2018/12/29

ヒミズの腐乱死体に飛んで集まるヨツボシモンシデムシ



2018年9月下旬
▼前回の記事
ヒミズの死骸に群がるキンバエとクロオオアリ♀

舗装された山道に転がっていたヒミズUrotrichus talpoides)の腐乱死体を観察していると、オレンジ色の昆虫がブーンと羽音を立てながら低空で飛来しました。
一瞬スズメバチかと思いきや、死骸めがけて飛んで来た新参者の正体はヨツボシモンシデムシNicrophorus quadripunctatus)でした。
飛んでいる姿を見るのはこれが初めてで、とても興奮しました。
飛翔シーンは一瞬なので、まずは1/5倍速のスローモーションでご覧下さい。

飛来したヨツボシモンシデムシはすぐに死骸の下に潜り込みました。
死骸がゾンビのように勝手に動いているように見えるのは、ヨツボシモンシデムシの活動のせいです。
ゴソゴソと死骸が動いてもキンバエは逃げずに平気で吸汁を続けています。

しばらくすると、死骸の上面に1匹のヨツボシモンシデムシが来て死肉を食べていました。
その体表を橙色のダニが多数徘徊しています。
そのヨツボシモンシデムシも再び死骸の下に潜り込みました。

新たにもう1匹のヨツボシモンシデムシが死臭に惹きつけられて飛来したものの、なぜか着陸せずに飛び去りました。
低空で飛ぶシーンを1/5倍速のスローモーションでリプレイ。

さて、ヨツボシモンシデムシはヒミズ死骸の裏で何をしているのでしょうか?
拾った小枝で死骸を裏返してみると、2匹のヨツボシモンシデムシが潜んでいました。
私には性別が見分けられないのですが、これは♀♂のつがいなのかな?
ところがすぐにまた死骸の裏面に慌てて隠れてしまいます。
一旦死骸に辿り着くと、日光を嫌う習性があるようです。
しつこく更にもう一度死骸を裏返すと、またもやヨツボシモンシデムシは逆側に潜り込んで隠れました。

※ 動画編集時に自動色調補正を施しています。

タッパーウェアなどの容器を持っていれば、ヨツボシモンシデムシを採集し死骸と一緒にお持ち帰りしたいところです。
ヨツボシモンシデムシは甲虫としては珍しく育児(子育て)をすることで有名なので、いつか飼育下で観察してみたいのです。
またの機会にお預けです。(夏に部屋でシデムシに腐肉を与えて飼うのはかなりの覚悟が必要ですね)







▼関連記事(10年前の撮影)
ヒミズ死して屍拾うものあり(中編):ヒミズ死骸とヨツボシモンシデムシ

10年前の観察例では土の地面にヒミズの死骸が置かれていました。
ヨツボシモンシデムシが何匹も死骸の下に次々と潜り込み、仰向けに歩くように足を動かすことで重い死骸を少しずつ運んでいました。
今回の現場はアスファルトの舗装路なので、ヨツボシモンシデムシは死骸を地中に埋葬して独占するのは不可能です。
死骸を運びつつ路肩の地面を目指して舗装路を横断中だったのかもしれません。

つづく→ヒミズ死骸の肉片をクロヤマアリから守るクロオオアリの群れ




【追記】
ベルンド・ハインリッチ『生から死へ、死から生へ:生き物の葬儀屋たちの物語』という翻訳書を読んでいたら、北米産モンシデムシの飛翔について嘘みたいな驚くべきことが書いてありました。
日本のヨツボシモンシデムシ(Nicrophorus quadripunctatus)とは別種なのですが、同属のNicrophorus tomentosusおよびNicrophorus orbicollisの2種は後翅を羽ばたいて飛ぶ際に鞘翅が裏返しになって裏面(下面)のレモンイエローが外側を向き、黄色のマルハナバチに擬態するというのです。(p31〜33より)


