2010年6月上旬
ホオナガスズメバチの巣の定点観察記録。
この日は女王の姿なし。気温21℃。
外被の様子もあまり変化がないようです。
ここしばらく肌寒い日が続いたので、廃巣になったのではないかと心配です。
軒下は暗いので、手鏡で日光を反射して巣内を照らし、巣盤をチェックしてみました。
やがて一匹の蜂が飛来し、軒下をしばらく飛び回っていました。なぜか巣のある場所とは違う梁を気にしています。
個体識別のマーキングを施していないので真相は分かりませんが、別個体の女王蜂が探索飛行していたのだろうか。
それまでの観察で創設女王が帰巣時に軒下で迷うことは一度もありませんでした。
ニッポンホオナガスズメバチの創設女王では二巣並行営巣の観察例が同じような軒下で報告されているので※、隣に新しく営巣を始めようとしているのかもしれない。
牧野俊一, and 山根正気. "ニッポンホオナガスズメバチの創設女王で見られた 2 巣並行営巣行動の観察." 昆蟲 47.1 (1979): 78-84.(PDF文献はこちら。)
似た外見の蜂でニッポンホオナガスズメバチに労働寄生する種(ヤドリホオナガスズメバチ)も知られているので、乗っ取る巣を物色していた可能性も考えられます。
あるいは単にクロスズメバチの仲間(Vespula属)が軒下を探索飛行していたのかもしれません。
2010年5月中旬
ホオナガスズメバチの一種の創設女王の観察記録。
この日も独りで外被作りに励む女王。
下から見上げるアングルでは外被上部を増築する様子は死角になってよく分かりません。
外で集めてきた巣材を口に咥えて戻ると、必ず一度巣内に入り育房を点検してから外被作りを再開します。
中で巣材を噛みほぐしているのかも。
頭楯の模様が同定ポイント(シロオビホオナガスズメバチまたはニッポンホオナガスズメバチ)なのですけど、映像をコマ送りにしても遠くて蜂が一瞬こちらを向いたときも顔のアップは確認できず残念。
ワーカーが羽化したら採集して調べてみようと思います。
(つづく)
2010年5月中旬
巣盤をすっぽり覆う外被の建設が進んでいます。(二層目?)
この日は気温が低く、女王は余り外出しませんでした。
寒い日はなるべく抱卵に専念しているのだろうか。
女王が帰巣したり中で動いたりすると巣が激しく揺れます。
スズメバチの本によると、樹上に営巣することの多いホオナガスズメバチ類の巣は耐震構造に優れた工夫が凝らされているそうです。
巣盤を支える巣柄が単純な円柱状ではなく、紙製の吊り手が三角形の板状でしかも螺旋状に捻って作られるために、スプリングのように巣の振動をうまく吸収してくれるらしい。
コロニーが解散したら巣を採集して、この目で確かめてみたいものです。
(つづく)
≪参考≫
『スズメバチはなぜ刺すか』 p185(北海道大学図書刊行会)
『蜂は職人・デザイナー』 p40, 58(INAX出版)