2022/05/23

雪山で灌木の枝先を食べ歩くニホンカモシカ♂

前回の記事:▶ 雪山で排尿するニホンカモシカ♂
2022年1月上旬・午後13:30頃・晴れ 

雪山で出会ったニホンカモシカ♂(Capricornis crispus)は、深雪をラッセルして移動しながらあちこちで採食していました。 
メニューは落葉樹(樹種不明)の灌木の枝先です。 
てっきり冬芽を選んで食べているのかと初めは思ったのですが、ズームインしてみると必ずしもそうではなく、細くて柔らかい枝先ごと口で毟り取って食べていました。 (枝先の冬芽は未だ小さくて、付いてないように見えます。) 
枝先なんてさほど栄養価が高いとは思えないのですけど、雪国のカモシカは春が来るまで粗食に耐えて生き延びないといけません。 
1箇所で餌を食べ尽くす前に移動しています。 
ニホンカモシカ♂は辿り着いた灌木の枝先の匂いを嗅ぐだけで食べないこともあります。 
私には樹種が見分けられなくて残念です。 
カモシカの上顎には門歯が無いのに、下顎の門歯と上顎の歯茎で挟み込んで枝先を千切り取っています。

動画を撮影したエリアで常緑樹としてはスギ林がありますが、今回のカモシカ♂はスギを全く食べずに素通りしました。 
スギ林では雪が枝葉に積もるので林床の積雪量は少なくなります。
したがって、カモシカもスギ林床では歩きやすい(足が深い雪に潜らずに済む)ことが見て取れます。 

斜面の上からカモシカを見下ろすように隠し撮りする私の気配に途中で気づいたようで、こちらを凝視しました。(@3:48) 
しかし近視のカモシカ♂は私の姿は見えていないようです。 
威嚇のために鼻息を荒げることは撮影中に一度もありませんでした。 
コロナ禍で私が雪山でも白いマスクを着用し顔を隠していたのもカモフラージュ効果が多少はあったのかもしれません。 
私がじっと動かずに動画撮影を続けると、カモシカはやがて警戒を解いて採食を再開してくれました。 
カモシカ♂が後ろを向くと、首筋に黒色のたてがみが生えていました。


※ 動画素材を時系列順に並べるのではなく、演出のために入れ替えました。 
(見栄えの良い映像から先に並べています。 )



2022/05/22

真冬にノスリを追い回すカラスのつがい:モビング(冬の野鳥)

 

2022年2月下旬・午後14:10頃・晴れ 

久しぶりに目撃したノスリButeo japonicus)は、2羽のカラスに擬攻撃(モビング)されているところでした。 
ノスリは厳冬期でも雪国に留まる留鳥です。 
カラス(ハシボソガラス?)が掠れ声(ガラガラ声)で威嚇しながら天敵の猛禽を追い回しています。 
もしかすると、このカラスは、画面に写っている送電塔#29に営巣するつもりの♀♂ペアなのかもしれません。 

焦った私の操作ミスで、続きを撮れなかったのが残念です。 
現場は雪深い田園地帯から少し外れて住宅地に入ったところです。

2022/05/20

雪山で排尿するニホンカモシカ♂

 

2022年1月上旬・午後13:25頃・晴れ 

雪深い里山で採食活動するニホンカモシカCapricornis crispus)を見つけました。 
杉林の林縁に居る私が斜面の上から見下ろすアングルで、カモシカは私の存在に気づいていないようです。 
雪原をラッセルしていたカモシカは木立の間で立ち止まり、腰を少し屈めて排泄中のようです。 
初めは脱糞かと思ったのですが、肝心の下半身(肛門)が立木の陰に隠れているために確信がもてません。 
脱糞中なら黒くて小さな俵状の糞を肛門からポロポロと排泄したはずです。
撮影アングルを求めて私が下手に横へ動くと、気づいたカモシカに逃げられそうな気がしたので、じっと我慢しました。 
ズームインしたら、カモシカは下腹部から透明な尿を前方に排泄していました。 
腰を深く下ろさない排尿姿勢であること、前方へ小便を放出していたことから、この個体はおそらく♂だろうと判明しました。 
しかし下腹部も長い毛が密生していて、陰茎や睾丸などの外性器は全く見えませんでした。 
カモシカの性別を外見で見分けるのは至難の業なのですが、唯一見分けられるのが排尿時なのです。(※追記参照) 

以前、カモシカの排尿シーンを観察したときには上から背側を見下ろすアングルでした。
今回は真横からしっかり動画撮影できました。
関連記事(8年前の撮影)▶ ニホンカモシカ♂(左角欠け)の排尿
今回は小便だけしたのか、それとも大便と小便を一緒に排泄したのか、残念ながら不明です。
撮影後に現場まで降りて行って雪上に糞塊の有無を確認すべきでしたが、同一個体を追跡しながら採食シーンをひたすら撮影することになりました(映像公開予定)。 

おしっこを済ませたニホンカモシカ♂は深雪のラッセルを再開しました。 
一歩進むごとに腹が雪面に付きそうなぐらい深い雪に潜っています。 
ようやく立ち止まると、採食を始めました。 





※【追記】
カモシカは排尿時の姿勢に性差があることが知られています。
参考文献から復習です。

♂は後ろ足を開き気味にし腰を少し低くしておしっこをするが、♀はお尻が地面に着くくらいまで腰をおとす。これが典型的なおしっこスタイルである。では、典型でない場合があるかといえば、ちゃんとあるのだ。斜面の傾斜が急だったせいか♀が中腰でおしっこをしたことがあったし、若い♂が♀と見間違えるがごとく腰をおとすのも何回か見た。結局、排尿するときの姿勢はある程度の手がかりとはなるものの、より確実なのはおしっこがペニスのある腹のほうから放出されているのか、それとも♀の性器がある尾の下から出ているのかを確認することと言える。 (『カモシカの生活誌:十八歳の夏、僕は初めてアオシシに出会った』p46-47より引用)



(カモシカの)♂と♀では、おしっこのスタイルがちがうことに気づきました。♂は歩くときとほぼおなじ姿勢でおしっこをするのに対し、♀は腰をおろし、低い姿勢でおしっこをしたのです。 (宮崎学『森の写真動物記〈7〉草食獣』p16-17より引用)


カモシカの迷信。(中略)外見からは性差はわからないが、立ったままでオシッコをするのが♂、腰をかがめてオシッコをするのが♀…とも言われていた。でも、これもウソだよ!♂も腰をかがめて用を足す。(『哺乳類のフィールドサイン観察ガイド』p93より引用) 


 冬に深く積もった雪上で排尿すると、尿の温度で雪がとけ、細い穴が出来ます。この穴の角度は♂と♀でやや違います。♂の場合は陰茎が腹面に斜め前向きについているので斜めの穴が出来、♀の場合は肛門の下方に接して排尿口があり、腰を下げる姿勢になるので、ほぼ垂直(縦に真っすぐ)な穴となります。(平田貞雄『ニホンカモシカ・ミミの一生』p80より )

本書は♀のカモシカを長期飼育した記録で、「排泄時の姿勢」と題した分かりやすい写真も掲載されていました(p80およびp97)。明らかに♂よりも深く腰を落としていました。



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