2019/12/15

交尾中のオオヒラタシデムシ♂が♀の触角を噛んで引っ張る性癖について



2019年8月中旬・午後15:45頃

河畔林の横の砂利道で交尾中のオオヒラタシデムシ♀♂(Necrophila japonica)が2ペアも居ました。
独身の(あぶれた)個体eが交尾中のペアcに近づいたので、♀の奪い合いが起こるかと期待したのですが、熱愛カップルの邪魔をしたり配偶者を奪ったりせずに慌てて逃げ出しました。
この独身個体eは♀なのかな?(私は外見によるオオヒラタシデムシの性別判定法を知りません。)

オオヒラタシデムシ♂は♀の背後からマウントし、交尾器を結合しています。

▼関連記事(5年前の撮影)
交尾中のオオヒラタシデムシ♂は♀の触角を噛む性癖がある

その場に残った交尾中の♀♂cペアに注目すると、♂は♀の左触角を咥えて引っ張っていました。
一方、その後方で交尾している別の♀♂dペアの♂は、♀の右触角を噛んで♀を保定していました。
交尾中の♂が♀の左右どちらの触角を噛むのか、特に決まりは無くてランダムなようです。
♂は甘噛みしているだけだと思いますが、交尾中に何かのはずみでうっかり♀の触角を噛み切ってしまう事故が起こらないのか、他人事ながら心配になります。

もしかすると、♂の大顎には♀の触角を噛み切らないようにする解剖学的な仕組みがあれば、面白いですね。
例えば♂の大顎は皮むきニッパーの刃先のようになっていて、♀の触角を噛んだときに挟んで収める凹みがあったりするのかもしれません。
♀♂が出会って交尾を始めるところから観察してみたいものです。
♂に触角を咬まれて引っ張られた途端に♀はおとなしく交尾を受け入れる体勢になるのでしょうか?
今回撮影した♀cは交尾中おとなしくしていたのに対して、♀dは交尾中も落ち着き無く動き回るじゃじゃ馬娘でした。

もし実験的に♀の触角を両方切ってしまうと、♂と交尾できなくなるのですかね?
だとすると、♂は交尾後の♀に浮気防止の貞操帯を付ける代わりに、別れ際に♀の触角を噛み切ってしまう戦略を採るかもしれない…と妄想を逞しくしました。
興味深いことに、♂cの左触角が欠損していました。
これは♂同士が喧嘩した結果なのでしょうか?
もし実験的に♂の触角を両方切ってしまうと、♀の性フェロモンを感知できなくなりそうな気がします。
したがって、♀をめぐる闘争でライバル♂の触角を噛み切るのは、有効な繁殖戦略かもしれません。

実はすぐ近くで別の♀♂ペアaも交尾していました。


つづく→交尾中のオオヒラタシデムシ♀♂が別れるまで



オオヒラタシデムシ♀♂d@交尾macro:左触角噛み
オオヒラタシデムシ♀♂d@交尾macro:左触角噛み
オオヒラタシデムシ♀♂d@交尾macro:左触角噛み
オオヒラタシデムシ♀♂c@交尾macro:右触角噛み

走って道を渡るキジ♂(野鳥)



2019年8月中旬・午後17:21

私が川沿いの堤防上の道を歩いていると、目の前の道をキジ♂(Phasianus versicolor)が慌てたように走って横切りました。
それまでは左側の草むらで採食していたようです。
最後は堤防の藪に駆け込んで隠れました。
道端の草むらに隠れていたスズメが驚いて少しだけ飛び上がりました。

一瞬の出会いを1/5倍速のスローモーションでリプレイ。
スピードを上げて走っているキジ♂は、視野を安定させるために頭部を前後に動かしません。

【参考】岩波科学ライブラリー『ハトはなぜ首を振って歩くのか』




私が夏に見かけるキジ♂は、いつもほっそりしたスリムな体形です。
これは若鳥♂なのか、それとも縄張り争いに明け暮れる春の繁殖期は体を膨らませていた(虚勢を張っていた)だけなのか、どちらなのでしょう?
暑い夏に換羽すると羽毛の量が減るのかな?


▼関連記事(前年の夏に撮影)
ソバ畑から逃走するキジ♂(野鳥)


キジ♂(野鳥)@逃走:道横断

エンジュの花で採餌中のオオハキリバチ♀に飛びついて交尾を迫る雄蜂♂



2019年8月上旬・午後16:00

民家の裏庭で満開に咲いたエンジュの蝶形花で採餌するオオハキリバチ♀(Megachile sculpturalis)を撮っていると、面白いシーンが撮れました。
この♀は腹部下面のスコパに黄色い花粉を満載しています。

訪花中の♀に背後から♂がいきなり飛びつき、2匹は一緒に落下しました。
オオハキリバチには儀式的な求愛行動は無く、いきなり♀を捕まえて交尾を試みるようです。
しかし♀が交尾拒否したのか、♂はすぐに諦めて飛び去りました。
顔色が白い雄蜂♂が最後に写っています。
偶然撮れた一瞬の出来事なので、1/5倍速のスローモーションでまずはご覧下さい。
その後に等倍速でリプレイ。

花盛りのエンジュの木ではオオハキリバチ♀が採餌活動に勤しむ間、多数の雄蜂♂が交尾相手を血眼になって探しつつ飛び回っています(探雌飛翔)。
既に交尾を済ませて採餌活動に専念している♀にとって♂はセクハラを繰り返し仕事の邪魔をする存在(お邪魔虫)でしかありません。


【参考図書】
佐々木陽一『オオハキリバチの交尾戦略―♂はどのようにして♀を獲得するか』(『無名のものたちの世界III』p40-70に掲載された総説)

オオハキリバチは雄性先熟です。
先に羽化した♂は、遅れて羽化してくる♀といち早く交尾するために巣の近くでひたすら待ち伏せ、♂同士が争うのだそうです。
処女♀をめぐる♂同士の闘争において大型の個体が有利ということが既に分かっています。
この先は私しぐまの想像ですが、あぶれた小型の♂は巣の近くでは勝ち目が無いので、♀が採餌する花の周囲で待ち伏せて、少ないながらも♀と交尾するチャンスに賭けているのかもしれません。
あるいは、このエンジュの大木のどこかに小さな樹洞があって、そこにオオハキリバチの巣があるという可能性も考えられます。




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