2023/04/02

スギ林道の溜め糞場に来る生き物たち:9/13〜19の全記録【10倍速映像】

 

2022年9月中旬

里山の杉林道にニホンアナグマMeles anakuma)とホンドタヌキNyctereutes viverrinus)が共有している溜め糞場sがあり、トレイルカメラで長期間監視しています。 
この山林には昼行性の動物もいれば夜行性の動物もいて、秋の溜め糞場は千客万来です。 
9/13〜9/19の丸7日間の全記録を時系列順にまとめ、10倍速の早回し映像にしてみました。 

これまで私は登場する動物種ごとに切り分けて紹介していたのですが、時系列順にするとまた印象が変わる(違ったドラマが見えてくる)かもしれません。 
センサーカメラが起動してから1分間録画するタイマー設定にしているので、動物が居なくなってからも構わず1分間は律儀に撮り続けます。 
従来の報告ではカットしていた退屈な後半(動物の不在映像)も含めています。 

早回し映像に加工すると、溜め糞に集まる糞虫の活動や離合集散がよく分かるようになります。 
引きの絵で撮ると糞虫の動きは緩慢なので、等倍速映像ではどうしても糞虫の存在を見落としがちです。
カメラの誤作動で録画された謎のボツ映像も、よく見直すと糞虫が写っていたりします。 
新鮮な糞塊を糞虫たちがせっせと地中に埋めて食べてくれるおかげで、森の中はきれいに保たれているのです。 
逆に糞虫の活動が落ちると、地上に残る溜め糞の規模は大きくなります。 
ちなみに、街なかで飼い犬や野鳥の糞が大問題になるのは(糞害問題)、現代人が勝手な都合で地面をアスファルトやコンクリートで埋め立てたり殺虫剤を撒いたりした結果、掃除屋の糞虫が活躍できないよう締め出したからに他なりません。 

他にも得体のしれない虫たちが林床を日夜動き回っていることが分かります。 
そうした糞虫などを捕食しようと、次は野鳥たちが溜め糞場に通って来ます。 

夜になると野ネズミが活動します。
種子散布の本に書いてあった通りに、溜め糞に含まれる未消化の種子や糞虫を野ネズミが食べるのではないか?と期待したのですが、そのような決定的な証拠映像はなぜか未だ撮れていません。
正直に言うと、本の記述(先人たちの研究結果)に疑いを持ち始めています。
私の見ているフィールドは他と何が違うのでしょう?

タヌキとアナグマは少し離れた地点に排便していた(平和に棲み分け)のですが、ある日アナグマが急にタヌキの溜め糞場のすぐ横に対抗するように排便しました。 
糞便による2種間の勢力争いも興味深いドラマです。

教科書に書いてあるような、溜め糞場を巡る生態系や食物連鎖、生物多様性を身近なフィールドで実際に目の当たりにすると感動します。 

この撮影手法はやって来る動物次第なので、撮影間隔がどうしても不定期になってしまいます。 
糞虫の日周活動を本格的にタイムラプス動画で記録するのなら、静止画でインターバル撮影(例えば5分間隔)する設定にしても面白いかもしれません。 
ただし、そうすると今度は恒温動物(哺乳類と鳥類)が滅多に写らなくなってしまうでしょう。 
動画用とインターバル写真撮影用と2台のトレイルカメラを併設できれば理想的です。 

2023/04/01

山間部の路上で仲睦まじく相互毛繕いするニホンザル♀♂

 

2022年10月上旬・午後13:50頃・くもり

過疎地の山間部を通る舗装された峠道は、昼間も車の交通量が全くありません。 
2頭のニホンザルMacaca fuscata fuscata)が路上に寝そべって、のんびりと相互毛繕いをしていました。 
不思議なことに、長時間撮影していても周囲にニホンザルの群れが活動している気配は全くありませんでした。

体格差があるペアで、初めは親子なのかと思いました。
大きい方の個体は♂で、小さい方は若い♀でした。 
寝そべっていた小が起き上がり、2頭が並ぶと体格差が明らかになりました。 
大の股間には発達した睾丸と陰茎が見えたので、成獣♂と判明。 
しかし、睾丸や顔が紅潮してませんから、未だ発情期に入ってないようです。 
小柄な♀の胸に乳首は見えないので、若い♀のようです。 (少なくとも経産♀ではない。) 
若い♀と仲良くなった♂が、群れから♀をこっそり連れ出して逢引しているのかな? 
この♂はいわゆる「離れザル」なのかもしれません。

