2015/10/19

クサギの蕾を舐めるハマキモドキ科(蛾)の一種Prochoreutis sp.



2015年8月中旬

山間部の峠道の脇に生えたクサギの群落で蕾に見慣れない小蛾がずっと止まっています。
ハマキモドキ科の一種だと思うのですが、どうでしょう?
蕾でウロウロと徘徊するものの、なかなか飛び立とうとしません。
風で枝が揺れても飛んで逃げません。
よく見ると口吻を伸ばしてがくや蕾の表面を舐めています。
生憎この日はマクロレンズを持参しておらず、しっかり接写できなかったことが心残りです。

※ 植物に疎いのですけど私がクサギの蕾だと思っている部分は、花が散り終えた後の子房(これから実になる)ですかね?

クサギの花は殆ど散り終えていますが、少しは咲き残っています。
しかしこの小蛾はクサギの花で吸蜜するのではなく、蕾や萼に執着していることが不思議でなりません。
もし盗蜜なら蕾の根本に居座って口吻を差し込んでいるはずです。
♀による産卵行動でもなさそうです。
クサギの花外蜜線を舐めてるのでしょうか?
インターネットで検索してみると、クサギの葉には花外蜜腺の存在が知られているようですが、蕾にも有るかどうか不明です。

クサギ Clerodendron trichotomum (THUNB.)の葉には, 乳頭突起と腺毛状突起の2種の毛状突起, および花外蜜腺の存在が確認された.
下川和洋, and 北野日出男. "カブラハバチ類成虫のクサギ腺毛状突起に対する摂食習性とその生物学的意義について." 昆蟲 57.4 (1989): 881-888.(@CiNii
クサギ(臭木)には独特の芳香がありますから、性フェロモンの原料となる香料を摂取している可能性も考えられます。(※ 追記参照)
あるいは、クサギを寄主植物とするアブラムシ(クサギアブラムシなど)が分泌した甘露を舐めているのかもしれません。
ただし、撮影中にアブラムシのコロニーを見つけられませんでした。(葉裏をめくってみれば良かったですね。)
また、クロオオアリ♀も同様にクサギ蕾の萼を舐めに来ていました。→関連記事
したがって、フェロモン説よりも、実際に甘いのではないかという気がします。
今思うと、私も舐めて味見してみるべきでした。
ちなみに、このクサギ群落を訪花する蛾としては他に、ホウジャクの一種が吸蜜ホバリングを披露してくれたものの、動きが速過ぎて撮り損ねました。

いつもお世話になっている「新・蛾像掲示板」に投稿して問い合わせたところ、ibota_mothさんより次のようにご教示頂きました。

頭部と前胸背板が黄色いのでアトギンボシハマキモドキProchoreutis delicata)でしょうか。いずれにせよ、Prochoreutis属であるのは間違いないと思います。
その後、juntさんからもコメントを頂きました。
ibota-moth様のおっしゃるとおりに属名にされたほうが間違いないと思います。あげられた特徴には4種あてはまります。去年のとも種が違うかもしれません。


※【追記】

矢追義人 『ミクロの自然探検: 身近な植物に探る驚異のデザイン』という植物観察の書籍を読んでいたら、興味深い話が書いてありました。

(クサギの)葉の表を見ると、まばらな多細胞毛の間に、丸いマッシュルームのような突起がある。この突起も毛の変形と見るようで毛茸と呼ばれ、クレロデンドリンという苦味物質群を出していることが突き止められている。このクサギの葉には、カブラハバチの仲間がよく集まる。カブラハバチの(中略)成虫は雌雄ともにクレロデンドリンに強く誘引されてクサギの葉に集まる。(中略)このハバチ類はクレロデンドリンを大量に摂取し、体表が苦くなるという。それゆえ、(中略)このハバチは苦味や異臭のある物質をため込むことで外敵から身を守っているのだろうと想像されていた。ところが、(中略)クレロデンドリンの中には、♀の♂に対する誘引力を高めたり、♂の性行動を促進したりする、性フェロモンの働きをするものがあることがわかってきたという。(p26より引用)

次回からはクサギの木にカブラハバチの仲間が来ているかどうか、注意して観察してみようと思います。



路上のアカウシアブ♀



2015年8月中旬

峠道でアカウシアブ♀(Tabanus chrysurus)が路上を徘徊していました。
路面を舐めてミネラル摂取しているのかと思い撮り始めてみると実はそんなこともなく、ウロウロと歩き回っているるだけでした。
少し飛んで日陰に移動したので、熱射病で弱っている個体なのかな?
最後は飛び立ち見失いまた。



