2024/03/16

ニホンアナグマ家族が転出した後の巣穴に不法侵入するハクビシン【トレイルカメラ:暗視映像】

 

2023年7月上旬・午前4:00頃・気温19℃・日の出時刻は午前4:19。 

ニホンアナグマMeles anakuma)の母子が転出した後の巣穴をトレイルカメラで監視し続けていると、夜明け前にハクビシン(白鼻芯、白鼻心;Paguma larvata)がやって来ました。 
アナグマ営巣地(セット)のある平地の二次林でハクビシンを見かけるのは初めてです。 
手前の巣穴Lへ慎重に忍び寄り、画角の外に姿を消しました。
カメラの設置アングルがいまいちだったせいで、巣穴Lの中までしっかり入ったかどうか、見届けられませんでした。 
巣穴Lを内見しただけかもしれませんが、出巣Lする様子は撮れていません。 

てっきりホンドタヌキNyctereutes viverrinus)がアナグマの空き巣を乗っ取り、ねぐらとして使っているのかと思ったのですが、事態はより複雑で、一筋縄ではいきません。
アナグマのヘルパー♂がたまに戻ってきたり、ホンドタヌキ(尻尾に黒点▼) が塒として使ったり、通りすがりのハクビシンが侵入を試みたりと流動的で、空き巣の争奪戦になっているようです。

アリストテレスは「自然は真空を嫌う」という科学史では有名な言葉を残しています。 
※ 容器にポンプをつないで陰圧にすると、普通の容器は体気圧によってぺしゃんこに押し潰されてしまいます。今となってはアリストテレスの素朴な自然観は否定(修正)されています。強力な真空ポンプと頑丈な密閉容器を発明したことで(技術革新)、後世の人類は真空状態を作り出し、真空の宇宙空間にも進出しました。

この名言は、物理学的な真空現象についてだけでなく、生態学的な暗喩(メタファー)にもなっています。 
つまり、自然界の生き物はニッチの空白(真空地帯)を嫌って、周囲からどんどん侵入して来るのです。 
アナグマ家族が健在だった頃は、営巣地の周辺で排尿マーキングをしたり、臭腺・肛門腺によるスクワットマーキングしたりして、縄張り宣言していました。
嗅覚が退化している我々ヒトには全く分かりませんが、匂い付けで縄張りに結界を張っているのでしょう。
それでも営巣地に侵入してくる不届き者に対しては、アナグマ♀が吠えながら突進して追い払っていました(縄張り防衛の実力行使)。
充分に育った幼獣を引き連れてアナグマ一家がよその巣穴へ急に転出すると、それまで住んでいた巣穴の付近からアナグマの匂いが急速に薄れてしまいます。
その結果、新たな侵入者を招くことになるのでしょう。
自力では巣穴を掘れないのに巣穴で暮らしたがる哺乳類は多く、アナグマが掘った空き巣は引く手あまたの優良物件となっています。



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セイヨウタンポポの花蜜を吸うウラギンヒョウモン♂と謎の寄生蜂

 

2023年6月中旬・午前9:10頃・晴れ 

水田の畦道に咲いたセイヨウタンポポウラギンヒョウモン♂(Fabriciana adippe)が訪花していました。 
この組み合わせは初見です。
タンポポの頭花に乗ってゆっくり回り、翅を軽く開閉しながら長々と吸蜜しています。 
前翅の表側に性斑(性標)の黒条が見えたので♂と分かります。 

