2018/11/17

メタセコイアの葉に止まり身繕いするセグロアシナガバチ♀



2018年7月下旬

セグロアシナガバチPolistes jokahamae)のワーカー♀がメタセコイア(=アケボノスギ)の葉に止まって念入りに身繕いしていました。
飛び立つ直前に向きを変えて後ろ姿になったとき、前伸腹節に黄色紋が無かったので、セグロアシナガバチと確定しました。
私のフィールドでセグロアシナガバチはやや珍しい(希少な)アシナガバチなので、ちょっと嬉しい出会いでした。

※ 動画編集時に自動色調補正を施しています。


セグロアシナガバチ♀:側面@メタセコイア葉+身繕い
セグロアシナガバチ♀:背面@メタセコイア葉+身繕い

止まり木の周囲で飛行訓練を繰り返すチゴハヤブサ幼鳥の群れ(野鳥)



2018年8月中旬


▼前回の記事
チゴハヤブサ親鳥に餌乞い♪し、ヤンマを給餌してもらう幼鳥(野鳥)

逆光のアングルを解消するため、撮影の合間に私は少しずつ移動しています。
その間に上空をチゴハヤブサFalco subbuteo)が飛び回っていました。
ヒノキの樹冠では3羽の家族群が枯れた横枝に止まって留守番しています。(上段に幼鳥1羽、下段に親鳥と幼鳥の2羽が並んでいます。)
こちらを向いて止まっている個体の胸の縦縞模様が見えるようになりました。

もう一羽が飛来し、家族群の頭上を高速でかすめるように飛び去りました。(@0:23)
1/5倍速のスローモーションでじっくり見ると(逆光で分かりにくいのですが)、飛んできたのもおそらく幼鳥のようです。
止まり木の上段に居た幼鳥が怯えて翼を広げ、バランスを崩しかけたものの、なんとか踏みとどまりました。
巣立ち後に飛べるようになったのが嬉しくて、幼鳥が飛行訓練しながらふざけるように止まり木の兄弟に見せつけているような印象を受けました。(遊びの威嚇・挑発?)
躊躇している兄弟の飛び立ちを促しているのでしょうか?

しばらくすると、横枝の下段の左側に居た親鳥が力強く羽ばたいて飛び立ちました(@1:13)。
隣の幼鳥に巣外給餌した親鳥が今まで休憩していたのです。
これで止まり木に留守番しているチゴハヤブサは、上下段に1羽ずつの幼鳥が計2羽になりました。

私が止まり木に更に近づくと、下段にこちらを向いて止まっている幼鳥がキーキーキー♪と甲高い声で餌乞いしている姿をばっちり撮ることができました。(@1:29〜)
下から見上げズームインすると、図鑑の記述通りチゴハヤブサの翼は長く、翼を畳んで止まっているときに尾羽の先を越えることが確認できました。
数匹のスズメバチがヒノキの梢でチゴハヤブサの周囲を飛び交っているのが興味深いです。(別記事で書きます。)

下段の個体aに注目している間に、上段に居た個体が止まり木から右下へ飛び去りました。(@1:44〜)
1/5倍速のスローモーションで見ると、成鳥ではなく幼鳥でした。
飛び去る兄弟の姿を幼鳥aは目で追いましたが、つられて飛び立つことはありませんでした。
止まり木に独り残った幼鳥aは餌乞い♪の声を発し続けています。

飛び立った元気な幼鳥2羽がヒノキ高木の周囲を高速旋回しながら追いかけっこしているようで、続けざまに画面を右から左へ横切りました。
(@2:19〜)

ようやく順光で撮れるアングルを見つけました。(@2:52〜)
しかし今度は、手前に繁ったヒノキの枝葉で止まり木(枯れた横枝)の一部が隠れてしまうため、一長一短です。
飛び回っていた個体も相次いで横枝に戻って来て休んでいます。

止まり木の上段で真上を向いていた個体が横枝を蹴って下に飛び去りました(@3:19〜)。
スローモーションで見ると、赤褐色なのは後脚の脛の羽毛だけで下腹部は茶色でないことが順光ではっきり確認できたので、間違いなく幼鳥です。
左の横枝に居たもう2羽の幼鳥が相次いで左下へ飛び去り、止まり木には誰も居なくなりました。
この家族群の幼鳥は発育段階に若干のばらつきがありそうですが、全員が一応飛べるようです。

つづく→チゴハヤブサ幼鳥が餌乞い♪する止まり木とスズメバチ(野鳥)


2018/11/16

夜明けの山中を群れで飛ぶ謎のヤンマ【暗視動画&HD動画&ハイスピード動画】



2018年8月中旬・午前4:49〜5:18(日の出時刻は4:51)

里山で定点観察しているコナラの樹液酒場を夜明け直前に観察していたら、耳元で聞こえる昆虫の羽音が気になりました。
樹液目当てに飛来したスズメガ類がホバリング(停空飛翔)しているのかと初めは想像したのですが、振り返ってみるとその正体は意外にもトンボでした。
丑三つ時の里山に登ってきた今回の定点観察で一番興奮した収穫はこれでした。
通い慣れたフィールドも、時間帯を変えてみると新たな発見がありますね。

