2010/12/22

オオモンクロクモバチ♀による麻酔手術





(承前)
獲物を同定するためにオオモンクロクモバチ♀(オオモンクロベッコウ;Anoplius samariensisが少し離れた隙を狙って、葉上に放置されたクモの側面と眼列を接写。
次に麻痺状態のクモをピンセットで摘んで定規の上にクモを移動し採寸(体長14mm)。
腹部腹面に外雌器を認めました。
獲物は色彩変異型のスジアカハシリグモ♀(Dolomedes saganus)でした。


営巣地の偵察から戻ってきた蜂が獲物を探し回ります。
目の前の定規の上に置いてあるのにも関わらず、記憶(匂い?)を頼りにまず草上を探しました。
辺りを一回りしてようやくクモを発見しました。
このとき蜂も定規の上に乗ったので体長が分かります。




ちょっと見えにくいのですが、毒針でクモを再び刺し、麻酔手術を行ったようです。
麻酔が不十分で覚醒したクモが留守の間に勝手に移動したと思ったのだろうか。
再び獲物を咥えて葉上に運び上げました。
教科書通り、歩脚を振り分けて草の葉に引っ掛けています。

▼その3へ続く
オオモンクロベッコウの喧嘩

オオモンクロクモバチ♀がスジアカハシリグモ♀(蜘蛛)を運ぶ





2010年7月下旬

草刈りのされた用水路横の土手で獲物を運んでいるオオモンクロクモバチ(旧名オオモンクロベッコウ;Anoplius samariensis)を発見。
狩りのシーンは見ていませんが、獲物は色彩変異型のスジアカハシリグモ♀(Dolomedes saganus)と後に判明。
歩脚の根元を咥えて後ろ向きに歩いて運んでいます(後退地上運搬)。
歩脚は切り落としていないため、地面の障害物に引っかかって運びにくそうです。
しばらく進むと地面に獲物を残し、行き先を見定めるため少し離れました。
獲物の元に戻ると、腹端を曲げてクモの歩脚の根元に何度か素早く毒針を刺しました。
念入りに麻酔手術をやり直しているようです。
運搬中に獲物が何かに引っかかる度に刺している気がします。
クモが抵抗していると感じるのだろうか。
『ファーブル昆虫記』を読んで以来、クモバチの麻酔手術を目の当たりにしたのは初めてなので感動しました。


運搬を再開すると獲物を草の葉の上に持ち上げ、引っ掛けて置きました。
横でしばし身繕い。

▼その2へ続く
オオモンクロベッコウによる麻酔手術


 この蜂が人を刺しにくることはありませんが、素手で捕まえようとしたりすると刺されることがあるそうです。
その痛みは相当なものらしい。


2010/12/21

獣糞の上で交尾するハクサンベッコウバエの♂♀ペア




2010年10月中旬

林道上に下痢便の獣糞があり、ハエが集っていました。
交尾中のペアがいますが、横から見ると交尾器は結合していません。
下の♀は口吻を伸ばし断続的に獣糞を舐めています。
産卵中でもありませんでした。
上にマウントした♂は、前脚を♀の顔に掛け、残る中脚、後脚で♀腹部を抱いています。
♂は後脚同士を擦り合わせ身繕いし、腹端の性器を掃除しています。
おそらく♂はライバルから配偶者を守っていると思われます(交尾後ガード?)。


下痢便の表面に大量に浮いている白く薄い鱗片状の物体が気になります。
このハエ♀が産み付けた卵なのだろうか。※

いわゆるベッコウバエも獣糞に止まって居たのですが、私が近づいたら逃げて下草に移動しました。 
ハエの卵にしては見慣れない形状ですけど、ベッコウバエ科の卵は独特の形状なのだろうか?


それとも何か植物由来の落下物だろうか(花粉や種子?)。



同定してもらうために、撮影後に同一ペアを採集しました。

↑これは♂。体長9mm


↑これは♀。体長13mm


いつもお世話になっている「一寸のハエにも五分の大和魂BBS」て問い合わせたところ、写真鑑定でハクサンベッコウバエ(=エゾベッコウバエ;Neuroctena analis)だろうとご教示頂きました。以下コメント引用。
ベッコウバエ科のNeuroctena属でベッコウバエを除いて、翅の前後の横脈が暗条で囲まれるのは、N. baldia (Kurahashi, 1981)とN. analis (Fallén, 1820) (=N. melanacme (Kurahashi, 1981)があります。前種は脚や腹部が一様に橙色、中胸楯板の前横線部の側部に斑紋を欠き、触角は暗褐色、後種は前、後脛節の先端が黒色、腹部も後半部は暗色、楯板の前横線部の側部に黒点を現わし、触角は橙色となっています。これらの特徴を写真と照合すると、後種、N. analis Fallén ハクサンベッコウバエに一致します。本種は倉橋博士によってDryomyza melanacmeとして白山、立山、尾瀬などからの標本で記載されたものですが、Ozerov(1999)はヨーロッパから広く分布しているanalisと同一で、属もNeuroctenaにしています。


※ 汚物の水溜まり表面に浮く謎の物体はベッコウバエ科Neuroctena属の卵で間違いないと教えてもらいました。
水面に浮くために適応した形状なのだそうです。なるほどね。
次回は産卵シーンを観察してみたいものです。


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