2012/08/02

古池や古狸が飛び込む古タイヤ




2012年6月上旬

沼の対岸で何か毛皮の獣が動いていることに気づきました。
打ち捨てられた古タイヤの横に居ます。
生い茂った葦の葉が邪魔で全身が見えないのは残念ですが、頭隠して尻隠さず。
どうやらホンドタヌキNyctereutes viverrinus)のようです。
フリーズしてこちらを凝視しています。
息を潜めて見ているとようやく警戒を解いて横を向き、古タイヤに頭を突っ込みました。
のそのそと奥の茂みに移動すると、依然としてこちらの様子を窺っているようです。

ところが撮影の途中でカメラのバッテリーが切れてしまうという、痛恨のミス…。
急いで予備のバッテリーを取りに行くと、驚いたタヌキは茂みの奥へ走って逃げてしまいました。





溜糞があるのか、あるいはここが塒(ねぐら)なのかな?と思いつつ、古タイヤに近づいて実況見分してみました。
古タイヤの中に何か獲物(カタツムリやカエルなど)を見つけて捕食したのかと想像してみたものの、空っぽで特に食痕などは見つかりませんでした。

この沼にはいつもカルガモのつがいが住んでいたので、ひょっとすると芦原やタイヤの中に巣を作っていた可能性があります。
タヌキはその卵を失敬した?とか妄想してみました。
あるいは古タイヤの中に溜まった雨水を飲んでいたのでしょうか。
本当は沼の水を飲みに来たのに、対岸にいる私の存在に気づいて遠慮したのかもしれません。





タイヤの奥の茂みには獣道ができていました。
予算があれば監視カメラを設置してみるのになー。





2012/08/01

地中の初期巣に出入りする(シダ)クロスズメバチ♀



2012年6月上旬


里山の静かな池の畔で地面から出入りする蜂を発見。
地中に営巣するクロスズメバチの仲間のようです。
巣穴の位置はスギの大木の下で、多少の雨は上の枝葉で凌げます。
地面はスギの枯葉に覆われています。
すぐ近くにはスギの倒木もあり、樹皮から巣材を調達できそうです。
(実際には他所で巣材を集めていたもよう。)
人の目からは巣口の位置が非常に分かりにくいので、横に生えたナルコユリの茎に目印として白テープを巻きました。



カメラを三脚に固定し、巣穴に出入りする蜂を監視撮影してみました。
出巣した蜂は毎回同じ方角へ飛び(池を横断)、数分後に同じ方角から帰巣していました。
蝿のようなブーンという羽音で毎回接近に気づきます。
小さな蜂が帰巣時に巣材や肉団子を運んでいたかどうか、このアングルではよく見えませんでした。
個体識別できていませんが、一匹またはごく少数の♀が出入りしているようです。
おそらく創設女王の単独営巣期だろうという印象を持ちました。
帰巣時に撮れた写真から、クロスズメバチまたはシダクロスズメバチと絞り込むことが出来ました。
ツヤクロスズメバチは除外できます。


クロスズメバチの仲間(Vespula属)はどれも外見が似ており、採集して頭楯の模様を精査しないと正確な同定は困難です。
出入りする蜂(創設女王?)を一時捕獲して炭酸ガス麻酔下で接写することも可能です。

しかし、ストレスに感じて女王が営巣を打ち切ってしまう事態を恐れて我慢しました。

地中に営巣するクロスズメバチの巣を見つけたのはこれが初めてでした。

てっきり、もっと日当たりのよい場所に営巣すると思っていたので意外です。
モグラやネズミの古い坑道を利用するらしい。(『狩蜂生態図鑑』p96より)
意気揚々と定点観察に通ったものの、日を追うごとに蜂の活動が弱まり、残念ながらコロニーとして定着しませんでした。
誰かに初期巣を駆除されてしまったのか、創設女王に何か不慮の事故が遭ったのか、天敵に巣を荒らされたのか、より良い営巣地に引っ越したのか、色々考えられますけど原因は不明です。
あるいは私が巣の近くで歩き回る振動を嫌ったのだろうか?

ワーカーが多数羽化してきたら一時捕獲して同定するとともに個体識別のマーキングを施そうとか、シーズン終了後は巣を発掘しようとか、色々計画していたのに残念!




