2012/11/19
化粧するフタガタハラブトハナアブ♀
2012年8月中旬
閉め切った室内で蜂がブンブン飛び回っているので何とかして欲しいと呼ばれて行くと、マルハナバチに擬態したフタガタハラブトハナアブ♀でした。
窓ガラスに激しく衝突を繰り返したせいか、左翅先が破損しています。
出窓に止まって休んでいるので息を吹きかけると、顔を拭い始めました。
撮影後に捕獲して採寸すると、体長16mm。
擬態のモデルはコマルハナバチ♂でしょうか。
全身がレモン色の毛に覆われています。
毒針の無い♂にベーツ擬態しても仕方がないのでは?
一瞬だけギョッとさせれば効果あり、ということでしょうか。
ちなみに前回♂を取り上げた記事はこちら→「ドクダミの花を舐めるフタガタハラブトハナアブ♂(マルハナバチに擬態するアブ)」
【追記】
後脚の腿節が黒くて太いので、オオモモブトハナアブ♀(Matsumyia jesoensis)の可能性は?
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アブ・ハエ・カ・ガガンボ(双翅目),
化粧,
擬態
2012/11/18
ジガバチの営巣:獲物を狙う寄生ハエとの死闘#4:麻痺状態の芋虫を調べる
2012年8月中旬
巣坑に貯食する寸前にしつこい寄生ハエに邪魔され、二度も逃げ出したジガバチ♀(水色)は、麻酔した獲物を途中で放置したままどこかへ行ってしまいました。
せっかく個体標識したのに、そのまま蜂は戻って来ません。
獲物も掘りかけの巣坑も放棄して、新天地で一から新しく営巣サイクルをやり直すのが得策でしょう。
一見するとジガバチが寄生ハエに屈したようですが、結局シロオビギンガクヤドリニクバエ♀も産仔に成功しておらず、両成敗となりました。
漁夫の利を得たのがアリです。
地面に見捨てられたご馳走にアリが群がり始めました。
今回、ジガバチ♀と寄生ハエ(シロオビギンガクヤドリニクバエ)との戦いを観察した結果、一度営巣地を見つけられたが最後、蜂に勝ち目はないような印象を受けました。
何か有効な対抗戦略が今後進化してくるのでしょうか?(※追記参照)
新刊の『狩蜂生態図鑑』を読んで驚いたことの一つとして、単独性のカリバチでも交尾後の♂が巣穴に同居する種類の蜂がいるそうです。
♀がせっせと働いている間、一夫一妻の♂が天敵に対するボディーガードに専念するようになるかもしれません。
営巣地の選定も重要で、日当たりの良い裸地ではなく少し薄暗い林縁に営巣するのも天敵対策になるかもしれません。
あるいは暗くなるのを待って獲物を巣穴に搬入すれば、寄生ハエに見つかるリスクは減らせるかもしれません。
例えばキオビクモバチは狩猟後、寄生バエなどの天敵を避けるために日没を待ってから土中に単房巣を掘るらしい。(『狩蜂生態図鑑』p79より)
やがて完全夜行性または好暮性のカリバチが進化してきたら…と妄想すると胸が熱くなります。(†追記2参照)
農作物の害虫として嫌われるヨトウムシ(夜盗虫:ヨトウガの幼虫)が活発に食害するのは夜間らしいので、夜行性ジガバチ(仮称)も獲物に不自由しないでしょう。
新しいニッチとして狙い目かもしれません。
寄生ハエもすぐに寄主を追いかけて夜行性に進化するでしょうけど。
ビニール袋に芋虫を採集して持ち帰りました。
翌日に袋を開けると、飲まず食わずなのに20個も脱糞していました。
随意運動能力は奪われてるとは言え、腸の消化および排泄行動には影響ないことが分かります。
芋虫の麻酔の程度を調べるために、『ファーブル昆虫記』の真似をしてピンセットで突ついてみました。
腹部第4節以降で接触刺激に対して反応性が残っていました。
一方、上半身の胸部第1〜3節および腹部第1〜3節は完全に麻痺していました。
この麻痺は永久的で回復せず、飼育しても
獲物の麻痺の程度が蜂が毒針を刺した部位に対応しているのか自分でも確かめてみたいものです。
(実体顕微鏡に調べれば毒針を刺した跡は検出できるのだろうか?)
ジガバチが狩りを行い獲物を毒針で制圧する瞬間を未だ観察していないのです。
拉致被害者の身元調査
自分でもヤガ科ヨトウムシの一種だと思ったのですが、念のためにいつもお世話になっている「不明幼虫の問い合わせのための画像掲示板」にて問い合わせたところ、atozさんより次のコメントを頂きました。
個人的な印象としてはキリガ亜科やヨトウガ亜科の幼虫っぽいと感じました。
シリーズ完。
※【追記】
小松貴『虫のすみか―生きざまは巣にあらわれる (BERET SCIENCE)』p38-39によると、
ハチの巣は寄生性のニクバエに狙われることがあります。ひとたびマークされてしまうと、巣穴が完成してハチが獲物を隠し場所から運搬し、巣内に運び込む一瞬の隙をついてニクバエにウジを産みつけられてしまいます。一度にニクバエが産みつけられるウジは多数個体に及び、餌はウジにすべて食べ尽くされます。結果として、巣内の幼虫は餌が足りずに餓死するのです。
こういう敵に目をつけられた場合、狩りの後に営巣するタイプのほうが、すぐに獲物と巣を捨ててそこでの営巣をあきらめ、別の場所でやり直しやすいのです。
†【追記2】
虫好きにとって古典的バイブルである岩田久二雄『自然観察者の手記2』の第4部に「暗闇ずきの狩蜂」と題した章があり、読んでみると参考になりました。
午後狩った獲物のクモを草上に引き上げて監視しつつ寄生バエの活動が無くなる日没後に巣坑を掘って貯食するキオビベッコウ(現在の和名はキオビクモバチ)の詳細な観察記録や、強敵の寄生バエの攻撃を巧みに避けている好暮性のハナダカバチの一種(北米産)の話が登場します。
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チョウ・ガ(鱗翅目),
ハチ・アリ(膜翅目)
キショウブに訪花するトラマルハナバチ♀
2012年6月下旬
キショウブ(黄菖蒲)の群落にマルハナバチが訪花していました。
トラマルハナバチですかね?
大型のワーカーが多数訪花し、盛況です。
後脚の花粉籠に黄色の花粉団子を付けているのは小型のワーカー(@1:57-)だけのような印象を受けました。
分業かと思ったのですけど、よくよく考えると花の奥の蜜腺まで潜り込み易いのはむしろ小型ワーカーの方だと思うのですけど…?
たまたまかな?
【参考】
こちらに「花菖蒲とトラマルハナバチ」と題した優れた解説がありました。
共進化の妙に感嘆します。
【追記】
『日本産マルハナバチ図鑑』p168によると、
(アヤメ類に)潜り込むときに花びら状の雌しべをめくり、背中の花粉が雌しべに触れて受粉する。大型のマルハナバチでなければ受粉できない。
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訪花
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