2015年10月上旬
ユカタヤマシログモの飼育記録#2
ユカタヤマシログモ(Scytodes thoracica)を地下室で採集して以来、少なくとも19日間は絶食していたのに平気で生きていました。
飢餓耐性が強いという前評判通りでした。
さてこの日は、本種独特の狩りの習性を観察するために、予め室内で捕獲しておいたオオヒメグモ(Parasteatoda tepidariorum)幼体を与えてみました。
ともに地下室などの室内で見かけるクモですから、獲物として不自然ではありません。
オオヒメグモが不規則網を張ったところにユカタヤマシログモを投入したのではなく、ユカタヤマシログモの飼育容器にオオヒメグモを投入したので、アウェイ環境のオオヒメグモに勝算はありません。
獲物が近くに歩いて来た瞬間にユカタヤマシログモが電光石火で仕留めたようで、オオヒメグモはすぐに動けなくなりました。
狩りの瞬間は撮り損ねてしまい、直後からの撮影です。
接写してみると、獲物は強力な粘着糸で容器底面に貼り付けにされていました。
ユカタヤマシログモが噴射した糸が透明プラスチック容器の底にジグザグに付着しています。
ユカタヤマシログモの頭胸部が巨大(頭でっかち)で奇怪な印象を与えるのは、吐糸器官が収まっているからなのでしょう。
ユカタヤマシログモは獲物の傍らで悠然と身繕いしています。
まず触肢の先を舐めて掃除を始めました。
触肢を互いに擦り合わせています。
次は歩脚の先(跗節)を舐めて掃除。
大顎で足先を甘噛みする動きに合わせ触肢を素早く開閉しています。
オオヒメグモは初めにピクリとかすかに動いただけで、その後は動かなくなりました。
ユカタヤマシログモが噛んで毒液を注入しなくても、吐糸に含まれた毒液に触れただけで獲物の体が麻痺してくるのでしょうか。
化粧が済むとユカタヤマシログモはようやく獲物に噛み付いて捕食(体外消化と吸汁)を開始。
噛み付く場所はオオヒメグモの歩脚の膝?関節でした。
色々とアングルを変えて接写してみても、食餌中はクモの動きが乏しくあまり面白くありません。
よく見るとユカタヤマシログモの触肢と牙が微かに動いています。
映像後半は採寸のため、飼育容器の下に方眼紙を敷きました。(@5:35〜)
今回は室内でも自然光下で接写したら明るく色調も自然で良い感じになりました。
次回はユカタヤマシログモが獲物をめがけて口から高速で吐糸する瞬間をハイスピード動画で記録してみます。
つづく→#3:獲物を捕食・吸汁するユカタヤマシログモ(蜘蛛)
 |
給餌直前のオオヒメグモ |
【追記】
22日後に撮った食べ滓の写真です。
2015年10月上旬・夜21:20頃
キイロスズメバチ巣の定点観察#2
前回の観察から4日後の夜、軒下を見に行くとキイロスズメバチ(Vespa simillima xanthoptera)の巣は寝静まっていました。
赤外線の暗視カメラで撮ると、巣口横の外被に3匹の蜂が静止しています。
その全員が頭を巣口に向けています。
当然ながら夏の暑さも過ぎたこの時期に、扇風行動はやりません。
モンスズメバチとは異なり、昼行性のキイロスズメバチは夜間活動しません。
ストロボを焚いて撮った写真を見直すと、数匹の蜂が自らの体で巣口に栓をするように塞いでいます。
門衛なのでしょう。
キイロスズメバチがこれほど警戒している夜行性の仮想敵は一体何でしょうか?
写真を見る限り、雄蜂の姿はありませんでした。
門限を破って帰宅が遅くなってしまったワーカー♀が巣に入れてもらえずに、巣口の横で泣きながら夜明かししているのだろうか?と擬人化したお笑い妄想を膨らませてしまいました。
巣の中は寝苦しいから涼しい外で寝るほうが好きだという暑がりの蜂がいたりして…?
映像の冒頭で巣の右横にある垂木を謎の黒い昆虫が歩いて巣に接近しているのが目を引きました。(画面右から登場)
コガタスズメバチの巣の外被に潜んでいたゴキブリを思い出して興味深く思いました。
謎の虫はすぐ死角に隠れてしまった上に、この営巣地は高所過ぎて、果たしてゴキブリなのかどうかよく見えませんでした。
なんとなく、長い触角を持つカマドウマのような気もします(自信なし)。
それに応じて外被上左下のキイロスズメバチ♀個体が覚醒し触角を動かしました。
※ 前半のみ動画編集時に自動色調補正を施してあります。
つづく→#3:巣の外被を増築するキイロスズメバチ♀【微速度撮影】
2015年10月上旬・夜21:30
境界標に営巣したヒメクモバチの定点観察#8
前回の観察から4日後、ヒメクモバチ(旧名ヒメベッコウ;おそらくAuplopus carbonarius)の営巣地を夜に訪れてみました。
赤外線の暗視カメラで撮りながら近づくと、まず一つ目の境界標aにはヒメクモバチ♀aが在巣でした。
蜂は目覚めており、触角だけ動かしています。
私のせいで覚醒してしまったのかもしれません。
昼も夜も泥巣に留まりガードしていることが分かりました。
 |
ヒメクモバチ♀a@泥巣:境界標a |
ところが、その隣に並んだ2つ目の境界標bを見ると、♀bは不在でした。
夜はどこか別の場所で寝ているのでしょうか?
特定の塒があるとしたら面白いですね。
翌日の昼間に♀bの無事を確認しました。(生きていました)
 |
泥巣:境界標b-ヒメクモバチ♀b |
社会性ハチは夜になると巣で休みます。
例えばスズメバチやアシナガバチの創設女王は単独営巣期であっても夜は初期巣に戻り、一晩中抱卵します。
それに対して単独性狩蜂の♀が巣で寝ないとしても、それ自体は不思議ではありません。
蜂の巣と塒は必ずしも一致しないのです。
例えば夜にジガバチ♀が草の茎を噛んだ姿勢で休むのを観察しました。
ヒメクモバチが夜どこで寝るかという習性に個体差があるようで、興味深く思いました。
つづく→#9:ヒメクモバチ♀bの採土と巣作り