2015/10/18

夜に開花するメマツヨイグサ



2015年8月中旬

近所に生えたメマツヨイグサの群落から夕方(17:30PM)に蕾を採集してきました。
茎を水切りして、水差しに生けました。
メマツヨイグサが夜に開花する瞬間を記録するために、動画の長撮りで監視します。
予習してみると開花は一旦始まればあっという間に進行するらしいので、微速度撮影ではなく通常のHD動画で録画しました。

室内の照明以外に撮影用の補助照明としてUSBリングライトを点灯しましたが、悪影響を及ぼすこと(撹乱)を恐れ、途中から消灯しました。
どうしても画面はかなり暗くなってしまいますが、動画編集時に自動色調補正を施してあります。

そのまま放置して別の作業をしていたら夜21:30頃、室内に漂う花の芳香に気づきました。
振り返るといつの間にか開花していました。
このときの室温は26.4℃、湿度は73%。
咲くと予想していた蕾とは逆の方が咲きました。
植物に疎い私が初めもう一つの蕾だと思い込んでいたのは、花が萎んだ後だったと判明。

撮れた動画を巻き戻して見てみると、蕾がほころび始めてから一気に弾けるように咲きました。
開花時刻は午後18:52。
咲いた花に偶然にも照明が当たって良い感じに撮れていました。
ちなみにこの日の正式な日の入り時刻は18:31と発表されていました。
光が開花に及ぼす影響は1回の観察だけではよく分かりませんでした。(※追記3参照)
光ではなく気温の低下を感知して咲くのだと仮定すると、熱帯夜は開花しないことになってしまいます。
切り花にしても植物の体内時計が働いて夜に正しく開花するのでしょうか。
次回は暗い野外で赤外線の暗視動画に記録してみようと思います。



この花も翌朝には閉じていました。
夜間に昆虫が訪花せず受粉に失敗しても萎むのは何故でしょう?
咲き続けるのはコストがかかると考えれば、受粉しなかった花は潔く諦めて捨て(枯らし)、翌日の晩に次の花を咲かせて受粉のチャンスを待つ方が得策なのでしょうか?
次はメマツヨイグサの花が萎む過程を微速度撮影してみるのも面白いかもしれません。

採集現場に花の種類を同定しに行くこと。



【追記】
当初、オオマツヨイグサとして記事を書きましたが、メマツヨイグサに訂正します。


【追記2】
Newton special issue『植物の世界―ナチュラルヒストリーへの招待〈第2号〉』p12によると、
暦の上の日没時刻を20分ほどすぎたころが(オオマツヨイグサの)開花の最盛期である。(中略)マツヨイグサでは、いましがた沈んだ太陽の方を向いて開く花が多い。夜行性のガといっても、やはり光をたよりに花を訪れるからであろう。



※【追記3】
浅井康宏『緑の侵入者たち―帰化植物のはなし (朝日選書)』p206によると、
「マツヨイグサの仲間はどうして夜咲くのか…」この疑問に答えたのは、オオマツヨイグサを材料として研究した、日本の植物生理学者たちであった。これによると、萼の基部にある1センチぐらいの部分に開花の決め手があり、この部分に当たる特定の波長の光線が、開花に影響を与える。太陽の光線は、開花を抑えるように働くのである。


【追記4】
田中修『つぼみたちの生涯―花とキノコの不思議なしくみ (中公新書)』によると、
ツキミソウというのは、マツヨイグサ属の特定の一種に対する呼び名である。しかし、一般的には、夕暮れに開花するオオマツヨイグサ、マツヨイグサなどのマツヨイグサ属のすべてを含めることが多い。最近、都市郊外に多いのは、アレチマツヨイグサである。オオマツヨイグサはあまり見かけなくなっているが、実験でていねいに調べられているのは、オオマツヨイグサである。
この植物は、夏の夕暮れ、日が沈むと、暗くなるのを待ちわびていたかのようにつぼみを開く。しかし、開花当日、暗くなってから開く準備を始めるのではない。その前日の夕暮れから時を刻み始め、2段階に分けて仕度をしている。
(中略)
 第二過程が終わると、つぼみはいつでも開ける状態にある。ところが、夏の晴れた日の夕方6時ころには、この植物のつぼみにとっても、まだまだまぶしい強い光がさしている。そのため、開花できない。準備が終わっても、最後の過程が強い光で阻害されるのだ。
 開花準備の終わったつぼみは、夕方からじっと暗くなるのを待つ。夏の夕暮れ、日が沈むと、暗くなるのを待ちわびていたかのように、花が開くのは、このためである。曇っていたり、雨雲が覆っていたりする日には、夕方6時ころ、開花準備終了と同時に、つぼみが開く。
ツキミソウは、このように「暗くなること」を刺激として、つぼみの開く時刻を決めている。(p132-133より引用)





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