2024/03/25

地下に巣穴を掘った土を分業で外に捨てるクロオオアリ♀の群れ

 

2023年7月上旬・午後14:55頃・くもり 

里山で山道の真ん中に乾いた盛り土がこんもりと堆積していました。 
細い落枝が盛り土で埋もれかけています。 
よく見ると、盛り土の縁にクロオオアリCamponotus japonicus)の巣口が2つ並んでいるのを見つけました。 
ワーカー♀が巣内を掘り広げた土塊を大顎に咥えて外に続々と出て来ると、巣口から離れたところでポトリと捨てます。
1箇所に捨てた土砂が盛り土を形成しているのです。 
地中から掘り出したばかりの土塊は湿っていて黒っぽいですが、巣外で乾くと白っぽくなります。 
したがって、盛り土の色の違いをよく見るだけでも、排土作業の様子を窺い知ることが出来ます。

普通種なのに、クロオオアリの造巣行動(排土行動)をじっくり観察するのはこれが初めてでした。 
巣口横の盛り土が次第に成長する様子を長時間の微速度撮影で記録してみたかったのですが、残念ながらこの日は三脚を持参していませんでした。 
「小さなことからコツコツと」「塵も積もれば山となる」 

土粒を捨てに行く地点は個体によって決まっているのか(道標フェロモンを分泌しているか?)、それとも毎回ランダムなのか、個体標識して調べたら面白そうです。 
遠出しないで巣口のすぐ外に砂粒を捨てる個体は臆病なのか、それとも要領が良い(ちゃっかりズルしている)のでしょうか? 
しばらくすると驚いたことに、巣内から巣口Lまで土塊を運ぶ個体(地下部隊)と、巣外で巣口Lから土捨て場まで運んで往復する個体(地上部隊)とで、分業が始まりました。 
女王アリや現場監督に指示された訳でもないのに、分業が自然に生まれるのは凄いですね。 
分業によって各個体が往復する距離を短くできますから、流れ作業の効率が上がるはずです。 
火事の消火現場に集まったヒトがバケツリレーをするのも同じ理由です。
帰巣Lするのに邪魔な砂粒を取り除く行動が結果的に分業になっているだけかもしれません。 
クロヤマアリなど他の種類のアリでこのような分業を私はこれまで見たことがありません。

巣穴は内部でつながっていると思われますが、クロオオアリ♀は2つの巣口を使い分けているようです。 
排土のために出てくるのはいつも左の巣穴Lで、右の巣穴Rには採餌のために出入りしています。 
土塊を外に捨ててから巣内に戻る個体は必ず真っ直ぐ帰巣Lし、巣口Rには入りません。 
( 巣口Rから出て巣口Lに入る個体がたまにいました。 )
空荷で出巣Rする個体は採餌に出かけるのでしょう。 

ひときわ大型の個体が何匹も巣口Rの外に出てきて身繕いしています。 
大型の個体は力が強いはずなのに、造巣・排土行動に従事しない点が興味深く思いました。 
巣外で仲間を護衛するソルジャー(兵アリ)なのかな? 

巣口Lからアリの触角だけ覗いて見えます。 
外敵が侵入しないように、門衛が見張りを務めているのでしょう。 
門衛は穴掘り・排土作業に従事することはなく、専業のようです。 

山道に転がっている細い落枝が盛り土で埋もれかけているのは果たして偶然でしょうか? 
クロオオアリにとってこの落枝が邪魔で取り除きたくても非力で動かせないとしたら、仕方なく土砂で埋めようとしているのかもしれません。 
邪魔な障害物を土砂で隠すアリの集団行動をテレビの動物番組で見たことがアリます。 

後半は採寸のために、土捨て場の小山の横に15cmの白いプラスチック定規を置いてみました。 
定規という邪魔な異物を巣口の横に一時的に置くだけでなく、もしも長期間放置したら、アリは土砂で埋めるかな? 


