2009年7月中旬
キアシナガバチ(Polistes rothneyi)巣の定点観察
前回の観察から8日も経ってしまった。
その間に二番目のワーカーW2が羽化したようです。
個体識別のマーキングを施すために、巣に止まって休んでいるW2の捕獲に挑みます。
少しでも巣に振動を与えると在巣の女王Q(水色)が激しく威嚇してくるので焦ります。
創設初期と違い、巣盤の下面がもはや平面状ではないので、蜂の上から麻酔管を被せようとしても隙間が出来てしまいます。
それでもなんとか無事に捕まえた蜂を炭酸ガスで麻酔し、背中に個体識別のマーキングを施しました(黄色)。
覚醒するのを待って台に乗せ、自分から巣に登るよう促します。
麻酔直後の蜂を巣の天井部に乗せただけでは滑り落ちてしまうのです。
ちなみに既に外役をこなしているワーカーの場合は定位飛行によって巣の位置を記憶しているので、自力で飛んで巣に戻れます。
この間、外役に出ていた長女W1(桃色)が肉団子を咥えて帰巣し、幼虫に給餌を開始。
W2(黄色)を巣に戻す作業中、在巣の二匹はやや警戒するものの、同じ巣の仲間と認識したようで攻撃を加えることはありませんでした。
女王と比べると新ワーカーはは明らかに体格が小さいです。
コロニーが順調に育って嬉しいのですが、この方法での捕獲に限界(危険)を感じました。
計3匹(Q、W1、W2)を個体標識しただけで諦めることにしました。
《追記》
くれぐれも安易に真似しないようお願い致します。
次々に羽化する新ワーカーを一匹ずつ安全に捕獲する方法を模索した結果、蜂蜜を使う方法を後日編み出しました。
つづく→シリーズ#15
2009年7月上旬
定点観察中のキアシナガバチ(Polistes rothneyi)の巣でようやく初ワーカーが羽化しました。
最も発育の進んでいた中央の育房が空繭になっています。
羽化直後のワーカーは複眼の色が黒っぽい(成熟すると褐色に)。
留守番をワーカーに任せて女王が外出しました。
ワーカーは羽化後も数日間は巣で休んでから外役に出ます。
巣の防衛力が上がったのは喜ばしいのですけど、常に在巣の蜂が居るので育房のカウントが困難になってしまいました。
個体識別のため、女王が不在の間に早速捕獲して桃色にマーキングを施しました。
女王と異なる色を塗ると化学成分(臭い)の微妙な違いにより、巣に戻したときに女王に攻撃されないかと内心は心配でした。
しかし特に問題ありませんでした。
標識には同じ油性ペン(オパックカラー)の色違いを使用しています。
現女王(水色で標識)は創設女王(銀色)から巣を乗っ取ったので、この初ワーカーとの血縁関係は無い(薄い)と予想されます。
アシナガバチの女王にとって最も危険な単独創設期を乗り越えたので、これで一安心。
前年はワーカーが羽化する前に創設女王が死んでしまいました。
つづく→シリーズ#14
2009年6月下旬
キアシナガバチ初期巣の定点観察。
育房数は36室に増えました。
最近、キアシナガバチ(Polistes rothneyi)創設女王(銀色に標識)と入れ替わりで無印の女王が巣に居座るようになりました。
中央の育房で繭の上に創設女王が産み付けた卵が一度無くなってから(無印の女王が食卵?)、再び産み付けられていました。
やはり巣の乗っ取りが行なわれたのだろう。
無印の乗っ取り女王を一時捕獲して個体識別のマーキングを行ないました。
炭酸ガス麻酔下の蜂にオパックカラー(水色)で胸部と腹部の背側に2箇所標識します。
麻酔から醒めた女王を板に乗せて巣に近づけ、自ら巣に戻るよう促します。
麻酔の後遺症か、激しく身繕いを繰り返していました。
つづく→シリーズ#13