2012/07/31

ヤマトシリアゲ♂同士の喧嘩(獲物の争奪戦)




2012年6月上旬

一匹のヤマトシリアゲ♂(Panorpa japonica
)がクロモジの葉裏で何やら獲物を捕食中。
もう一匹が葉表に着陸すると、獲物の争奪戦が始まりました。
2匹の♂が互いに羽を動かしているのは威嚇のディスプレーでしょうか。
獲物を放置して葉表で激しい喧嘩を始めました。
シリアゲムシ(英名:scorpionfly)の♂に特有のカールした尾部が互いに絡み合っています。
サソリの毒針のように刺す武器としての機能があるのでしょうか?
単に格闘でもつれて絡まっているだけ?
虫の喧嘩は一般に口器を使うことが多いですけど、噛みついているようには見えません。
ようやく勝負がついたようで、二匹が別れ一匹が葉表に退散しました。
勝者が追い立てると、敗者は遂に飛び去りました。
敗者も特に致命傷を負ったようには見えません。
激しい肉弾戦で誰が誰だか分からなくなりました。
獲物の前所有者が防衛出来たのか、獲物強奪の成否は、不明です。


落ち着いてから獲物を接写してみると、ガガンボの死骸のようでした。
これは元々クモの巣にかかった獲物の食べかすかもしれません。
「シリアゲムシはクモの網に引っかかった虫を横取りする」ことが知られています(wikipediaより)。
喧嘩中に、獲物は見えない糸で葉裏からぶら下がっていました。
実は、両雄の格闘中にクロモジの葉から1匹のクモが懸垂下降で脱出したのを目撃しています。
勝ち残った♂は興奮が収まらないのか、しばらく羽を上下しつつ獲物の元に戻りました。
しかし獲物に口は付けているようには見えません。
♀への求愛餌として価値のある獲物をライバル♂からガードしているのでしょうか?
もう少し待てば♂が捕食したかな?

この日は雨もパラつき、成り行きをじっくり見届ける余裕がありませんでした。


獲物を巡って争う2匹のヤマトシリアゲ♂

ヤマトシリアゲ♂側面@ガガンボ死骸

ヤマトシリアゲ♂@ガガンボ死骸

【追記1】

シリアゲムシの口器は細長い頭部の先端にある。
咀嚼型だが、かなりの退化傾向を示すらしい。
第9腹節が変形した交尾器には大きな把握器がある。(毒針や武器として使うという記述は無し)
『昆虫の誕生』p168-170より

【追記2】
「日本産シリアゲムシ図鑑」という素晴らしいサイトを見つけました。
ヤマトシリアゲの項を参照すると、

他の種に比べ雄同士の争いが激しく、その際、ハサミ(パラメア=雄のハサミにある二又状の器官)を使って相手を追い払う行動が見られる。


交尾鉤 paramere
昆虫の腹部の第九体節の対になった構造.


【追記3】
『スパイダー・ウォーズ』p164-165によれば、
クモの網に盗みに入るシリアゲムシは♂ばかりで、♀は決して侵入しません。餌を奪われまいと、クモはシリアゲムシを追い出そうとしますが、シリアゲムシは餌をくわえてさっさと逃げます。餌が網からなかなか外せない場合には、サソリのように尻尾を高くあげて、クモを威嚇します。 クモが本気で捕らえにくると、シリアゲムシは「タバコ・ジュース」と呼ばれる黒っぽく苦い液体を口から吐き出し、クモをたじろがせます。この「ジュース」にはクモの糸を溶かす成分が入っており、シリアゲムシは網の粘着糸やクモが投げかける「トリモチ」から逃れることができます。


参考図書:『クモのはなしII:糸と織りなす不思議な世界への旅』 第16章:クモの餌を横どりする虫たち





ランダムに記事を読む

  • ヒガラの鳴き声♪【野鳥】16/12/2011 - 0 Comments
  • アキアカネ♀の捕食12/01/2011 - 0 Comments
  • キセキレイ♀@渓流【野鳥】13/10/2012 - 0 Comments
  • ゲンジボタルの発光による配偶行動と交尾未遂【暗視映像】15/08/2015 - 0 Comments
  • ハシボソガラス幼鳥(野鳥)の頭骨標本作り14/07/2015 - 0 Comments