2012/10/20

林縁で閉鎖した巣穴を押し固めるジガバチ♀:後編



2012年7月中旬

前編からのつづき。

巣穴の本閉鎖中に近づいてきたアリを追い払いました。
雨が止み、日が射してきました。
休憩のため?今回は飛び去るのではなく歩いて巣から立ち去りました。
次に戻ってくると、蜂も巣口に被さる松葉が邪魔だったとみえ、大顎で咥えて横にどけました。

巣穴の本閉鎖が完了したとは思えないのですけど、蜂が戻って来なくなりました。
地面を偽装工作(カモフラージュ)する作業が残っている筈です。
夕刻になると活動停止するのでしょうか?
続きの作業は翌日に回すのかな?
私も観察を打ち切りました。
一匹のジガバチ♀で営巣活動の一部始終を見届けようとすると、なかなか大変です。

この日は辺りでジガバチが何匹も活動していました。
個体識別していないので、休憩から戻って来ては閉鎖作業を続ける蜂が本当に同一個体かどうか確証はありません。
作業中の蜂にマーキングを施すべきか迷いました。
しかし初めての観察はなるべく営巣行動を乱したくないという判断で今回は見送りました。


似我似我という発音について

新刊の『狩蜂生態図鑑』p102によると、

ジガバチの仲間は営巣のために土を掘るとき、翅が擦り合わされ「ジガ、ジガ…」と音を立てる。
昔の岩田久二雄氏の見解とは違うようですが、個人的にはこちらの方がしっくりきます。
実験的にジガバチの翅を根元から切り落としたり糊で固めたりすれば穴掘り時に鳴かなくなるだろうか?
次に機会があればジガバチ特有の鼻歌を声紋解析してみようと思います。
雨音ノイズが混入した今回は解析を見送りました。

『無名のものたちの世界I』p49によると、

たたきかためるとか、石槌だとかいう表現は不適当だということがわかった。というのは、この属のハチに固有の、顔面で土をおしかためる行動と、ひとたび大顎でくわえた物体をなかなかはなさないという傾向とかが、偶然にも、同時に起こった結果にほかならないことがわかったからだ。






2012/10/19

林縁で閉鎖した巣穴を押し固めるジガバチ♀:前編



2012年7月下旬

山道で蜂の羽音がするので近くの茂みを探すと、ジガバチ♀が作業中でした。
やや薄暗い林縁でコケの生えた斜面になっています。
周囲は里山の雑木林です(標高600m)。
蜂は巣坑に頭を突っ込んで似我似我♪鳴いています。
ジガバチの有名な鼻歌を聞くのはこれが初めてで、感動しました。
穴の周囲の土を齧り取っては巣坑に埋め、押し固めているようです。
初めはてっきり、掘削作業に手間取っているのかと勘違いしました。
ところが巣坑を掘っているにしては全く捗らず、掘った土を掻き出す仕草も見られません。
おそらく貯食・産卵を終えてから巣穴を念入りに閉鎖している状況だと思われます。

雨が降っても蜂は気にせず作業を続けます。
ジガバチは押し固めに道具の小石を使うことが有名ですけど、よく見えません。
正面から観察したいのに茂みのせいで撮影アングルが確保できず、なんとももどかしい…。
枯れた松葉が巣口に被さっているのも邪魔です。
やがて疲れたのか、蜂は触角を一撫ですると飛び去りました。
近くで雨宿りしながら蜂の帰りを待ちます。


しばらくすると蜂が同じ場所に戻って来て作業を再開。
マクロモードでレンズを近づけ、似我似我♪という鳴き声を間近で録音できました。
蜂は作業を中断すると口に砂粒を咥えて再び飛び去りました(休憩?)。
砂粒を運んだ(捨てに行った?)というよりも大顎に挟まったまま外出した、というのが正しいのかもしれません。

休憩だと思うのですが、作業を中断する度にどこで何をしているのか不明です。
栄養補給のための訪花か、あるいは巣の閉鎖に使う手頃な石鎚を探しに出かけたのでしょうか?

横にはいかにも掘り易そうなの裸地(砂地)が幾らでもあるのに、どうして粘土質の場所を営巣地に選んだのだろう?

  1. ヤマジガバチなのかサトジガバチか見分けられませんが、種に固有の好みで営巣地を選定したのだろうか? (ミカドジガバチの可能性は?) 後日、同じフィールドで捕獲した♀♂はヤマジガバチと写真鑑定して頂きました。
  2. 雨が降ることを予測して、浸水する裸地を避けた?
  3. 天敵の寄生ハエや蟻に邪魔されない場所を選んだというのが私の仮説です。後日、近くの裸地で営巣を試みたジガバチ♀は数多くの天敵に悩まされてひどい目に遭っていました。
後編につづく。

【参考】
基本情報として、サトジガバチの巣は地中掘坑型。造巣先行型で単房巣の狩蜂です。(『狩蜂生態図鑑』p25、42より)

『ハチの生活』p75より

(ジガバチは)大顎で掘り起こすときに、似我似我という音を立てます。これは翅を動かさずに立てる翅音で、ファーブルは鼻歌と読んでいます。
同書p79より
永久の戸締り。入口に近い地面を、大顎でわざわざ掘り起こします。同じ地点を何度も削るので、そこにくぼみができます。
『ファーブル写真昆虫記1ますい針をもつかりうど』p2より
ジガバチは、石灰質の砂に、少しばかり粘土の混じった、崩れにくく、掘りやすい地面を選びます。そういった場所は、小道の脇や、芝草の生えていない、日のよく当たる斜面に多いものです。
『昆虫学五十年:あるナチュラリストの回想』p23より
ちょうど振動コンパクターのように、唸るような断続音をたてる。実際に翅を動かさずに、それを動かすはずの筋肉だけを収縮させて力む時の音である。これは多くのアナバチがとくに力む必要がある時に立てる音で、別に珍しいことではない。



営巣地の全景

更に引きの絵にするとこんな感じです。


2012/10/18

カノコガ(蛾)の交尾:恋の逃避行



2012年7月下旬

交尾していたカノコガを撮り始めたら、連結したまま慌てて逃げ出しました。
二人三脚ならぬ二蛾十二脚ですね。
逃走中も翅は広げたままでした。
板壁を登って隙間に隠れたと思いきや、再び出てきてコンクリート壁に静止。


腹部が大きいものが♀とのこと。さてどっち?


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