 

↑【おまけの動画】 
クロオオアリの巣穴を見つけた私が、動画を撮り始めてすぐの様子です。 
巣口の近くから見下ろしている私を警戒しているのか、クロオオアリ♀は土塊を咥えて遠くまで捨てに行かなくなりました。 
巣口からおそるおそる顔を出しても、すぐに奥へ引っ込んでしまいます。 
アリの視力が悪くても、私の作る大きな影を恐れているようです。 
あるいは、じっと撮影しているつもりでも私の靴底から生じる微弱な振動が地中のアリには気になるのかも知れません。
一方、空荷で外出から帰巣する個体は私の存在を気にしていません。 

そこで試しに、巣口のアリから私の姿が見えないように、数歩横にずれてから続きを撮るようにしました。 
するとアリはようやく警戒を解いてくれて、巣外に土砂を捨て始めたのです。 
冒頭で紹介した動画がそれです。
私が巣口から遠くに離れるほど、アリたちはリラックスして自然な行動を見せてくれるようになった気がします。
退屈な前編を編集でただ捨てる(カットする)のは惜しいので、私的な記録としてブログ限定で公開しておきます。 
あるいは何か別の理由で巣外に出てこれなかったのかも知れません。 

余談ですが、近くでひたすら鳴き続けているホトトギス♂(Cuculus poliocephalus)の囀りさえずり♪が今まで聞いたことのない独特の節回し(方言? 変奏曲?)で印象に残りました。 


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2024/03/24

前の家主ニホンアナグマが一時帰宅した匂いを巣口に嗅ぎ取ると居候のホンドタヌキは慌てて逃走【トレイルカメラ:暗視映像】

 



2023年7月上旬〜中旬 

ニホンアナグマMeles anakuma)の家族が転出した後もトレイルカメラ2台で古い巣穴の監視を続けています。 
この時期に写ったホンドタヌキNyctereutes viverrinus)の動向をまとめました。 


シーン1:7/9・午後15:45・くもり(@0:00〜) 
旧機種のトレイルカメラにしては珍しく、昼間にフルカラーで録画されていました。 (気まぐれな症状)
この時期のタヌキ成獣(親タヌキ)が明るい日中も活動するのは、育ち盛りで腹を空かせた幼獣に餌を取ってくる必要があるのでしょう。 
アナグマの巣口Rを覗き込んでいます。(左右2つの穴が並んでいます。) 
散々ためらった挙句に、結局中には入らず、左へ立ち去りました。 

尻尾に特徴的な黒班があるかどうか、しっかり後ろ姿を見せてくれませんでした。 
アブなのかハエなのか分かりませんが、昼間に巣穴の周辺を常に飛び回っているということは、完全な空き巣ではなく依然として何者か獣が巣穴を利用していることを示唆しています。 


シーン2:7/9・午後15:46・くもり・気温27℃ (@1:00〜) 
同じ時刻に別アングルに設置した監視カメラでも撮れていました。 
画面の左端にちらっと写っただけで、巣口Lには行かず、左奥に?立ち去りました。 


シーン3:7/9・午後21:47(@1:07〜) 
同じ日の晩にもタヌキが来ていました。 
夏毛のタヌキは、かなりほっそりした体型に見えます。 
目が大きく爛々と光っていますし、初めはハクビシンかと思ったぐらいです。 

夜のアナグマ営巣地(セット)にタヌキが堂々と来るということは、ここにはもうアナグマ一家は住んでいないのでしょう。 
巣口Rの縁を回り込んで慎重に匂いを嗅いでから、巣穴Rの中にそっと入りました。 

白っぽい尻尾の中央部に滴状の小さな黒班▼がある個体でした。 
今はこの個体のタヌキがアナグマの巣穴Rをねぐらとしてときどき利用しているようです。 
ただの内見(偵察)だった可能性もありますけど、出巣Rするシーンは撮れていません。 


シーン4:7/11・午前8:51・晴れ・気温25℃(@2:07〜) 
次にタヌキの姿が写ったのは、2日後の午前中でした。 
2つの巣口LRの間を歩いて通り、巣口Rの横で立ち止まりました。 

林床の木漏れ日が美しく撮れています。 
二次林の葉が鬱蒼と生い茂り、林冠ギャップがほとんどありません。 


シーン5:7/11・午前8:52・晴れ・気温25℃(@2:36〜) 
同じ時刻に別アングルのトレイルカメラでも撮れていました。 
旧機種に特有の症状で、昼間なのにフルカラーで録画されません。 

