2021/08/01

キイロクビナガハムシ♀♂の配偶者ガード#2:逆向きマウントするペアの♀に交尾栓?

 

2021年5月中旬・午前6:20頃・晴れ
前回の記事:▶ キイロクビナガハムシ♀♂の配偶者ガード#1
雑木林の林床に生えた蔓植物(種名不詳:サルトリイバラ?)にもう1組のキイロクビナガハムシ♀♂(Lilioceris rugata)を見つけました。 
下部の葉の上に乗っていたペアに注目して接写してみましょう。 
マウントしているものの交尾器は結合しておらず、やはり交尾後に配偶者ガードしているようです。 
撮影開始時には、♀の背に乗った♂は通常通り順向き(♀と同じ向き)でマウントしていました。 
ところが、この♂は♀の背中でなぜか方向転換して逆向きのマウント体勢になりました。 
マクロレンズで接写する私の動きに対して警戒したのでしょうか? 
♀に交尾を挑む♂は♀の背後からマウントするはずですから、配偶者ガードする♂は後ろ向きに見張っていた方がライバル♂の接近を防げるのかもしれません。

♀の腹端に白っぽい固形物が付着していることに気づきました。 
♀が脱糞した後なのかもしれませんが、ハムシの糞は黒っぽい気がします。(要確認) 
もしかすると、交尾中に♂が精包の他に粘液を送り込んで作った交尾栓(交尾プラグ)かもしれない!と思いつきました。 
昆虫やクモの一部の種では、♂が交尾相手の♀に交尾栓を作って、♀が別な♂と交尾するのを物理的に阻止することが知られています。(それでも浮気を完全には防げないらしい) 
いわば貞操帯です。 
もしこれがキイロクビナガハムシの交尾栓なら、♂が♀を交尾後ガードする必要はないのでは?と疑問になってきます。 
また、別の♀♂ペアの♀にはこの交尾栓(?)は付いていませんでした。
交尾行動を見逃したことがつくづく悔やまれます…。 

この♀は葉上でじっと休んでいるだけで、動き回ったり食事したりすることはありませんでした。 
ときどきのんびりと身繕いするだけです。 
左脚の跗節を擦り合わせたり、触角や前脚を舐めて掃除したりしています。 
♀は一体いつになったら産卵するのでしょう? 
三脚を持参していれば、♀が産卵するまで微速度撮影で記録したかったところです。 

ちなみに、『ハムシハンドブック』p16によると、本種は成虫で越冬するらしい。 

撮影後にありあわせのビニール袋で、この2ペアを採集しました。(以降は映像なし) 
帰宅後に、透明プラスチック容器に移して閉じ込めると、しばらくしたらマウントの向きが逆向きから順向きに戻っていました。 
離れてしまったペアもしばらくしたら交尾後ガードが復活しました。 
しばらくすると♀が嫌がって♂を振り落とし、ペアを解消。 
つるつるしたプラスチック容器の天井から♀が滑落して仰向けに暴れていると、♂が駆け寄って来てマウントを試みていました。


【追記】
「ハムシ 交尾栓」をキーワードにネット検索してみても、そのような事例はヒットしませんでした。
その代わりにキャサリン・ブラックリッジ『ヴァギナ 女性器の文化史』という書籍の中に興味深い記述が見つかりました。
 望まない精子を追い払うための最も鮮やかで劇的な方法は精子排出である。(中略)♀による精子排出は何年もまえから気づかれていたかもしれないが、重要ではないとして無視されていた。1886年のバッタの仲間(Podisma pedestris)についての研究は、交尾の直前に♀が排出する「特殊の性格を持つ排泄物」について詳しく記述しているが、そこから先の観察はなされていない。しかし、今日では、♀による精子排出あるいは投棄がありふれた行為だということが明らかになってきている。
 クモ、ヘビ、昆虫、オウム、家禽、ブタ、ネズミ、ヒツジ、ウシ、ウサギ、人間、こうした動物はみな、余分な精子を排出していることがわかっている。(中略)ハムシの例では、性行為の翌日に行なわれることもある。(中略)
 昆虫の♀の多くは単純に精子の包みを食べてしまう。(中略) 
 ハムシの仲間(Macrohaltica jamaicensis)の♀は、ヴァギナの筋肉を使って望まない♂が精液を注入するのを防ぐ。♂がすでに生殖器をヴァギナ、あるいは嚢に挿入したあとでも妨げることができる。この小さなハムシは嚢の強力な筋肉を収縮させて、嚢に栓をしたような状態を作りだす。嚢を締めつけることで、2つの効果が得られる。1つは、嚢の奥にある貯精場所に精液が選ばれるのを妨げる。もう1つは、♂が生殖嚢を膨らませるのを妨げる。というのは、♂は生殖嚢を膨らませなければ精包を作れないからだ。♂が精包を準備するまでに通常1分ほどかかるので、♀が鉄の壁を作ってしまえばあきらめて生殖器をひっこめなくてはならない。ハムシやミツバチと同じように、ツェツェバエもヴァギナを強く収縮させて♂を追いだすことができる。
筆者は科学ジャーナリストらしく膨大な事例を集めて列挙していますが、昆虫学の専門家ではないようです。(翻訳の問題か?)
ハムシ(Macrohaltica jamaicensis)の交尾に関する原著論文を読んでみたいものです。
もしこの記述がキイロクビナガハムシにも当てはまるとすれば、私が想像したような♂による交尾栓とは全く逆で、♀による交尾拒否(または♀による♂の精子の選択)ということになります。
昆虫の中でもチョウ類の♀は♂から精包と一緒に受け取った(注入された)栄養豊富な分泌物を体内で吸収して、栄養源としていることが知られています。
むしろ♀はそれを目当てに複数の♂と多回交尾することが分かってきたそうです。
最近『チョウの生態「学」始末』という専門書でその話を読んだばかりの私は、ハムシの♀による精子排出という現象は非常にもったいない(無駄)と感じてしまいます。
いずれにせよ非常に面白いので、キイロクビナガハムシ♀♂の交尾行動の一部始終をますます観察してみたくなりました。