そんな奇天烈な翅を持つ甲虫を私は知らなかったので、自分で撮ったこの動画を急いで見直してみました。
しかし、飛翔時のヨツボシモンシデムシの翅はレモンイエローではなく、鞘翅表側のオレンジ色の残像しか見えませんでした。
(だから私はスズメバチが飛来した!と現場で一瞬錯覚したのです。)
次に機会があれば、ヨツボシモンシデムシの飛翔シーンをハイスピード動画で撮ったり、採集して鞘翅の裏面をじっくり調べてみたくなりました。
北米産の2種(N. tomentosus, N. orbicollis)だけが特殊なリバーシブルの鞘翅を持っているのかな?
それ以外の習性については日本産のモンシデムシとほぼ共通していただけに、裏返る鞘翅の話が強烈な印象に残りました。
日本産のモンシデムシがそのような翅に進化しなかったのは何故でしょう?
日本には黄色のマルハナバチと言えばコハナバチ♂ぐらいしか生息しておらず、雄蜂には毒針がありませんから、怖くない蜂にベイツ擬態するメリットが無かったためと考えられます。




ヨツボシモンシデムシ+キンバエspp+クロオオアリ♀群れ@ヒミズ死骸
ヨツボシモンシデムシ+キンバエspp+クロオオアリ♀群れ@ヒミズ死骸

川の倒木で羽根を乾かしながら脱糞するカワウ(野鳥)



2018年9月下旬

岸から倒れて川に張り出したままになっている倒木(おそらくニセアカシア)に一羽のカワウPhalacrocorax carbo hanedae)が止まっていました。
カワウはこちらに背を向け(下流を向き)、大きく広げた翼を軽く動かすようにして濡れた羽根を乾かしています。
この止まり木は以前にも一度カワウが利用しているのを見ていたのですが、夏になると周囲の草木が生い茂り、対岸からは観察できなくなってしまいます。


▼関連記事(前年の5月に撮影)
川岸の倒木で羽繕い、脱糞するカワウ(野鳥)

少し遠くなるのですけど、上流の別アングルから撮影できるポイントをこの日はたまたま見つけて嬉しくなりました。

日光浴中のカワウが尾羽根を持ち上げると、白い液状便を勢い良く川に排泄しました。
排便直後に尾羽根を左右に激しく振り、軽く身震いしました。
排泄中も翼は広げたままでした。
飛び立つ前に軽量化したのかと思いきや、その後ものんびり日光浴を続けています。

中川雄三『水辺の番人 カワウ (月刊たくさんのふしぎ2017年11月号)』によると、

カワウは水かきをもつにもかかわらず、上手に枝をつかむことができます。多くの鳥は前に3つ、後ろに1つのゆびをもちますが、カワウは前だけに4つのゆびがあり、それぞれのゆびの間に水かきがあります。この4つのゆびを使い、木をぎゅっとつかむのです。(p20-21より引用)

この記述を自分でも確かめてみたいのですが、ブラインドを使うなどして、もっと近づかないといけませんね。

※ 動画編集時に自動色調補正を施しています。



【追記】
ウの仲間は尾脂腺が発達していないので、羽毛が水をはじきにくく、翼を広げて乾かす姿がよく見られる。 (孝森まさひで『フィールド版 カモ類の観察』p23より引用)


カワウ(野鳥)@川倒木+日光浴:羽根乾燥
カワウ(野鳥)@川倒木+日光浴:羽根乾燥

2018/12/28

チャイロスズメバチ♀の探餌飛翔



2018年9月下旬

山間部の峠道の横に生えたアカソの群落でチャイロスズメバチVespa dybowskii)のワーカー♀が飛び回っていました。
アカタテハやフクラスズメの幼虫などアカソを食べて育つ幼虫(イモムシ)を狩ろうと探し回っているのでしょう。

※ 動画編集時に自動色調補正を施しています。


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