までうまく生かし続けてやることが出来ませんでした。

2011/06/26

オオフタオビドロバチ♂尾端に生えた謎の刺状突起

昨年の夏(2010年8月)にオオフタオビドロバチが(Anterhynchium flavomarginatum)営巣していた竹筒トラップを回収し、中の独房から蜂の子を取り出し室内飼育していました。
関連記事はこちら→「オオフタオビドロバチの芋虫搬入」、「竹筒内のオオフタオビドロバチ幼虫R1ab」。


前蛹のまま越冬し、蛹を経てようやく成虫が羽化しました。
オオフタオビドロバチ成虫の性別判定法は体長が♀>♂としか知らなかったのですが、触角の先が鈎状に曲がるのがドロバチ科の雄蜂の特徴であると教えてもらいました
またこちらのサイトによると、オオフタオビドロバチ♂は触角第一節(根元)の前面半分が黄色になるようです。
おそらく触角の前面というのがポイントで、交尾に先立ち求愛の際に互いに顔を見て性別が分かるようになっているのでしょう(まさにお見合い)。


♀よりも先に♂が羽化する(雄性先熟)のは本で読んだ通りでした。
これについては別に記事を書く予定です。


死んだ♂二匹を眺めていると、尾端に気になるものを発見。


オオフタオビドロバチ♂2a(水色)

なんと、鋭く長い刺が二本生えているのです。
私は展翅の技術を知らないので、標本の腹端からピンセットで引き出した訳ではありません。
この状態で死んでいました。
一対の刺に挟まれるように、腹端中央から交尾器と思われる突起も伸びていました。
別個体の♂でも同じでした。


オオフタオビドロバチ♂4b(白色)

謎の刺は生きている状態の雄蜂には見られません。
自衛用に隠し持った武器かもしれません。
捕まえると毒針をもつ♀のように刺す真似をするかもしれない(ブラフ、行動擬態)と考えました。
これは昔教えてもらったキンケハラナガツチバチ♂の話からの連想です。
尾端に3本の鋭い刺を有し、捕まえると刺してくる。
関連記事はこちら→「キンケハラナガツチバチ♂の吸蜜」。



長い前置きはこれぐらいにして、実験した様子を動画に撮りました。
2011年6月中旬





実際にオオフタオビドロバチ♂の翅をピンセットや指で摘み上げてみると、腹部を捩って逃れようとします。
ところが暴れる♂の腹端をよく観察しても、一対の刺は伸びていませんでした。
素手で捕まえたときも指に針で刺される痛みは感じられず、大顎で噛み付いてくる反撃も少しくすぐったい程度でした。


という訳で、残念ながら私の素人予想は外れました。
よく考えてみると、ツチバチ♂の刺(偽毒針)は伸びたままである(伸縮性が無い)点が♀の毒針や今回のオオフタオビドロバチ♂の刺とは異なります。
オオフタオビドロバチ♂死骸の刺に指先で触れてみると、スズメバチ科♀の毒針より柔らかい印象でした。
蜂の体の解剖学について私はまるで無知なので、詳しい専門家にこの謎の刺状突起の正体(正式名称や機能)を教えてもらいたいです。
武器でないとしたら、交尾の際に把握器として使うのでしょうか。
飼育下で交尾時の結合部を観察してみれば機能が分かるかもしれません。
腹端から伸びる突起は蛹のときから目立っていたので、気になっていました。

追記
実は上の動画に示した素人実験は少し問題があるかもしれません。
後日、比較としてオオフタオビドロバチ♀を使って同様の動画を撮ってみたのですが、意外にも毒針を伸ばす様子は観察できませんでした。
謎は深まるばかりです。


【追記2】
2022年末に神戸大の研究グループがこの問題を解決し、論文を発表しました。
(英語の原著論文がPDFでダウンロード可能です。)
Sugiura, Shinji, and Misaki Tsujii. "Male wasp genitalia as an anti-predator defense." Current Biology 32.24 (2022): R1336-R1337.

オデコフタオビドロバチ♂(Anterhynchium gibbifrons)を実験材料に用い、2種のカエル(ニホンアマガエルおよびトノサマガエル)と対決させたところ、雄蜂♂は腹端にある1対の棘状突起を自衛用の武器として反撃し、捕食を免れたそうです。

また、オデコフタオビドロバチ♂は ♀と交尾する際に腹端の棘を使って♀を刺したりすることはなかったとのこと。

ちなみに、原著論文の中ではオデコフタオビドロバチ♂の棘を「two parameral spines in the genitalia」と呼んでいました。

parameralという昆虫解剖学の用語を知らなかったのですが、「paramere(陰茎側片、交尾鉤)に関する」という意味らしいです。


この面白い論文の解説動画が早速YouTubeで公開されていました。

「Watch male wasps use spiky genitals to defend themselves from predators」by New Scientist

 

「Male wasps use genitalia to sting their predators」by Science X: Phys.org, Medical Xpress, Tech Xplore 

 

2011/06/05

越冬明けで室内羽化したフタスジスズバチの身繕い




2011年4月下旬 室温18℃

室内を徘徊する一匹のハチを見つけました。
ときどき羽ばたいて飛び立つものの、未だ弱々しい。
フタスジスズバチ(別名ヤマトフタスジスズバチ;Discoelius japonicus)のようです。
室内干しの洗濯物に止まり、念入りに身繕いしています。
後脚を互いに擦り合わせています。
ときどき舌を伸縮させたり尾端が開閉したりする様子がちょっと面白かったです。
シャツを舐めているのではなさそう。
性別の見分け方が分からないので、ご存知の方はぜひ教えてください※。
尾端が開いた時も毒針や産卵管らしき物は見られなかったので♂なのかな?(でも体長は小さくないし…。)
※【追記】 蜂屋のヒゲおやじさんによると、ドロバチ科の♂は触角の先が鈎型に曲がる特徴があるそうです。この個体はどうなんだろう?(微妙…)
最後は採寸する代わりに人差し指を目の前にそっと差し出したら乗ってくれました。


実は、軒下に設置した竹筒トラップを秋に回収したまま部屋に放置していました。
中で冬を越した蜂の子が成虫に育ちようやく羽化したと思われます。
竹筒を割って中の巣の状況を調べようと思いつつも、地震やら何やらで手が回りませんでした。
この竹筒にフタスジスズバチが営巣していたとは全く気づかず、ツツハナバチの古巣だと思っていました。
暖房が無い部屋でも室内の方が暖かいので、野外での第一化の出現はもう少し遅れるのでしょう(手元の文献では5〜6月)。




動画撮影後にハチの姿を見失ってしまいました。
翌朝、カップ麺の残り汁に浮いて動かなくなっているハチを発見。
水分を摂取しようとして脚を滑らせたのでしょう。
気落ちしつつ、ハチを掬い上げてペーパータオルで水気を吸い取り、記録用に写真を撮りました。
溺死したかと思いきや、充分乾燥させたら数時間後に元気になったので吃驚。


【追記】
岩田久二雄『自然観察者の手記(3)』第五部の「葉巻き虫を狩るフタスジスズバチ」と題した章を読んでみたら、和名の由来を知りました。
和名フタスジスズバチは中胸背板を縦走する二本の深い溝をさしている。 (p42より引用)


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