2011/02/10

キアシナガバチ女王の造巣



2009年6月中旬

定点観察している軒下のキアシナガバチPolistes rothneyi)の初期巣(育房数35室)。
巣材を集めて帰巣した女王(マーキング済み)が育房を伸ばしていく作業工程をマクロレンズで撮りました。
せわしなく触角を動かし、計測しながら正確に六角形を作ります。
足場の悪い高所なのでカメラを掲げ続けた腕の筋肉が攣りそうになりました。
終盤はプルプル痙攣しています。
作業終了まで見届けられませんでしたが、もう限界でした。

つづく→シリーズ#9

キアシナガバチの育房は二階建て



2009年6月中旬

キアシナガバチPolistes rothneyi)初期巣の定点観察。
育房数は二日前と変わらず35室。
幼虫の発達段階に応じて各育房の深さが異なります。
中央の育房内の幼虫が一匹、白い繭を張っていました。
繭の上部へ更に伸ばした育房の壁に女王が卵を産み付けていました。
このような二段利用はセグロアシナガバチやキアシナガバチで知られています。
(参考:『日本の昆虫3:フタモンアシナガバチ』 文一総合出版 p62)




妹が育房を塞ぐぐらい育つ前に姉が奥から羽化脱出するのだろう。
育房を効率的に使い、巣材の節約になります。
一つの巣にワーカーの卵、幼虫、蛹と全ステージが見られました。
背中に個体標識された女王は滅多に巣を離れず警戒を怠りません。


 ≪追記≫
『日本の真社会性ハチ:全種・全亜種生態図鑑』信濃毎日新聞社 p52 より
 育房の重複利用は日本ではオオアシナガバチ亜属(Gyrostoma)に含まれる種(セグロアシナガバチおよびキアシナガバチ)でこのような育児方法が見られる。 




『狩蜂生態図鑑』p91によると、アシナガバチ類の房室の再利用は二型に分けられる。
L型は羽化後の再利用で、H型は羽化前からの再利用。
この分類に従えば、キアシナガバチの巣は、下向きの巣盤で巣柄から同心円状に発達し、房室はH型(羽化前から)の再利用。



小林朋道『先生、大型野獣がキャンパスに侵入しました!: 鳥取環境大学の森の人間動物行動学』によると、
(セグロアシナガバチの:しぐま註)育室の蓋の上に卵が産みつけられている。はたして、この卵はどうなるのだろうか?ひょっとすると、蓋の上の卵は、蓋の下で幼虫から成虫への遂げているハチの餌として、そこに産みつけられていたのかもしれない。 (p69より引用)

後に否定されるのですけど、このユニークな栄養卵仮説を思いつかなかったことを私は少し悔しく思いました。
当時の私はすぐに本やインターネットで調べてしまい、自分で謎解きする楽しみを味わえませんでした。
一方、著者の小林先生は観察を続けて真相に辿り着いています。
育室の蓋(セグロアシナガバチの繭:しぐま註)に穴が開きはじめた。(中略)私の予想に反して、蓋には大きな穴が開いており、卵は蓋の縁にちゃんと残っていた。 p72より引用)
かぎりある時間のなかで、効率よく、多くの幼虫を育てようとすると、確かに、蓋の下の幼虫が成虫になって出ていってしまうまで待つよりも、蓋をした時点で、その蓋を底に使って卵を産み付けたほうがよいだろう。それに、一度幼虫が育った、蓋より下の育室は、幼虫の糞などで汚れ、病原菌などが繁殖している可能性も高い。新しい幼虫には、新しい育室を増築したほうがよいのかもしれない。 (p87より引用)


つづく→シリーズ#8

2011/02/09

ヤスマツトビナナフシ♀を捕まえた




2010年11月中旬
(つづき)
脱糞していたナナフシ(前編記事はこちら)を捕獲して少し遊んでみました。
右の後脚を根元から欠損していますが、最近の怪我らしく再生肢は見られませんでした。
手荒に扱うと脚を自切しそうなので注意しました。

方眼紙上に乗せて採寸すると、体長51mm。


起き上がり運動を観察しようと仰向けにして置いてみました。
しかし気温が低いせいか(10℃自力では起き上がれません。
そのうち諦めたのか動かなくなりました。
手で起こしてやると、ゆっくり歩き始めました。
西日が当たり、歩く影がお洒落です。
こんなスローライフの生き方もあるのですね。
口器や髭の形状も面白いです。
ピンセットで翅を広げると、紅色の後翅を拝めました。




種類の見分け方は次の本を参考にしました。
『ナナフシのすべて』 トンボ出版 p25 
翅の模式図だけ合致しない?)←前翅の図だった。
ヤスマツトビナナフシは♀だけで単為生殖するのだそうです。


ランダムに記事を読む

  • 夜の河畔林を歩くニホンイタチ?ホンドテン?【暗視映像:トレイルカメラ】28/03/2022 - 0 Comments
  • 餌場に一晩中通ってドングリの山を持ち去る野ネズミ【トレイルカメラ:暗視映像】14/05/2023 - 0 Comments
  • 野生ニホンザルの採食@雪山(樹皮、冬芽)25/02/2012 - 0 Comments
  • ニホンアナグマの母子にヘルパー♂も付き添い家族総出で旧営巣地に一時帰還した夜【トレイルカメラ:暗視映像】10/04/2024 - 0 Comments
  • オオムネアカハバチ♀の徘徊、身繕い10/07/2012 - 0 Comments