2010年10月下旬
里山の草叢でミゾソバ?の枯れた茎に付着した謎の白い塊を発見。
アワフキムシ幼虫が作った泡の巣が固くなったような状態ですが、カマキリの卵鞘とは違います。
図鑑で見たムシヒキアブ科シオヤアブの卵嚢かなと思い、 採集して持ち帰りました。
さあ一体何が出てくるか楽しみです。
ミニタッパに密閉して室内に放置すると一週間後の11月上旬、 黒い小さな蜂が続々と羽化して来たのでビックリ!
意外な結果でしたが、このときは未だシオヤアブの卵嚢(図鑑でしか知らない)に寄生した蜂が羽化したのかと思い込んでいました。
羽化した寄生蜂が次々に繭塊から脱出する様子をマクロ動画に撮ってみました。
午後(室温20℃)。
観察し易いよう、容器の蓋代わりに透明なサランラップを張っています。
初めて目にする光景にわくわく興奮しました。
カマキリの前幼虫が卵嚢から孵化する様子を連想しました。
白い繭塊の中から黒い胡麻粒のように透けて見えてくるのが脱出の前兆と分かりました。
繭の繊維を大顎で少しずつ食い破りつつ、頭から脱出します。
このとき長い触角は背面に寝かせています。
脱出の最後の瞬間は素早くするりと抜け出します。
羽脱後はすぐに羽が広がります。
翅伸展は蛹や繭の中で済ませ、ある程度成熟してから(クチクラが固まってから)外に出てくるようです。
繭塊には表面のあちこちに脱出痕がはっきり残っています。
成虫の体は黒、脚は褐色、羽は透明、腹部腹面前半部が褐色。
YouTube仲間で寄生蜂に詳しい外人さん(ufensia氏)に動画を見てもらったところ、「この寄生蜂は鱗翅目の幼虫(シロチョウ科?)に寄生するコマユバチ科Cotesia属の一種だろう」とご教示頂きました。
また、「今回採集した謎の白い物体はシオヤアブの卵嚢ではない」と私の大きな勘違いを正して貰いました。
寄主の体内で育った多寄生蜂の終齢幼虫が寄主から一斉に脱出して、共同で大きな繭塊を紡いだものなのだそうです。
野外の自然環境下でも冬の到来前に羽化して成虫で冬越しするのだろうか?
それとも繭の中で越冬するのだろうか。
(つづく)
2009年11月下旬
林床をよろよろと彷徨っていたオオスズメバチ(Vespa mandarinia japonica)が偶然行き着いた杉の幹を登り始めました。
巣穴からの距離は約5m。
巣材集めでも樹液目当てでもなく、ただの休憩みたいです。
疲れ切った蜂は幹を伝い落ちる水滴を飲み始めました。
ようやく落ち着いてくれたので♀の特徴を確認できました(触角が12節で腹部が7節、毒針を持つ)。
時期的に寿命間近のワーカーなのか離巣した新女王なのか判断に迷いますが、体長約40mmと大型であることから新女王でしょうか。
越冬地を探し求めている内に気温が下がり(6℃)動けなくなったのかもしれません。
至近距離からストロボを焚いても全く攻撃性を示しませんでした。
通常ワーカーに比べると女王蜂は穏やかな性格なのだそうです(争いを避ける)。
手元の本によると(『スズメバチはなぜ刺すか』 北海道大学図書刊行会 p279)、本種の体長は女王蜂40~45mm、働き蜂(ワーカー)27~38mm、雄蜂27~40mm。
(巣の発掘・前編へ続く)
2009年11月下旬
巣の近くの林床を彷徨っている一匹のオオスズメバチ♀(Vespa mandarinia japonica)が居ました。
低い気温(6℃)のせいか動きが鈍く、弱々しい。
ときどき羽ばたくものの飛び立つ力が無いようです。
迷子になったのか巣とは逆方向に歩いて行きます。
寿命間近のワーカーが迷子になったのだろうか。
それとも新女王が越冬地を探しているのだろうか。
普段は危険極まりないオオスズメバチを間近で撮れる機会は滅多に無いので、ここぞとばかりに追跡しました。
(つづく)
※ おそらく新女王だろうと思います。詳しくは続編で。