2020年5月中旬・午後14:40頃
川岸に生えた柳(樹種不明)の樹液酒場に越冬明けのキタテハ(Polygonia c-aureum)秋型が来ていました。
柳の幹に下向きに止まり、口吻を伸ばして樹液を吸汁しながら翅をゆるやかに開閉しています。
翅の縁がボロボロに破損していました。
暖冬だったとは言え、冬越しの厳しさが忍ばれます。(キタテハは成虫で越冬します。)
翅裏のCマークがキタテハの紋章です。
翅裏の地色が薄い褐色なので、シータテハは除外できます。
やがて幹を回り込むと、上に登り始めました。
柳の枝には若葉が生い茂っています。
幹の一部が小さな樹洞のようにえぐれていて、キタテハは樹洞の内側を口吻で舐めていました。
近寄ってきたアリを嫌ったのか、キタテハは翅を開閉しながら樹洞から歩き去ります。
幹の陰に回り込んで再び死角に消えたので、もしかすると私を警戒しているのかもしれません。
樹液を充分に吸汁すると、満ち足りたキタテハは柳の幹から飛び去りました。
キタテハの樹液吸汁シーンは、意外にもこれまで1例しか撮ってませんでした。
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樹液酒場で飛ぶキタテハ、シータテハ、アカタテハ【ハイスピード動画&HD動画】
ちなみに、柳の樹液が滲む樹洞内には得体の知れない白い蛆虫のような謎の幼虫が大小数匹、蠢いて(泳いで)いました。
ハエ類なのか甲虫の幼虫なのか、私にはさっぱり分かりません。
この蛆虫を採集し、昆虫ゼリーを与えれば成虫まで飼育できるかな?
さらに余談ですが、撮影中に頭上から水滴が何度も滴り落ちてきました。
透明で冷たい液体でした。
雨水ではないと思うのですが、アブラムシの甘露かな?
『ヤナギハンドブック』を手に入れたので、自力で樹種を同定できるように頑張ります。
この辺りでよく見かける平凡な普通種だと思います。
花や葉、実など通年で総合的に判断しないといけないみたいで、定点観察に通うことにします。
2020年5月中旬・午後14:30頃・晴れ
街中を流れる川のコンクリート護岸の縁で2羽のハクセキレイ♂(Motacilla alba lugens)が奇妙な激しいダンスを繰り広げていました。
カメラでズームインすると、♂同士でした。
護岸を行きつ戻りつする2羽の動きを同じ画角に収めるのに苦労します。
右側の個体Rが左側の個体Lの近くまで走り寄ると目の前で高く飛び上がる、という謎の行動を繰り返しています。
1/5倍速のスローモーションでリプレイ。
初めはフライングキャッチで飛んでいる虫を捕食する練習をしているのかと思いました。
どうやら縄張り争いの誇示行動のようです。
ちょうどこの地点に、2羽♂の縄張りの境界線があるのでしょう。
左の個体LはRの誇示行動(ディスプレイ)をただ見てるだけで、特に応戦しませんでした。
どうやって決着をつけるのかと興味津々で見ていると、先に飛び去ったのは意外にも、激しく縄張りを主張していた個体Rの方でした。
コンクリート護岸に居残った個体Lにズームインすると、チチッチチッ♪と鳴いていました。(勝利の凱歌?)
鳥は縄張り争いをする前にまず囀りで縄張り宣言するはずですが、そのような特殊な鳴き方は聞こえませんでした。(聞き逃した?)
小笠原昭夫『セキレイの歌』 (文研科学の読み物)はセグロセキレイの生活史をまとめた児童向けの名著です。
「なわばり」の章を読み返すと、ヒントになりそうな記述がありました。
(キセキレイは)あとからあとからやってきて、こみあってくると、なかまどうしで、しばしばはでなおどしあいがおきた。1わの頭上へべつの1わが飛んでいき、ぶつかりそうな近さで宙返りしてもとへもどるという動作を、なんどもくり返した。相手も腰を低めて上をむき、くちばしを開いてはむかった。そんなときにはきまって、チチチチチ、スイスイスイーと細くするどい鳴き声をたてた。(中略)
いっぽうハクセキレイは、池や川原へおりて、セグロセキレイと争うことが、ときどきあった。たいていはチュイリーと聞こえるするどい声を発するだけで、わかれわかれになったが、空中でもつれてたたかったり、つかみあったまま、2わいっしょに水面へ落ちてしまうほどのけんかをすることもときにはあった。(p39−41より引用)
ただし、セキレイ類の中でも種によって縄張り争いの誇示行動は微妙に異なる可能性があります。
今回私が観察したハクセキレイの事例では、喧嘩中の鳴き声は風の音にかき消されて対岸からあまり聞き取れませんでした。
ハクセキレイの激しい空中戦は以前一度だけ撮影に成功しましたが、取っ組み合いの喧嘩は未だ見たことがありません。
▼関連記事(3年前の撮影)
縄張りを巡り空中戦を繰り広げるハクセキレイ(野鳥)