巣材の枯草を集めて軒下の巣に運ぶムクドリ(野鳥)【HD動画&ハイスピード動画】

 

2021年5月下旬・午前7:15頃・晴れ
前回の記事:▶ 屋根裏の古巣を内見・掃除するムクドリ♀と軒下の巣口を拡張する♂【ハイスピード動画】(野鳥)
営巣地となった家屋の真下でムクドリSturnus cineraceus)が草むしりを始めました。 
建物の基礎部分のすぐ横に生えている青々とした雑草には目もくれず、枯草を集めています。 
(泥付きの枯草なんか巣に持ち込んだらすぐにカビが生えそうな気がするのですけど、何か対策してるのかな?)
嘴でむしり取った枯草を数本束ねると、近くの電線に飛び上がりました。 
電線上で少し飛んだり歩いたりして、営巣地の軒下に近づきます。 
電線から電線に伝い歩きしたときに、せっかく持ってきた巣材を少し嘴から落としてしまいました。 
営巣地周辺の安全を確かめると、電線から飛び降りてホバリングしながら一気に巣口へ飛び込みました。 
いよいよ屋根裏でムクドリの巣作りが始まったようです。 
しばらくすると作業を終えたムクドリが巣から飛び出しました。 
近くの電線に止まり、土で汚れた嘴を足元の電線に擦り付けてきれいにしています。 
ムクドリの巣材集めを観察するのはこれが初めてでした。
関連記事(7年前の撮影)▶ 巣材を運ぶムクドリ(野鳥)

巣材の搬入シーンを240-fpsのハイスピード動画でも撮ってみました。(@1:17〜) 
おそらく♀と思われる個体が嘴に枯草などの巣材を咥えたまま電線に止まり、帰巣のタイミングを見計らっています。 
電線から飛び降りると空中でホバリングし、そのまま軒先の穴に飛び込みました。 
♂らしきパートナーが続けて飛来し、ホバリングすると巣口の真下の雨樋パイプを経由してから入巣しました。 
どうもムクドリの♂は巣材集めを♀に任せているようです。 
最後に1羽が巣から飛び出してきました。 

※ 暗い巣口にズームインしたシーンでは、動画編集時に逆光補正を施しています。 

 シリーズ完。


日本鳥の巣図鑑:小海途銀次郎コレクション』でムクドリの巣について調べると、
主に建造物の隙間に枯れ草の葉、茎、松の落ち葉、ササの葉、樹皮、ビニールなどまるでゴミのようなものも集め、お碗形の巣をつくる。産座には獣毛、人毛、羽毛、ササの葉などを敷き詰める。(p299より引用)

 

電柱に止まって日光浴するアブ♂【名前を教えて】マルハナバチに擬態?

 

2021年5月下旬・午後17:10頃・晴れ 

ノボリフジ(ルピナス)の花が咲き乱れる大群落の横に立つコンクリート電柱の側面に見慣れないアブ(種名不詳)が止まっていました。 
ルピナスへの訪花シーンを期待したものの、ひたすら日光浴しているだけでした。 
蔦の葉に覆われた電柱のコンクリートが露出した面に静止して夕日を浴びています。 
飛び立つ瞬間をハイスピード動画で記録したかったのですが、失敗しました。 

このアブの名前をご存知の方がいらっしゃいましたら教えて下さい。 
大きく発達した左右の複眼が中央で接していることから、♂のようです。 
触角の根元は白いです。 
過去に出会った虫の中ではチャイロオオイシアブと似てるかな?と思って調べ直すと、どうも違うようです。 
トラマルハナバチにベーツ擬態しているのですかね? 
『札幌の昆虫』という図鑑には「マルハナバチに擬態したハナアブ類」をまとめたページがあるのですけど、これと似た種類は載っていませんでした。

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