タヌキが巣口Rの横を通り過ぎてから林縁の獣道で立ち止まり、身震いしてから再び歩き出しました。 
左奥を気にしています。 
尻尾に例の黒斑▼があるような気もしますが、後ろ姿をしっかり見せてくれませんでした。 


シーン6:7/11・午前16:13・(@2:58〜) 
同じ日の夕方近くにタヌキがまた奥の二次林から登場。 
獣道を辿ってまっすぐ巣口Rへ向かってきたものの、中には入りませんでした。 
巣口の匂いを嗅ぐと、慌てて右へ走り去りました。 
音量を上げてもアナグマが威嚇する鳴き声♪は聞き取れず、直後にアナグマのヘルパー♂が巣口Rから顔を出すこともありませんでした。 
実は同じ日の夜明け前にアナグマのヘルパー♂が営巣地(セット)に戻って来ており、巣穴Rにも出入りしていたことが動画に残されていました(映像公開予定)。 
前の家主の残り香を嗅ぎ取って、慌てて退散したのでしょう。

タヌキとアナグマの動画を別々に切り分けて編集してしまいましたが、今思うと単純に時系列順に見せた方が分かりやすかったですね。

空き巣を巡って直接的な闘争(争奪戦)はなくても、匂い付けで所有権を互いに主張し合っているらしく、タヌキとアナグマ(同じ穴のむじな)の間で興味深い攻防戦(心理戦?)が続きます。 
つまり、タヌキは力づくでアナグマの巣穴を乗っ取った訳ではありません。

※ 動画の一部は編集時に自動色調補正を施しています。 


【参考文献】
島田将喜; 落合可奈子. アナグマ (Meles anakuma) とタヌキ (Nyctereutes procyonoides) が利用する巣穴付近における行動の違いと時間的ニッチ分化. 哺乳類科学, 2016, 56.2: 159-165.
全文PDFが無料でダウンロードできます。
センサーカメラで撮れた動画を統計的に細かく解析した研究で、興味深く拝読しました。
アナグマが掘った巣穴にタヌキが侵入し、2種が同じ巣穴を利用する時間帯をずらして住み分けることがよくあるそうです。
アナグマとタヌキは時期,時間帯をずらして同一の巣穴を利用することによって,両種が時間的ニッチ分化を実現していることが示唆された.タヌキはアナグマに比べて巣穴付近での探索行動の持続時間が長く,その割合も多かった.アナグマは巣穴内をより頻繁に利用することが示唆された.タヌキは嗅覚を用いた探索行動をおこなうことで,アナグマとの出会いを回避しつつ巣穴を共有しているものと考えられる. (論文の概要より引用)



つづく→怪我した右後脚をかばって3本足で痛々しく跛行するホンドタヌキ♂が排尿マーキング【トレイルカメラ】


山道で死んでいたオオスズメバチ♀の謎

2023年7月上旬 

里山の急峻な山道でオオスズメバチ♀(Vespa mandarinia japonica)の死骸を見つけました。 
複眼が白く変色しています。 
足先以外は目立った外傷や破損がありませんし、おそらく昆虫病原菌や虫カビに感染して斃死したのでしょう。 
いつ死んだのか、死亡時期が私には分かりません。 
昨シーズンのワーカー♀が死んで雪の下に埋もれていたとしたら、夏までに死骸がここまできれいに残らず分解されてしまう気がします。 
例えば、なぜアリが群がってオオスズメバチ♀の死骸を解体し巣に持ち去らなかったのか不思議です。
それとも越冬明けの創設女王が感染してしまったのでしょうか。 
心臓破りの急坂を登る途中だったため、体長を採寸するなどじっくり調べる余力がありませんでした。 

素人目には、これから冬虫夏草の一種ハチタケが育ちそうな予感がしたのですけど、定点観察に通えばよかったですね。 
しかし山道の真ん中に転がっていたので、たまに往来する登山客やタヌキなどの野生動物に踏まれてしまいそうです。 
かと言って、もしオオスズメバチの死骸を採集して持ち帰ったとしても、室内でハチタケが成長できる最適の培養条件(温度、湿度)が分かりません。

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