2頭は交互に甲斐甲斐しく対他毛繕いをやり合っています。 
密生した体毛を丹念にかき分けて蚤を探し出すと、指で器用に摘みとり、次々に食べてしまいます。 
ニホンザルはヒトと同じく親指と他の指が対向しているので(母指対向性)、器用に物を掴んだりつまんだりすることができるのです。
(霊長類以外の哺乳類でこんな芸当は解剖学的に不可能です。)
毛繕いしてもらう方は、体勢を次々と変えながら体の各部位の蚤を取ってもらいます。 
頭部も毛繕いしてもらいます。
起き上がって互いに背中合わせになり、各自で毛繕いすることもありました。 

近くでカケスGarrulus glandarius)がジェー♪という警戒声を発した途端に、寝そべって毛繕いを受けていた♀がガバッと起き上がり、♂と一緒に不安そうに周囲を見回しました。(@0:40〜) 
(ヘッドホンを付けて音量を最大に上げると、カケスの鳴き声がかすかに聞こえます。) 
カケスとニホンザルという系統的に遠く離れた異種間で警戒声の意味を共有しているようです。 
それ以前にも周囲で様々な鳥の鳴き声は聞こえていたのに、それに対してニホンザルは無反応でした。 
結局何事もなかったようで、ニホンザル2頭はすぐに警戒を解くと、毛繕いを再開しました。
おそらく林縁まで来たカケスが私の姿を認めて警戒声を発したのでしょう。

黄色っぽい昆虫が2頭の猿の周囲を高速で飛び回っても、猿は全く気にせずに対他毛繕いを続けています。(@1:40〜1:50) 
キイロスズメバチまたはスズメバチにベーツ擬態した吸血性のアカウシアブのようですが、ニホンザルは虫を恐れて逃げたり追い払ったりしませんでした。 


帰巣直後のモンスズメバチ♀が巣口を守る門衛と栄養交換【ハイスピード動画】

 



2022年8月上旬・午後・晴れ 

芝生の縁石の横にあるモンスズメバチVespa crabro)の巣穴bを観察しています。 
帰巣するワーカー♀が持ち帰る物(巣材または獲物の肉団子)をしっかり記録するために、三脚を立てて240-fpsのハイスピード動画で繰り返し撮影しています。 
撮影目的とは違うのですが、副産物で面白い行動が記録されていました。 

シーン1:午後14:15頃 
巣穴の入口を狭くしているのは、侵入者に対する防衛力を高めるためでしょう。 
2匹の成虫が巣口ですれ違うのに手間取るほど狭いです。 
外役から帰巣した蜂が巣穴になかなか入れてもらえないことがあるのは、門衛を務めるワーカー♀が巣口を内側からしっかり守っているからです。 
同じコロニー出身の仲間かどうか、巣口で誰何しているのでしょう(触角で確認)。 
巣口を塞いでいた門衛が一旦外に這い出てから帰巣個体の入巣を許し、自分も巣穴に戻ります。 

帰巣直後の外役ワーカー♀と門衛が巣口で熱い口づけを交わすことがありました。 
「行ってらっしゃい」のキスではなく、「おかえりなさい」のキスです。
この行動は栄養交換と呼ばれ、外で採餌してきた花蜜や樹液を吐き戻して門衛に分け与えているのです。 
しかも、この場合は♀同士のキスなので、性的な意味は全くありません。
(ちなみに♀♂間でも栄養交換は行います。♀→♂への吐き戻し給餌)
門衛との栄養交換が済むと巣内には入らず、すぐにまた外役(採餌)に出かけました。


シーン2:午後14:30頃 (@4:06〜) 
今度は三脚を逆向きに設置して、採寸のため縁石に1円玉(直径20mm)を置いてみました。 
ハイスピード動画で撮ったものの、スーパースローの意味がないので、早回しで等倍速に加工しています。 

巣穴から出てきた門衛が巣口付近をウロウロと徘徊しただけで、再び巣穴に戻りました。 
見慣れない異物が突然出現したのに、白く光る硬貨を見ても無害と判断したようです。 




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