2012/09/24

クロギンスジトガリホソガ:回転舞踊する蛾の謎



2012年7月中旬

雑木林の下草として生えていたヒヨドリバナ?の群落で一頭のミクロ蛾が萎れかけた葉の上でなぜかクルクル踊り続けていました。
いつもお世話になっている虫我像掲示板にて写真鑑定してもらったところ、蛾LOVEさんよりクロギンスジトガリホソガRessia quercidentella)と教えてもらいました。

私はフサヒゲトガリホソガと迷ったのですが、「フサヒゲとするなら前縁の白い斑紋が一つ多いです。(一番後ろの白い斑紋)」とのこと。
本種の♀はカシワ、コナラなどブナ科コナラ属の葉に産卵するらしく、踊りの舞台は幼虫の食草とは無関係でした。

葉上を歩きながら頭を中心にひたすらぐるぐる回ります。
旋回の向きは右回り、左回りを両方行います
蛾に三半規管はないので、目が回ることはありません。
葉縁から脚を踏み外して滑落したりしません。
尻を左右に振りジグザグに歩くことも(千鳥足)。
翅の銀紋が非常に目立ちます。
配偶者へのアピール(誇示行動)だと思いますが、ミクロ蛾は解剖しないと性別が分からないのでしょう。

似たように回ったり踊ったりする小蛾が何種類か知られています。
(私がこれまで観察した例:カザリバヒメハマキ
既知の全種類をリストアップしたいのですけど、調べた文献はないのかな?

蛾の踊り方は種類によってバリエーションがあるのだろうか?
原始的な系統の蛾は原始的なダンスを踊るのかな?
つまり、系統進化と共に次第に複雑な振り付けのダンスを踊るようになったのだろうか?
とりあえず私に出来ることは、蛾の踊りを一つずつ記録することだけです。




「蛾のダンスの進化」とかいう大風呂敷はともかく、素人ができる実験として幾つかアイデアを思いつきました。
  • この行動は飼育下で再現できるのだろうか?
  • 踊る様子の軌跡を描いたら一筆書きで何か暗号が浮かび上がったりして…。
  • 死んだ蛾の標本をクルクル回す装置を工作し、野外の葉上で動かすと同種の蛾が誘引されるだろうか? 
  • 蛾Xの標本で蛾Yの踊りをやらせたら、誘引されるのはどちらの蛾だろうか?
  • 野外にiPadなどを持参し、踊りの動画を再生すると異性が誘引されるだろうか? (もし可視光以外に紫外線の情報が重要ならば、標本を使う方が有利な気がします。)
  • 踊っている個体に鏡を見せるとどのような反応を示すのか?(鏡像反応) 鏡張りの部屋に閉じ込めて踊らせれば、万華鏡のような映像が撮れそうです。



カザリバガ科の複眼は赤い。

動画撮影後に採集した標本。死後は複眼の赤い色が褪せてしまう。




2012/09/23

桑の実を食すハイイロハネカクシ



おかげさまで、このブログで記念すべき2000本目の記事になります。

2012年7月中旬

林道横に生えたヤマグワの木に謎の甲虫が飛来しました。
桑の枝の手前でしばらくホバリングしてから着陸。

ハネカクシの一種でした。
(映像はここから。)


黒く熟した実を採食し始めたものの、風で揺れるし木陰で薄暗いし非常に撮りにくいです。
ハネカクシは熟した桑の実を口にすると、葉柄を少し登って枝上で身繕い。
桑の実をガードしているかのように、その場から離れようとしません。
(ガードするシーンは退屈なので大幅にカット。)
興味深いことに、すぐ隣にある白カビ病変?の実には興味を示しません。

別の新鮮な黒い実をもぎ取り、試しにハネカクシの目の前に差し出してやると喜んで乗り移ってきました。
そっと地面に置いて、ようやく落ち着いて接写できました。
噛む口器であることがよく分かります。
触角を舐めてお手入れ。

ところが地面を徘徊中の小さなクロアリ(種名不詳)が甘い桑の実を発見し、ハネカクシと争いになりました。
蟻に噛まれて逃げたハネカクシはうろうろするも、逆側から摂食再開。
しかしアリにまた襲われて退散。

ハネカクシ科のことは全然知りません。
ネット検索で少し調べた限りでは、ハイイロハネカクシ(Eucibdelus japonicus
)と似ている気がします。
(参考リンクはこれとかこれ。)

虫我像掲示板にて蛾LOVEさんに確認してもらいました。

余談ですが、最近は田舎の子供でも桑の実やキイチゴの味を知らないのか、通学路の横でも実がそのままに残っていて寂しく思います。
少子化のせいかもしれません。









ヤガタハエトリ♂(蜘蛛)の跳躍ハイスピード動画



2012年7月上旬

山中でスギの幹を徘徊する小さなハエトリグモを発見。
大きさの異なる二匹が少なくとも2匹以上います。
ヤガタハエトリPseudeuophrys erratica)またはイワテハエトリPseudeuophrys iwatensis)と思われます。
これまで私は人家の周囲でしか見つけたことがなく、山中で遭遇したのは初めて。※
触肢の状態から♂のようです。
ヤガタハエトリ♂同士の闘争誇示(喧嘩)を観察できるかと期待したものの、互いに出会うことはありませんでした。

杉の幹で跳躍するシーンをハイスピード動画(220 fps)に撮ってみました。
スローモーションでも速いジャンプですね。
必ず左右両方の第1歩脚を上げて(着地の準備?)から跳躍しています。
しおり糸(命綱)は残念ながら写っていません。



同一個体を撮ったHD動画はこちら




杉の樹液に興味を示す。


【追記】
※ YouTubeで欧州人のクモ屋さんから以前コメントを頂きまして、Pseudeuophrys属は生息環境を住み分けているかもしれないそうです。(wikipedia参照)


【原文】
Pseudeuophrys erratica is a species of jumping spider that is distributed throughout Europe, although it is not common. P. erratica is normally found under the bark of trees or under rocks on forest fringes. The very similar looking P. lanigera is much more abundant, and is almost only found in or near buildings.[1]

【超訳】
Pseudeuophrys erraticaはヨーロッパ全土に分布するハエトリグモの一種で珍品である。P. erraticaは通常、林縁で樹皮の下や石の下で見つかる。外見のよく似たP. lanigeraP. erraticaよりも個体数が多いが、ほとんど建物の内部またはその近くでしか見つからない。

日本産のPseudeuophrys spp.についてはまた事情が違うかもしれませんが、個人的にちょっと思い当たる節があって面白い(なるほど!)と思いました。
私が主に見つけるのは人家の周りがほとんどです。(ということはイワテ?)
ただ一度だけ、里山の杉の幹で見つけたことがあります。(こちらがヤガタ?)
採集して専門家に標本を鑑定してもらえば謎が解けることでしょう。

これに対して、いつもお世話になっている「クモ蟲画像掲示板」のきどばんさんから次のコメントを頂きました。
サイズが同等の近縁種はこうした棲み分けをすることが多いようですね。
私は埼玉の里山林縁のヒノキ樹皮下でイワテを見つけたことがあります。



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