暗がりで目を凝らすと大型のトンボなので、おそらくヤンマの仲間でしょう。
まずは赤外線の暗視カメラで撮ってみました。
「群飛」と呼べるほどではありませんが、複数個体が代わる代わる飛来し、林縁のコナラ樹液酒場のすぐ横をひたすら往復しています。
撮影地点は林道の横の崖を少し登ったところです。
斜面の山側は雑木林で少し藪になっているのですが、トンボは林の奥には行かずに、開けた谷側(林道沿い)を好んで飛んでいるようです。

コナラの樹液酒場に群がる小さなショウジョウバエなどを捕食しに来たのでしょうか?
それとも樹液とは無関係で、明け方に林縁を飛んで往復する習性があるのかもしれません。
現場の近くに沢や水場はありませんでした。

東の空に太陽が昇り少し明るくなったので、通常のHD動画に切り替えました。(@1:32〜)
実際は未だ暗いのですけど、動画編集時に自動色調補正を施して、無理やり明るく加工しています。

明け方の雑木林の林縁を飛んで往復するヤンマ類を240-fpsのハイスピード動画でも撮ってみました。(@1:59〜)
どこに置きピンするか難しいのですが、適当です。
光量不足でかなり粗い画質です。
スローモーションで見れば、暗くて羽ばたきは分からなくともトンボであることは確実です。


井上清、谷幸三『トンボのすべて 第2版改訂版』によると、

これらの種はおもに日中は藪陰などで眠っていて、夕方薄暗くなりかけ、気温が下がり始めると飛び出します。これを黄昏飛翔(たそがれひしょう)と言います。この時間帯に飛ぶ小昆虫を摂食するためですが、交尾する種もあります。黄昏飛翔は夜明け前の薄暗い時間帯にも見られます。
 黄昏飛翔は大空を駆けめぐる種ばかりでなく、低いところを忙しく飛び回る種にも見られます。カトリヤンマは昼間は藪陰で眠っていて、夕方になると木立に囲まれた農家の庭先や軒先などに出てきて忙しく低く飛び回って蚊を食べます。ミルンヤンマは丘陵地の道路の上を低く飛ぶのが見られます。アメイロトンボやオオメトンボ、コフキオオメトンボなどは暗い池の上を低く飛び、産卵に訪れる♀を待ちます。(p91より引用)



帰宅後に、黄昏飛行するトンボを図鑑『日本のトンボ』で検討してみました。


カトリヤンマは、東北地方ではほぼ絶滅している。
マルタンヤンマは山形県には分布しない。
今のところ有望な候補としては、ミルンヤンマとコシボソヤンマが考えられます。
特に、ミルンヤンマは過去にこの里山の麓で撮影しています。

▼関連記事
ミルンヤンマ♂

生態学の基本的な用語に「ニッチ」という考え方があります。
生き物は環境を空間的に細分化して住み分けているだけでなく、時間的にも住み分けて共存しているのです。
里山の全く同じ場所を昼行性の昆虫、夜行性の昆虫、薄明薄暮性の昆虫が住み分けています。

薄暗がりを飛び回るトンボをストロボ写真に撮って同定する芸当は私には無理そうです。(飛び回る被写体にピントを素早く合わせられない)
捕虫網を持参して採集し、謎のトンボの正体を突き止めるのが、来季の宿題です。
もし樹液酒場に集まるハエなどを目当てにトンボが飛来したのであれば、捕食の瞬間を動画に撮りたいところです。
しかし私は、トンボの嗅覚が優れているという話を聞いたことがありません。
トンボは、樹液の発酵臭と獲物の多さを関連付けて学習、記憶することが可能なのでしょうか?



午前5:16に測った現地の気温は21℃でした。

ちなみに月齢は1.7とほぼ新月の状態で月の出は午前6:37でした。
したがって、撮影時刻に月明かりはありません。


【追記】
渡辺守『トンボの生態学 (ナチュラルヒストリーシリーズ) 』という分厚い専門書を拾い読みしてみたところ、残念ながら「黄昏飛行」を特別に扱った章はありませんでした。
むしろ筆者は少し否定的なニュアンスで書いていたのが印象的でした。
前に読んだ井上清、谷幸三『トンボのすべて』と見解の違いがあるようです。

成虫が夜間に活動する種も存在し、ときどき灯火採集の光に引き寄せられている例があったという。確かに、海や大きな湖で、夜間に航行中の船舶の明かりに飛び込んできた個体は長距離を飛翔中といえ、実際に夜に「渡りをする種」も存在する。しかし、偏光に対する感受性が強く、黎明薄暮時にも採餌活動ができるからといって、月光を利用した採餌活動を主たる栄養源にしている種が存在すると結論づけるには無理があろう。夜間の活動は特殊例といわざるをえない。大多数の種は昼行性であり、それぞれの種で、独自の日周活動パターンをもっていると考えるべきである。 (p77〜78より引用)


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