2020/08/06

柳の樹液を吸う越冬明けのキタテハ



2020年5月中旬・午後14:40頃

川岸に生えた柳(樹種不明)の樹液酒場に越冬明けのキタテハPolygonia c-aureum)秋型が来ていました。

柳の幹に下向きに止まり、口吻を伸ばして樹液を吸汁しながら翅をゆるやかに開閉しています。
翅の縁がボロボロに破損していました。
暖冬だったとは言え、冬越しの厳しさが忍ばれます。(キタテハは成虫で越冬します。)
翅裏のCマークがキタテハの紋章です。
翅裏の地色が薄い褐色なので、シータテハは除外できます。
やがて幹を回り込むと、上に登り始めました。
柳の枝には若葉が生い茂っています。

幹の一部が小さな樹洞のようにえぐれていて、キタテハは樹洞の内側を口吻で舐めていました。
近寄ってきたアリを嫌ったのか、キタテハは翅を開閉しながら樹洞から歩き去ります。
幹の陰に回り込んで再び死角に消えたので、もしかすると私を警戒しているのかもしれません。
樹液を充分に吸汁すると、満ち足りたキタテハは柳の幹から飛び去りました。

キタテハの樹液吸汁シーンは、意外にもこれまで1例しか撮ってませんでした。

▼関連記事(7年前の撮影)
樹液酒場で飛ぶキタテハ、シータテハ、アカタテハ【ハイスピード動画&HD動画】


ちなみに、柳の樹液が滲む樹洞内には得体の知れない白い蛆虫のような謎の幼虫が大小数匹、蠢いて(泳いで)いました。
ハエ類なのか甲虫の幼虫なのか、私にはさっぱり分かりません。
この蛆虫を採集し、昆虫ゼリーを与えれば成虫まで飼育できるかな?


さらに余談ですが、撮影中に頭上から水滴が何度も滴り落ちてきました。
透明で冷たい液体でした。
雨水ではないと思うのですが、アブラムシの甘露かな?

『ヤナギハンドブック』を手に入れたので、自力で樹種を同定できるように頑張ります。
この辺りでよく見かける平凡な普通種だと思います。
花や葉、実など通年で総合的に判断しないといけないみたいで、定点観察に通うことにします。







2020/08/05

青いルピナスの蝶形花で採餌するヤマトツヤハナバチ♀



2020年5月中旬・午後14:50頃・晴れ

空き地の原っぱにノボリフジ(別名ルピナス)の花が咲き乱れていました。
今どき、こういう「空き地の原っぱ」はとても貴重です。
ノボリフジに訪花して送粉者となる昆虫を知りたくて、この春はルピナスの群落に通い詰めました。
まず出会えたのは、ヤマトツヤハナバチ♀(Ceratina japonica)でした。
とても小さな蜂なので、途中からマクロレンズを装着して接写します。(@1:07〜)
ヤマトツヤハナバチは最近私のお気に入りです。
この群落ではピンクの花も少し咲いていたのに、私が見たヤマトツヤハナバチ♀は青い花ばかり訪れていました。(確率の問題?)

ルピナスの花は花弁が特殊化しており、マメ科に特有の蝶形花という複雑な構造をしています。
ヤマトツヤハナバチ♀は、ぴったり閉じた左右の翼弁をこじ開け、頭を中に突っ込みました。
頭隠して尻隠さずの状態で、吸蜜および集粉しているようです。
蝶形花の中にヤマトツヤハナバチ♀が完全に侵入することもあります。
左右の翼弁が自然にぴったり閉じて蜂の姿が全く見えなくなりました。
ルピナスの蝶形花内で方向転換した蜂は、頭だけ外に出しました。
愛嬌のある顔を正面からクローズアップすると、頭楯の特徴的な黄紋からキオビツヤハナバチではなくヤマトツヤハナバチと同定できます。
図鑑によればヤマトツヤハナバチは山地性らしいのですが、ここは平地です。
そもそも私は未だ平地性のキオビツヤハナバチを見つけたことがありません。
ここは北の雪国なので、気温による補正が入って虫の垂直分布が変わるのではないかと個人的に予想しています。

ノボリフジの花粉がたくさん採れると、ヤマトツヤハナバチ♀は次の花へ飛び立つ前に身繕いをします。
後脚の花粉籠 スコパ(花粉採集毛)に橙色の花粉団子を集めて巣に持ち帰るのです。

