2023/01/23

羊歯の葉を伝って逃げるニホンカナヘビ

 

2022年8月下旬・午前10:25頃・晴れ 

前回の記事(11日前の撮影)▶ 羊歯の葉の上で日光浴するニホンカナヘビ幼体 

里山の林道沿いに生い茂るシダ(種名不詳)の葉にニホンカナヘビTakydromus tachydromoides)の成体が乗っていました。
私がマクロモードで接写しながらレンズをそっと近づけると、シダの葉を渡り歩いて素早く逃走しました。

苦手なシダの種類を見分けられるように、これから少しずつ勉強していきます。

2023/01/22

林道を掘り返した採食跡は誰のしわざ?【ニホンイノシシまたはニホンアナグマのフィールドサイン】

 

2022年8月下旬・午前9:35頃・晴れ 

里山の山腹を通るほぼ平坦な林道で不自然に土を掘り返した形跡がありました。 
現場はスギの植林地と雑木林に左右を挟まれた林道です。
下草が生い茂る林道の地面が浅く広範囲に掘り返されています。
土は乾いていて、鮮明な足跡・蹄跡は残されていませんでした。
ここは私が夏によく通った林道なので、最近新たに出来た掘り返しで間違いありません。 

私は初め、ニホンアナグマMeles anakuma)がミミズを捕食した跡なのかと想像しました。 
金子弥生『里山に暮らすアナグマたち: フィールドワーカーと野生動物』という本を読んだばかりだったからです。
アナグマにとっては、ミミズの潜んでいる坑道を掘ってミミズを一匹ずつさぐりあてるよりも、ミミズの地表活動が行われるところに行って、ミミズが地表に出ているときに採食を行うほうが効率が良い。ミミズの地表活動が行われる場所はその日の湿気に左右される。(中略)このミミズパッチは季節ごと、数日ごとに位置が変化する。(中略)ミミズパッチを見つけ出したアナグマは、一分あたり2〜3匹のミミズを採食することができるため、口を地表につけたまま掃除機のようにミミズを食べながら直線に進み、パッチの端までくると方向転換してパッチ内の別の直線を進み、一時間程度で要求量が満たされて採食が終了する。(p119-120より引用)
ただし、これは著者が留学先のイギリスでなされたフィールドワークに関する文脈ですが、ニホンアナグマも同様と想像されます。
ミミズ捕食の際に地面に穴を全く掘らずに吸い込むだけなのだとしたら、以下の考察は私の誤読によるものです。 

しかし、熊谷さとし、安田守『哺乳類のフィールドサイン観察ガイド』でアナグマの食痕について調べると、全く違うことが書いてありました。
アナグマの最も目立つフィールドサインといえば、林道脇やササやぶの中などで見つかる、地面に空いたお椀状の食痕だ。これは落葉や土に鼻先を突っ込み、ミミズ類など土壌動物を掘り出した跡で、鼻先を中心に円を描くように探ったことによるもの。(p67より引用)
むしろ、ニホンイノシシSus scrofa leucomystax) の食痕と酷似しています。
イノシシのフィールドサインといえば、派手に掘り返された食痕だ。休耕田やタケ林、畑や田んぼなどでよく見られる。(中略)林道のわだちで食べ物を探した跡。(同書p80〜81より引用)

ちなみに、今泉忠明『アニマルトラック&バードトラックハンドブック』p106では「イノシシのラッセル痕」と題したイラストで採食行動を描いています。
イノシシが鼻面で落葉をかき分け地面を浅く掘りながら前に進み、溝を掘っているイラストです。
動画の現場は掘り返した後に雨水が溜まっていないので、イノシシがヌタ場を作ったのではありません。

著者の業績を私はもちろんリスペクトしていますが、「〇〇の食痕」と題した写真の根拠について聞きたくなります。
果たしてどれだけがトレイルカメラによる証拠写真(または動画)によって裏付けられているのか、気になります。
「採食行動を描いたイラストは、ただの想像図(筆者の仮説、妄想、ファンタジー)ではないのか?」と疑い深い読者が意地悪な質問をしたときに、どのように反論するのでしょう? 
フィールドあるいは飼育下で採食シーンを直接観察した直後に食痕の写真を記録したのであれば、文句はありません。 
好意的に解釈すれば、おそらく2冊の本は共に部分的には正しくて(不完全)、アナグマは状況に応じて両方の採食行動をするのかもしれません。 

