2014/06/26
2014/06/25
ホウチャクソウの花で盗蜜するマドガ(蛾)
2014年5月下旬
この春フィールドで最も興奮した新発見を報告します。
低山の草地に咲いたホウチャクソウの花にマドガ(Thyris usitata)という小さな昼蛾が何頭も来ていました。
吸蜜シーンをよく見ると、白い花筒の外側に止まり、口吻を花弁の根元の隙間に差し込んで花蜜を吸っています。
これはまさしく盗蜜行動で、花の受粉には寄与しません。
これまでハチや鳥が盗蜜する例をいくつか観察してきました。
しかし長い口吻を有する 鱗翅目(チョウやガの仲間)が盗蜜する例はこれまで見聞きしたことがなく(※追記参照)、驚愕の発見でした!
ホウチャクソウの同じ群落でマドガが何頭も飛び回り、その全てが盗蜜の常習犯でした。
マドガのような小蛾類は花筒の入り口に頭を突っ込んで正当訪花しても口吻が蜜腺まで届かず、やむを得ず盗蜜するのでしょう。
正当訪花でホウチャクソウから吸蜜するにはスズメガ科ぐらい長い口吻が必要になりそうです。
花弁が一部枯れかけて(萎れかけて)いる花からもマドガは気にせず盗蜜しています。
あまりにも多数のマドガが集まっていたので、
マドガ♀がホウチャクソウに産卵するのか、と初めは疑いました。
しかし調べてみると、マドガ幼虫の食草はキンポウゲ科のボタンヅルでした。
周りで咲いている花は他にも沢山あるのに(ケナシヤブデマリなど)、ホウチャクソウに集まるということは、マドガにとってよほど魅力的な蜜源なのでしょう。
現場でしばらく粘っても、この日はマドガ以外のめぼしい昆虫は現れませんでした。(※※)
さて、ホウチャクソウに正当訪花する送粉者は誰でしょう?
以前の観察から私はその答えを知っています。
マルハナバチ類の中でも特に長い舌を持つトラマルハナバチがホウチャクソウと共進化してきて送粉を担っていると思われます。
▼関連記事その訪花シーンは『マルハナバチの経済学』という本の表紙になっています。
・トラマルハナバチ♀がホウチャクソウを訪花
・ナルコユリで吸蜜するトラマルハナバチ
※ 当時は勉強不足だったのですが、実は鱗翅目こそ盗蜜の常習犯でした。
例えばNewton special issue『植物の世界 第2号:ナチュラルヒストリーへの招待』で盗蜜行動を解説した記事のp118によれば、
・チョウやガの仲間は、長い口吻を細いすき間にさしこんで盗蜜する。
・長い口吻をもつチョウは、雄しべや雌しべにふれることなく蜜を吸うことができる。とくに蜜を浅いところに分泌する花はチョウやガに対しては無防備であり、ほとんどの場合一方的な掠奪を受けるのみである。
※※ 今回の撮影中に小さなアリが花筒を徘徊し、中に潜り込みました。(@5:12〜)
花蜜が目当てだとしたら正当訪花したことになります。
映像の最後で(@10:24〜)ホウチャクソウの花を開いて調べています。
花筒を潰して広げ、雄しべと雌しべの位置関係など内部の構造を示しました。
【追記】
「盗蜜する蛾」をネット検索してみると、ginguchiさんのブログでフヨウの花で盗蜜するツメクサガを報告されていました。
【追記2】
盗蜜者は花に穿孔して盗蜜するnectar robberと花を傷つけず送受粉せずに盗蜜するnectar thieveに分けられるそうです。
これに従えばマドガはnectar thieveになりますね。
Labels:
チョウ・ガ(鱗翅目),
盗蜜,
訪花
タニウツギを訪花するトラマルハナバチ♀の飛翔【HD動画&ハイスピード動画】
2014年5月下旬
山道に咲いたタニウツギの花でトラマルハナバチ(Bombus diversus diversus)の♀が数匹、蜜を吸っていました。
時期的にワーカー♀ではなく創設女王だと思うのですが、定かではありません。
後脚の花粉籠に白色や橙色の花粉団子を付けています。
花から花へと忙しなく飛び回り、撮っていて目が回りそうになります。
そういうときは240-fpsのハイスピード動画に切り替えて撮影します。
複数個体を撮影。
本種は舌が長く、タニウツギの花筒に頭を突っ込んで奥の蜜線を舐めることができます。
そのお返しに送粉者として働きます。
正当訪花するのにタニウツギの花粉の色(白)でない橙色の花粉荷を運んでいる個体がいることが気になりました。
おそらく別種の花から集めてきた花粉なのでしょう。
Labels:
スローモーション,
ハチ・アリ(膜翅目),
飛翔,
訪花
登録:
投稿 (Atom)
ランダムに記事を読む
10/06/2022 - 0 Comments
27/09/2021 - 0 Comments
20/10/2020 - 0 Comments
23/07/2018 - 0 Comments
21/09/2018 - 0 Comments