撮影中には気づかなかったのですが、長い産卵管を持つ黒くて小さな寄生蜂♀(コマユバチ科?)が同じセイヨウタンポポ頭花に何度も飛来、訪花していました。 
小さい寄生蜂の存在をウラギンヒョウモン♂は全く気にせず(眼中になく)、花蜜に夢中です。 
蝶の成虫に産卵するタイプの寄生蜂♀を私は見聞きしたことがありません。 
訪花中のウラギンヒョウモン♂に謎の寄生蜂♀は積極的に近づいたり触れたりしませんでした。 
チョウの♀が食草に産みつけた直後の卵に産卵するために、寄生蜂♀がチョウ♀を尾行しているとしたら非常に面白いのですが、今回のウラギンヒョウモンは♂です。 
卵に産卵するタイプの寄生蜂の産卵管は、これほど長くない気がします。 
なんとなく、鱗翅目(チョウ・ガ)の幼虫や蛹に産卵するタイプの寄生蜂のような気がします。 
したがって、今回撮れた2種のニアミスは偶然(たまたま)だと思います。 

最後にようやく飛び立ったウラギンヒョウモン♂は、すぐに同じセイヨウタンポポ頭花に舞い戻りました。 
よほど花蜜の量が多いのでしょう。 
周囲の湿地帯からオオヨシキリ♂(野鳥)やヒヨドリの鳴く声♪が聞こえます。 

寄生蜂の思わせぶりな行動をじっくり見るために、1/5倍速のスローモーションでリプレイしてみましょう(@3:00〜)。 
複数(2、3匹)の寄生蜂が繰り返し飛来していました。 
隣のタンポポの葉に一旦止まって様子を窺っている個体もいます。 
田んぼの畦道には他にも花が点々と咲いているのに、なぜ寄生蜂は特定のセイヨウタンポポの頭花に複数個体が集まり、しかも執着しているのでしょうか? 
そう考えると、やはり吸蜜中のウラギンヒョウモン♂に寄生蜂♀は興味があるのだろうと思いたくなります。 
タンポポの花に潜り込んで吸蜜していた寄生蜂が飛び上がり、ウラギンヒョウモン♂の前翅に一瞬だけ着地していました。(@3:53〜) 
果たしてこの接触事故は偶然でしょうか? 
蝶にぶつかったのは一度だけですから、蜜源植物を巡って占有行動をしている、つまり寄生蜂♀が自分よりもはるかに大きな蝶に体当りしてタンポポの花から追い払おうとしている、とは考えられません。
もしも、蝶の翅にぶつかった瞬間に寄生蜂♀が素早く産卵していたら、大発見です。 
しかし蝶の成虫に体内寄生しても、寄主の寿命が短ければ寄生蜂の幼虫が無事に育つのは難しいでしょう。 
私が気づかなかっただけで、実はこのセイヨウタンポポの花には寄生蜂♀の本来の寄主である何か幼虫(イモムシ、毛虫)が潜んでいたとか、その食痕があったのかもしれません。


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2024/03/15

ニホンアナグマの溜め糞場で野ネズミが食べている物とは?【トレイルカメラ:暗視映像】

 


2023年6月下旬・午前2:40頃 

平地のスギ防風林にあるニホンアナグマMeles anakuma)の溜め糞場stmpで深夜に野ネズミ(ノネズミ)が何かを食べていました。 
残念ながら食べているメニューを映像から見極められませんでしたが、3つの可能性が考えられます。 
さすがにアナグマの糞(軟便)そのものは食べないはずです。 

(1)糞塊に蠢く糞虫やウジ虫など食糞性の昆虫類(分解者)。 
栄養価も高く、数としては圧倒的に多いはずです。 

(2)溜め糞の糞便臭に誘引されて飛来する夜行性の蛾。 
この動画の最後でも夜蛾が飛来しました。 
直後に野ネズミが夜蛾に襲いかかったかもしれないのに、狩りの瞬間を撮り損ねてしまって残念無念。 

(3)溜め糞に含まれる未消化の種子。 
アナグマの主食はミミズと言われていますが、実際は雑食らしいです。 
前日の昼間に撮った溜め糞stmpの写真に未消化の種子と思われる小さな粒々がしっかり写っていました。 
下に再掲します。 
いつか糞の内容物をしっかり調べれば、アナグマによる種子散布の実態も分かってくるはずです。(なかなか忙しくて余力がありません)




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溜め糞stmpの左の表面に未消化の種子

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