この掘り返しは一体誰のしわざなのでしょう?
本に頼って袋小路に陥り、あれこれ悩むよりも、監視カメラを設置して自分で真相を突き止めるべきですね。
現場に足跡があれば、簡単に解決する問題なのですけど…。
アナグマお気に入りのミミズパッチなのであれば、繰り返しやって来るはずです。
残念ながらトレイルカメラを買い足す予算が足りず、今季は実現しませんでした。
(トレイルカメラを設置しにくい場所という事情もあります。)
その後も定点観察に通うと、林道の下草が再生してからしばらくすると、また同じ地点が掘り返されていました。 
つまり、謎の野生動物による採食頻度は低い印象です。
カメラトラップ調査の結果、当地でイノシシの生息密度は未だ低いと推察しています。
つまりイノシシの採食痕でも一応辻褄は合います。
誰かヒトが山菜を掘り出した跡だとしたら、何度も掘り返す必要はないはずです。



【追記】
ポケット版学研の図鑑9『フィールド動物観察:足あと、食べあと、ふん』でも調べてみました。
 イノシシは、草の葉やくき、球根や根、いもや、地面にいる昆虫や落ちている果実やドングリを食べます。(中略)土をほりかえしたあとは、とてもよく目立ちます。
 きばと鼻の先を使ってほりおこしますが、まるでトラクターでほりおこしたようになります。(中略)はば1m以上になるようなあなもあります。 (p48より引用)

「アナグマがほったあな:土をほって、アリやミミズをさがしたあとです。」と題したカラー写真もp47に掲載されていました。

私が見つけた掘り返しは、どうやらイノシシの採食痕だったようです。

 




毛虫を運び、隠れて捕食するオサムシの一種【名前を教えて】

 

2022年8月下旬・午前11:55頃・晴れ 

里山の雑木林を通る林道でオサムシの仲間(種名不詳)を見つけました。 
毛虫の腹端付近を大顎で咥え、その長い体に跨って前方にせかせかと早足で運搬しています。 
つまり、獲物を前後逆向きにして運んでいました。 
細い落枝に毛虫が引っかかると、それを乗り越えるのに少し苦労しています。 

広葉樹の落ち葉の上に毛虫を置くと、捕食開始。 
毛虫の胴体の中央付近に噛み付いています。 
オサムシは落ち着いて捕食できるように、タニウツギ?幼木の葉の下(日陰)に隠れていました。 
そこに巣穴があるという訳ではなく、一時的な隠れ場所のようです。 

私がカメラをマクロモードに戻してレンズをそっと近づけると、衣擦れ音に警戒したオサムシが慌てて逃げ出しました。 
初めは獲物を持ち去ろうとしていたのに、身の危険を感じたらしく、咥えていた獲物を捨てて逃走開始。 
ほとぼりが冷めたら食べ残しの獲物を取りに戻るかと期待したのですが、落とし物を探しているようには見えません。 
餌食となった毛虫はなぜか初めから萎びた状態でグッタリしていて、身が詰まっているようには見えません。 
オサムシはもはや毛虫に未練は無いのか、次の餌を探し求めて林床を徘徊しているようです。 

関連記事(12年前の撮影)▶ キタアオオサムシが落とし物を奪還する話

さて、オサムシの餌食となった毛虫の正体は何でしょう? 
現場ではなんとなくマイマイガの幼虫かと思ったのですけど、頭楯にハの字模様がありません。 
胸脚が赤っぽいです。 

オサムシが木漏れ日の日光が当たると鞘翅の金属光沢(メタリックカラーの構造色)が綺麗ですね。 
このオサムシの種類を見分けられる方がいらっしゃいましたら、ぜひ教えていただけると助かります。 
実は撮影後にありあわせのビニール袋を使って採集を試みたものの、殺気を感じたオサムシに素早く逃げられてしまいました。 
手っ取り早く素手で捕獲すべきでしたが、うろ覚えの知識で毒ガスを噴射をするのでは?と躊躇してしまいました。 
私のフィールドではよく見かける普通種だと思います。
関連記事(1年前の撮影)▶ オサムシが渓流沿いの林床を徘徊【名前を教えて】

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