ルピナスの花に止まっていた蜂が飛び去ると軽くなり、蝶形花の竜骨弁が自然に持ち上がって再び閉じる様に驚きました。(感動!)
ヤマトツヤハナバチ♀は花弁が散って雄しべが剥き出し状態の花にも訪れて採餌(集粉)していました。

後半になるとヤマトツヤハナバチ♀は経験を積んで学習したのか、採餌行動が洗練されてきました。
蝶形花の翼弁をこじ開け、中から尖った鈎状の構造物(竜骨弁)を外に引っ張り出しました。
その中に雄しべが隠されているようです。
鈎状に尖った先端を蜂が噛んだり舐めたりすると、雄しべの葯からオレンジ色の花粉が大量に湧き出してきます。
その場で身繕いして体に付着した花粉を花粉籠 スコパ(花粉採集毛)に移します。
花粉を集める(集粉)だけでなく花蜜も吸っているはずだと思うのですが、吸蜜シーンはよく見えませんでした。

ルピナスの花は、マメ科に特有の蝶形花という複雑な構造をしています。
初めて見るヤマトツヤハナバチ♀の採餌行動がよく理解できなかったので、最後に私も自分の手でノボリフジの蝶形花をひとつ分解して調べてみました。
翼弁をむしり取り、竜骨弁の先端をちぎり取ると、雄しべと雌しべが現れました。
雄しべの先端の葯を潰すと橙色の花粉で指が染まります。

つづく→採餌経験の浅いヤマトツヤハナバチ♀はルピナス蝶形花の攻略に苦労する【NG集】




川岸で縄張り争いするハクセキレイ♂の誇示行動(野鳥)



2020年5月中旬・午後14:30頃・晴れ

街中を流れる川のコンクリート護岸の縁で2羽のハクセキレイ♂(Motacilla alba lugens)が奇妙な激しいダンスを繰り広げていました。
カメラでズームインすると、♂同士でした。
護岸を行きつ戻りつする2羽の動きを同じ画角に収めるのに苦労します。

右側の個体Rが左側の個体Lの近くまで走り寄ると目の前で高く飛び上がる、という謎の行動を繰り返しています。
1/5倍速のスローモーションでリプレイ。
初めはフライングキャッチで飛んでいる虫を捕食する練習をしているのかと思いました。
どうやら縄張り争いの誇示行動のようです。
ちょうどこの地点に、2羽♂の縄張りの境界線があるのでしょう。
左の個体LはRの誇示行動(ディスプレイ)をただ見てるだけで、特に応戦しませんでした。
どうやって決着をつけるのかと興味津々で見ていると、先に飛び去ったのは意外にも、激しく縄張りを主張していた個体Rの方でした。
コンクリート護岸に居残った個体Lにズームインすると、チチッチチッ♪と鳴いていました。(勝利の凱歌?)
鳥は縄張り争いをする前にまず囀りさえずりで縄張り宣言するはずですが、そのような特殊な鳴き方は聞こえませんでした。(聞き逃した?)

小笠原昭夫『セキレイの歌』 (文研科学の読み物)はセグロセキレイの生活史をまとめた児童向けの名著です。
「なわばり」の章を読み返すと、ヒントになりそうな記述がありました。

(キセキレイは)あとからあとからやってきて、こみあってくると、なかまどうしで、しばしばはでなおどしあいがおきた。1わの頭上へべつの1わが飛んでいき、ぶつかりそうな近さで宙返りしてもとへもどるという動作を、なんどもくり返した。相手も腰を低めて上をむき、くちばしを開いてはむかった。そんなときにはきまって、チチチチチ、スイスイスイーと細くするどい鳴き声をたてた。(中略)
 いっぽうハクセキレイは、池や川原へおりて、セグロセキレイと争うことが、ときどきあった。たいていはチュイリーと聞こえるするどい声を発するだけで、わかれわかれになったが、空中でもつれてたたかったり、つかみあったまま、2わいっしょに水面へ落ちてしまうほどのけんかをすることもときにはあった。(p39−41より引用)


ただし、セキレイ類の中でも種によって縄張り争いの誇示行動は微妙に異なる可能性があります。
今回私が観察したハクセキレイの事例では、喧嘩中の鳴き声は風の音にかき消されて対岸からあまり聞き取れませんでした。
ハクセキレイの激しい空中戦は以前一度だけ撮影に成功しましたが、取っ組み合いの喧嘩は未だ見たことがありません。


▼関連記事(3年前の撮影)
縄張りを巡り空中戦を繰り広げるハクセキレイ(野鳥)





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